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さくらの熱量チャレンジ ― 第36回

未来の再エネ主力電源化を見据え、各家庭の電力消費を動的にコントロールするフィールド実証を展開

宮古島は「エネルギー自給率向上」を目指し、再エネ+IoTをフル活用

2019年11月11日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp 写真● 曽根田元

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 「一部では太陽光発電の普及はもう限界、などとも言われていますが、電力需給に対する旧態依然とした考え方さえ変えていけば、まだまだ太陽光発電の限界は遠いですよ」。ネクステムズ、宮古島未来エネルギーの社長を務める比嘉直人氏はそう断言する。

 東京からおよそ2000km、沖縄本島の那覇からも約300km離れた宮古島。その宮古島では現在、市が主体となって「エコアイランド宮古島」を宣言し、地下水やサンゴ、動植物固有種などの「自然環境保全」や「家庭ごみ量削減」などと並んで、再生可能エネルギー活用と省エネルギー化を組み合わせた「エネルギー自給率の向上」に取り組んでいる。

 この取り組みにおいて、太陽光発電システムやIoT技術を用いたエネルギー需給管理システム(EMS)によるフィールド実証に挑んでいるのが、ネクステムズと宮古島未来エネルギーだ。そして、このチャレンジの鍵を握る家庭設置用コントローラーを開発したのが京都の日新システムズであり、このコントローラーとクラウドをつなぐ通信サービスとして、さくらインターネットの「セキュアモバイルコネクト」が採用されている。

 昨年(2018年)発表された政府の「第5次エネルギー基本計画」においては、2050年をめどに再生可能エネルギーを「主力電源化」する目標がうたわれている。その実現のためには、単に太陽光発電所などを増やすだけでなく、従来とは異なる電力システムや電力需給アプローチが必要となる。全国に先駆けてその実証に取り組む比嘉氏と日新システムズの内田雅宏氏に、取り組みの内容や未来像を詳しく聞いた。

日新システムズ システム・ソリューション事業部 技術統括部長の内田雅宏氏、宮古島未来エネルギー(MMEC) 代表取締役社長/ネクステムズ 代表取締役社長の比嘉直人氏

再エネ本格活用で「エネルギー自給率50%」を目指すエコアイランド宮古島

 沖縄県宮古島市は、政府から日本で唯一の「島嶼(とうしょ)型環境モデル都市」に認定されており、前述したエコアイランド宮古島宣言の下で“持続可能な島づくり”を目指した多様な取り組みを展開している。

 そのテーマのひとつに「エネルギー自給率の向上」がある。宮古島における現在の主力電源は火力発電だが、沖縄本島と遠く離れた宮古島への燃料運搬には大きなコストがかかり、発電コストも割高だ。現在は助成金を受けており、住民は沖縄本島と同じ電気料金で電力を使えているが、いつまでも持続可能なかたちとは言えない。以前は沖縄電力のグループ会社に勤務し、宮古島メガソーラー実証設備のシステム設計などを手がけた経験を持つ比嘉氏は、「宮古島のような離島では、いかに発電し運用するかに苦労してきました」と語る。

宮古島市が目指すエネルギー供給のビジョン(比嘉氏講演資料より、以下同様)。エネルギー自給率を現状の3%弱から2050年に50%まで引き上げる“エネルギーの地産地消”に取り組む

 宮古島市では、2018年策定の「エコアイランド宮古島推進計画」において、2050年をめどにエネルギー自給率を50%まで引き上げる目標を定めた。そして、そのための具体的なアクションとして「島嶼型スマートコミュニティ実証事業」をスタートさせている。

 この実証事業は、太陽光発電などの再生可能エネルギーを大量導入しつつ、EMSによって島内電力の需要と供給をリアルタイムに監視/コントロールして、需給バランスを最適化していくというものだ。需要側(つまり電力消費側)も積極的にコントロールしてピークシフト(負荷平準化)を行い、再生可能エネルギーの効率的な活用につなげる点が大きなポイントである。

 このフィールド実証事業(第三者所有設備を活用したエリアアグリゲーション実証)を受託したのがネクステムズだ。ネクステムズでは実証事業の第一段階として、一般家庭へのHEMS(家庭向けエネルギー需給管理システム)導入と、その活用による電力需給コントロールの実証を進めている。そしてそのベースとなっているのが、宮古島未来エネルギーが普及を進めている家庭向けの太陽光発電である。

フィールド実証事業においては、宮古島未来エネルギー(MMEC)が普及促進している設備を活用して、ネクステムズが電力需要制御を実施。沖縄電力の協力も得ている

 宮古島未来エネルギーでは、一般家庭に太陽光発電システムや蓄電池、ヒートポンプ給湯機の「エコキュート」、EV充電器などを設置し、そこで作られた電力や温水を販売するビジネスを展開している。この10年ほどの急速な技術進化によって、現在の太陽光発電は、他の発電方式に負けない価格競争力を持つようになった。ただし設備を導入するための初期コストが大きいのが難点だ。この課題をクリアし、普及率を迅速に高めるために、同社では「第三者所有モデル」(PPAモデル:Power Purchase Agreement)を採用した。

 「これは太陽光発電システムやエコキュートといった設備を各世帯の負担で導入するのではなく、宮古島未来エネルギーが一括調達し、所有したまま屋外設置させていただくモデルです。ご契約いただいた世帯は、太陽光発電した電力やエコキュートで沸かしたお湯を従量課金型で割安に購入利用できます。さらに、そこで余った電力を沖縄電力に売却して、われわれの収益とします」(比嘉氏)

ネクステムズ/宮古島未来エネルギーの比嘉氏

 同社のWebサイトを見ると、たとえば戸建住宅向けには電力1kWhあたり20円(蓄電池なし)/27円(蓄電池あり)、温水100リットルあたり50円で販売を行う。10年間(または5年間)契約が前提だが、設備設置費は無料、毎月の基本料金もなしの価格設定だ。

 宮古島未来エネルギーではこの事業の第一弾として、2018年に市営住宅40棟、およそ200世帯と契約し、各世帯への太陽光発電システムやエコキュートの設置を行った。これに続いて現在は、戸建住宅向けの募集を行っている。ここでは蓄電池設置を含むプランも提供し、さらに太陽光発電の利用率を高めていく狙いだ。

 ちなみに宮古島未来エネルギーのビジネスモデルは、電力の固定価格買取制度(FIT制度)を活用しないものだ。沖縄電力と直接、売電契約を結んでおり、「電力系統が喜ぶかたち」(比嘉氏)での電力供給を目指している。

宮古島未来エネルギーの設備普及計画。2018年度は市営住宅40棟に展開、今年度は戸建住宅や事業所にも展開を拡大している

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