iPhoneでワイヤレスオーディオを楽しむのは、大きく分けて2つの方法がある。Bluetoothと無線LAN(AirPlay)だ。本特集はそんなワイヤレス音楽再生機器を紹介していくが、今回はポータブルタイプのBluetoothスピーカーにフォーカスする。
今やスマートフォンなどと組み合わせて使うことを想定したオーディオ機器では、対応していないものはないのではないか? とさえ思えるのがBluetooth。
今回はそんなBluetoothスピーカーの最新おすすめモデルを紹介していくが、その前にBluetoothについておさらいしていこう。
Bluetoothスピーカーが爆発的に普及した
そのきっかけはLigthning端子
今やスマホには普通に搭載されているBluetooth。ヘッドセットなどの対応製品は2000年頃から登場し、(日本において一般向けの)携帯電話に搭載されたのは2004年頃から。つまり、10年以上もの長い歴史があるのだが、当初は思ったよりも普及しなかった。
なぜか? オーディオに関しては音が悪かったからだ。Bluetooth規格では、音声信号は「SBC」というコーデックで圧縮されて伝送するが、いわゆる非可逆(ロッシー)圧縮のため情報が間引かれてしまう。
要するに音質劣化が生じる。そして、遅延の問題もある。音楽再生だけなら問題はあまりないが、動画コンテンツやゲームでは映像と音にズレが生じてしまう。ただし、これらは現在ではかなり改善されているし、あまり本質的な問題ではない。
その当時、モバイルPCや携帯プレーヤーなどでの再生は有線接続が当たり前で、しかもデジタル接続をすることで、より高音質な再生ができるという点がアピールされていた。実際、アナログ接続、デジタル接続を問わず、有線接続の方が、Bluetoothよりも音質がよかったのだ。
この当時のスピーカーは、iPodやウォークマンなどを直接接続するためのドックを備えており「Dockスピーカー」などを呼ばれていた。
Dockスピーカーにも弱点はあった。iPod用Dockを持つモデルは事実上iPod専用となってしまうので、携帯プレーヤーやその頃普及しはじめたスマホなどを別のものに買い換えると、Dockスピーカーも買い換える必要が出てしまうわけだ。
そんな状況の中、2012年発売のiPhone 5以降、iPhoneやiPodは「Lightning」と呼ばれる接続端子に切り替わる。つまり、機種変更をするとDockスピーカーも買い換えなければならないという事態が発生した。
筆者が思うに、それまでは決して主流ではなかったBluetoothスピーカーが一気に普及したのはこれがきっかけだったと思う。Bluetooth規格自体は、スマホや携帯プレーヤーの多くが対応していたので、対応機器であればiPhoneでもAndroidでも使える。
ワイヤレス規格だから端子形状などを気にする心配もない。実際、Lightning用のDockを備えたスピーカーも登場したが、その数は一気に減少し、DockではなくBluetoothに対応するスピーカーが爆発的に増加したのだ。
コーデックの進化でBluetoothも高音質化へ
Bluetoothの規格自体も進化した。音質の悪さや遅延の問題を改善するため、オプション規格としての低遅延な「apt-X」や、圧縮方式として広く普及していた「AAC」といったコーデックを採り入れ、より高音質で楽しめるようになってきていた。
また、ソニーは独自の「LDAC」というコーデックを開発。Bluetoothでハイレゾ相当の音を伝送できる。
ちなみに、Bluetoothで音楽を再生するためには、「A2DP」というプロファイルとSBCなどのコーデックに、送信側と受信側の両方が対応している必要がある。注意すべきは対応コーデックで、SBCにはほとんどのBluetoothスピーカーが対応しているものの、AACやapt-Xには対応していないものも多い。LDACに関してはソニー製品のみが対応というのが現状だ。
スピーカーを製造するオーディオメーカーもBluetoothの音質改善に積極的になり、音質は大きく向上した。今や、あまり有線接続と無線接続の音質差を気にする人はあまりいないだろう。
これに関して言うと、音質にこだわる人は携帯プレーヤーなどでもハイレゾ音源の再生をする方向へシフトしていたので、非圧縮あるいはロスレス圧縮、デジタル接続などにこだわる人はそもそもBluetoothには関心がなく有線接続一択だったし、同じワイヤレスならば無線LAN接続に目を向けるなど、音楽を楽しむスタイルがはっきりと二極化したこともBluetoothスピーカーが普及した理由になるだろう。
今や、Apple MusicやGoogle Play Musicといった定額制音楽配信サービスも盛り上がってきており、これらCD品質であり音源自体も圧縮フォーマットで音楽をカジュアルに楽しみたい人にとっては、ワイヤレスで手軽に楽しめるし、実用上音質も十分なレベルとなったBluetoothがポータブルオーディオの接続方法として主流になったわけだ。
とはいえ、Bluetoothによるオーディオ再生にもまだまだ弱点はある。無線通信規格の泣き所である接続不良だ。信号の干渉などが原因となる接続不良を回避する技術も盛り込まれているが、Bluetoothが採用する2.4GHz帯はWi-Fiなどでも利用される帯域で、使用される機器が増えた現在は、通信障害が発生することも少なくない。
次ページからは最新のおすすめBluetoothスピーカーを紹介していこう。
(次ページに続く、「絶大な人気を誇るコンパクトスピーカー ボーズ「SoundLink Mini Bluetooth speaker II」」)
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