明らかに異なる層に刺さった今年のJAWS DAYS
唯一無比のJAWS DAYSの価値にIT業界全体が気づいた日
2016年03月14日 07時00分更新
「JAWS DAYS 2016」が終了し、すでに8時間くらい経っているが、いまだ興奮が醒めやまない。参加者が1100名を超えた今回のJAWS DAYSは、その来場規模もさることながら、3回目にしてようやく業界全体がJAWS DAYSの価値、ひいてはコミュニティの価値に気がついたメモリアルな日である。
初参加者たちの挙手に多さに「鳥肌が立った」
3月12日(土)に新宿ベルサールで行なわれた「JAWS DAYS 2016」。まさに「ある一線を超えた」というのが、最初に抱いた感想だ。
なにしろ驚いたのは初来場者の多さだ。イベントの冒頭、JAWS-UG代表の金春利幸さんが聴衆に向け、「JAWS DAYSに初めて来た人」を聞いたところ、メインステージに着席した参加者の6~7割が挙手。周りにいる運営側がようこその拍手で応える場面を見た壇上の金春さんは「鳥肌が立った」と驚く。こんな場面が今回のイベントのインパクトを端的に物語っている。
AWS Samurai 2015の公開取材の合間に会場を回ってみたが、参加者のかなりの割合は今までJAWSのイベントに来ていた「人種」と異なる。「クラウドやAWSを使ったことなかった人」「JAWSのようなコミュニティに参加したことがない人」「IT=既存オンプレ・エンタープライズITだと思っていた人」「マーケティングや広報」などエンジニアとは異なる職種が今回のJAWS DAYSに参加しているという感触だ。その意味で、事前告知記事で特に呼び込んだ「非AWSエンジニア」という表現は、案外当たっていたのかもしれないと思った。
特に印象的だったのは、情シスやSIer向けのユーザートラックの人気ぶりだ。特に、「いいちこ」を呑みながら、既存のSIと情シスを激しく糾弾するという東急ハンズの長谷川秀樹さんの悪巧みに、「極言暴論」でおなじみ日経BP 木村岳史さんが乗ったセッションは、立ち見があふれた。同じメディアとして嫉妬を覚えるほどの集客ぶりは、日経BPブランドの強さとともに情シスやSIerの関心の高さを表わしいると言えよう。
「コミュニティのり」がエンジニア以外にも派生した
JAWS DAYSはあらゆる点で、唯一無比のイベントと言ってよい。このイベントの説明をするとき、最近は「年に1度のクラウドのお祭り」などと書いているが、これは「勉強会」の集合体でありながら、「コミュニケーションの場」「スター創生の場」でもあるJAWS DAYSを「お祭り」という表現以外、表現できなかったからだ。参加者も在京にとどまらない。このイベントのために、全国からエンジニアが集まるのだ。
一方で、JAWS DAYSは普段30~50名規模でやっている勉強会をそのまま1000名規模にスケールさせているという側面もある。つまり、大きくなったからといって、フォーマルになるわけでも、出し物が変わるわけでもない。内輪受けあり、コスプレあり、お酒あり、という意味では普段のコミュニティイベントがそのまま大きくなったというイメージだ。
今年のJAWS DAYSはこの「コミュニティのり」がエンジニア以外にも派生した。AWS Samurai 2015にもなった東急ハンズの長谷川秀樹さんの功績も大きいと思われるが、エンタープライズの関係者が(コスプレありで)イベントに出てくるのはかなりのインパクト。ベンダーイベントであれば営業が何人も付きそうな執行役員クラスが、ジーパン・パーカーのエンジニアたちと立ち見でセッションを楽しんでいるのはなんとも印象的な風景であった。
コミュニティの価値にメディアも気がついた?
コミュニティイベントで生まれるコンテンツはうわべで繕ったものがない。ユーザーにとって価値のあるサービスは尋常じゃない熱量で受け入れられるし、鳴り物入りで登場したサービスでも使えないものは一刀両断される。ここがユーザーコミュニティのイベントの真価と言えよう。
遅ればせながらエンタープライズのIT媒体が、こうしたユーザーコミュニティの価値に気がつき始めたというのも個人的な感想としてある。会場では今まで見なかったIT媒体の関係者が取材もしくは視察に訪れており、関心の高さが伺えた。
広告収入をベースとしたエンタープライズのIT媒体にとって、ユーザーの自主的な貢献で成り立つユーザコミュニティのイベントは正直相入れない。レポート記事を書けば読まれるだろうし、読者の囲い込みにはなるが、短期的にはビジネスにならないのが明確だからだ。
しかし、クラウドの台頭と共に、IT業界での情報発信はわれわれのようなIT媒体から、ユーザー主導によるブログメディアに主軸が移っている。そして、ベンダーのマーケティングに利するようなエンタープライズ記事は、もはや読者の関心事ではなくなっている。この傾向はここ3年のTECH.ASCII.jpの記事の読まれ方を見れば明らかだ。今回、JAWS DAYSに参加したメディアの関係者はそろそろこの事態に気がつき始めたのではないか。
実はオオタニもJAWS-UGによる大型イベントのはしりである2013年の京セラドームの「JAWS Festa 2013」に「遠いから」という理由で行かなかったことを、今では大変後悔している。でも、その半年後、懲りずにイベントに誘ってくれたJAWS-UGのメンバーのおかげで、オオタニも「JAWS DAYS 2014」に参加でき、そこからユーザーコミュニティの世界にダイブできた。オオタニのように継続的にJAWS-UGを追っている記者は多くないが、こんなのは既得権でもなんでもない。ほかの記者もどんどんコミュニティの世界に足を踏み入れ、クラウド時代の情報発信の形をいっしょに考えて欲しい。
今回参加したメディア関係者もあの日オオタニが味わったような、今までのITのイベントと明らかに異なるイベントの立て付けやコミュニティ乗りに面食らったに違いない。このインパクトを彼らがどう受け止めていくか、個人的にはとても興味あるところである。
ともあれ、みなさんおつかれさまでした。次は「JAWS Festa 東海道」で会いましょう(AWS Summitかな?)。
筆者紹介:大谷イビサ
ASCII.jpのTECH・ビジネス担当。「インターネットASCII」や「アスキーNT」「NETWORK magazine」などの編集を担当し、2011年から現職。「ITだってエンタテインメント」をキーワードに、日々新しい技術や製品の情報を追う。読んで楽しい記事、それなりの広告収入、クライアント満足度の3つを満たすIT媒体の在り方について、頭を悩ませている。
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