デバイスとデータにフォーカスした国産IoTプラットフォームの真打ち
モノのタイムラインを共有できる「さくらのIoT Platform」始動
2016年02月09日 06時00分更新
IoTの世界を切り開く猛者がパートナーとして大集合
4月に開始されるα版では、「Priority Partner」と呼ばれるパートナーと連携し、さまざまな検証が推進される。さくらインターネット フェローの小笠原治氏は、こうしたパートナーとの共創プロジェクトについて説明した。
共創プロジェクトの話の前に、小笠原氏は「月額利用料をベースとした格安SIMのMVNOではありません」「閉域網にセンサーデータを預けるため、インターネットなクラウドサービスではない」「さくらインターネットがIoTのデバイスメーカーに転身するわけではない」など、さくらのIoT Platformのありがちな誤解をひもといた。
また、「動画配信のように太い回線が必要なわけではない。細切れのデータを送受信できればよいので、安定したデータセンターがあればよい」とのことで、グローバルでの利用を前提にしている点をアピール。先日発表されたソラコムとの提携についても触れ、「世界中で使っていただけるサービスを目指します。この部分でソラコムと連携できる」と語った。
こうした前提を元にパートナーとして手を挙げたのは、デバイスメーカーやクラウド事業者、スタートアップ、通信事業者、商社など多種多様な面々。発表会では、このうちIoT向けの共創プロジェクトを進めるNEC・レノボグループ、myThingsにさくらチャンネルを開設するYahoo! JAPAN、モバイル閉域網に専用線接続するソラコム、さくらのIoT通信モジュールを開発・製造するCerevo、さくらのIoT Platformを採用するスタートアップとしてアプトポッドとサイマックスの2社、総合パートナーとして支援する商社の双日など6社がさくらとの共創プロジェクトについて説明した。
また、さくらのIoT Platformを採用するno new folk studio、IoT通信モジュールの開発・製造を手がけるエイビット、通信モジュールを販売するチップストップやスイッチサイエンス、edisonやIchigoJamなどのIoTスカラシップを行なうインテル、IchigoJam、DMM.make、さくらの閉域網と接続を行なえるAWSやIBM Bluemixなどもパートナーとして名前を連ねる。その他、スマートロックの構築を目指すアパマンショップ、非技術側面からIoT活用を促進するオレンジ、店舗向けIoT製品・サービスを開発するトレタ、スマレジ(プラグラム)などが共創プロジェクトに参加する。
IoTプラットフォームSORACOMとの違いと共通点
国産IoTプラットフォームというとSORACOMがいの一番に挙がるが、SORACOMが接続性とセキュリティにフォーカスを置いているのに対して、さくらのIoT Platformはデバイスとデータにフォーカスが置かれているように見える。特にデバイス開発を容易にするサービスの作り込みに関しては、DMM.make時代を経てハードウェア開発の難しさを身をもって知る小笠原氏の意向が強く反映されているように見受けられる。
一方で、幅広いサービスに対してのオープン性とIoTビジネスでもっとも難しい通信の領域までカバーする点はさくらインターネットもソラコムも同じ。なによりスモールスタートで手軽に試行錯誤ができる環境を用意するというIoTイネーブラーとしての姿勢は、両者で共通していると言えるだろう。
この姿勢とビジネスモデルの両立について、田中氏は「大きな目的は、とにかくインターネットにつながるモノがもっと増えること、そして多くのデータがインターネットにはき出されること。当社のクラウドサービスで課金ができるかどうかは、サービスのコストパフォーマンスや品質に依存するものなので、ビジネスにならないかもしれない。ただ、データが総容量が増えれば、当社も含めて、プラットフォームをやっている人たちはみんな儲かるだろうというモデル」と説明する。IoTイネーブラーとしての崇高なアティチュードとサービス事業者としてのビジネスモデルの両立が、本サービス稼働までにいかなる形で実現されるが今後の大きな注目点と言える。
サービスのスケジュールとしては、まず本日から3月15日までで「さくらのIoT Platform α」のパートナーの募集が行なわれ、通信モジュールのできあがる4月にα版を開始。9月にはオープンなβ版に歩みを進め、2016年度中に正式にサービスを開始する予定となっている。