自動保存は超絶便利だが判断ミスも起きる
準備が完了したら、無線LANにつながっている「ScanSnap iX500」単体で運用できる。電源を入れて、書類をセットし、スキャンボタンを押せばいい。高速でスキャンされて終了。Evernoteを開いたら、あっけなく保存されていた。
さらにすごいのがファイル名。従来は日付のみだったが、「ScanSnap Cloud」では文書の冒頭にある文字列をスキャンし、それらしい単語をファイル名に付けてくれるのだ。見積書をスキャンしたところ「20151208_御見積書」というファイル名になっていた。これは手間が省けるのでうれしいところ。間違っている場合は変更できるし、そのほかの候補を表示してくれるのも賢い。保存時間も短く、すぐにクラウドサービスを開いても登録されている。大量にスキャンした場合は少し待たされるが、それは手動で行なっても同じことだ。
名刺をまとめてスキャンすると、Eightに登録。紙焼き写真をスキャンすればGoogle Photoに保存される。ちょっとこれは超絶便利だ。今以上に、日常の紙資料を取り込みやすくなる。
ただ、たくさんスキャンしていると、誤判定されることもあった。写真が家計管理サービスのfreeに登録されたり、領収書がEvernoteに登録されることがあった。特に、レシートと名刺、写真などを混在させてスキャンさせるとミスが起きやすいようだ。
この場合は、「ScanSnap Cloud」アプリから変更できる。ただし、「ScanSnap Cloud」サーバーにデータが保存されているのは2週間。異なる保存場所に再アップロードする場合は、2週間以内にチェックしよう。
「ScanSnap Cloud」でできることできないこと
「ツール」メニューから「オプション」を開くと、原稿の種別ごとの設定をカスタマイズできる。とは言え、細かく設定できるのは「文書」のみで、「写真」の画質や圧縮率を変更したりすることはできない。基本的には、連携するクラウドサービスごとに決められた設定を利用することになるだろう。なお、原稿の種別は追加できない。年賀状は「文書」に振り分けられるが、管理の手間を省くために「はがき」カテゴリーも欲しいところだ。
「ScanSnap Cloud」のクラウドストレージの挙動をカスタマイズできないのも気になった。ファイルを選択した状態で、ゴミ箱のアイコンをクリックすれば削除することはできる。もちろん、クラウドサービスに保存されているデータには影響を与えない。しかし、「ScanSnap Cloud」には保存容量の制限はないものの、2週間というのは微妙な期間に感じる。1年くらいの期間でストレージとしても利用できると安心だし、逆に個人情報の塊をスキャンする場合はクラウドストレージにアップロードしたら自動削除する設定があってもありがたい。誤判定のための一時保存だとしても、保存期間をある程度選びたいところだ。
とにかく、ドキュメントスキャナー単体で動作し、無線LANでクラウドに保存してくれるのがありがたい。4種類とはいえ、名刺とレシート、写真を判別してくれるだけでも随分と手間が省ける。特に、名刺はもう溜めてしまうことがなくなるだろう。文書も内容に関連したファイル名が付けられるので、活用度合いも高まりそうだ。
登場したばかりでこの完成度は大いに期待できそう。判別精度の向上や原稿種別の追加、OCRによるテキスト追加機能の実装などが実現することを期待したい。「ScanSnap Cloud」は、「ScanSnap」シリーズのキラーコンテンツの一つとなることは間違いないだろう。
筆者紹介─柳谷智宣
1972年生まれ。ネットブックからワークステーションまで、日々ありとあらゆる新製品を扱っているITライター。パソコンやIT関連の媒体で、特集や連載、単行本を多数手がける。PC歴は四半世紀を超え、デビューはX1C(シャープ)から。メインPCは自作、スマホはiPhone+Xperia、ノートはSurface Pro3とMacbook Air。著書に「銀座のバーがウイスキーを70円で売れるワケ」(日経BP社)、「Twitter Perfect GuideBook」(ソーテック社)、「Dropbox WORKING」(翔泳社)、「仕事が3倍速くなるケータイ電話秒速スゴ技」(講談社)など。筋金入りのバーホッパーで夜ごとバーをハシゴしている。好きが高じて、「原価BAR」を共同経営。現在、五反田・赤坂見附・銀座で営業中。
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