VR世代の新しいペイントソフト「Medium」
Oculus Touchの可能性をさらに示したのが、「Medium」というアプリだ。Touchにバンドルされると発表された。
仮想空間内での彫刻を行なうソフトとでも言うべきだろうか。仮想空間内に、任意の球や四角形などの物体を出現させることができる。その物体を、彫刻刀で彫るようにTouchを操作すると、細かく整形していくことができるのだ。もちろん、自由に色も塗れ、方向を変えて違う視点から見たり、サイズの変更も簡単にできる。
筆者も実際に体験してみたが、仮想空間内にしか存在しないはずの中空に、なにもないはずなのに、物体が確実に存在していることが視覚的には感じられる不可思議な感覚を覚えた。操作も驚くほど簡単で、重さのない発泡スチロールを加工しているようなイメージ。使い方は大抵の人が5分もあれば覚えることができるだろう。いつまでも触り続けていたいと感じさせる魅力的なアプリだ。
Iribe氏は、「優れたハードにはペイントソフトがついてきたもの」と述べた。かつて、1984年に発売されたMacintoshには、ペイントソフトの「MacPaint」が付属しており、マウス操作の簡単さと魅力を学習させる役割を担っていた。それを意識していると思われる。
VRとTouchによりFPSの体験が大きく変わる
また、Touchはごく一部の企業にしか貸し出されていないが、それらの企業が開発したゲームのデモも一部は体験することができた。特に注目を受けていたのが、ゲームエンジンのUnreal Engineで知られるEpic Gamesが開発している「Bullet Train」のデモだ。
このゲームでは、プレーヤーは地下鉄で、敵と戦うFPSだ。拳銃、ショットガンやライフルといった武器を拾い、現実に使うように構えて撃って、次々に襲ってくる敵を倒していく。
一般的なFPSと大きく違うのが、移動は指定されたテレポート地点を使って移動するという点だ。現在のVRデバイスでは、FPSは通常のゲームで行なわれるように歩くと、VR酔いを引き起こしやすいことがわかっている。現実の自分は動作していないのに、VR内の自分の足場が動いていることから、その空間認識のずれが起きてしまうためだ。
その回避のために、テレポートをさせるというのは、非常に優れたアイデアだ。自分がどこに移動するのかが事前に予測でき、テレポート時に画面を暗くすることで、VR酔いを引き起こしにくいように工夫をしているようだ。
地下鉄が駅に入ると、次々に敵が銃撃して襲ってくるので、武器を拾って、敵をどんどんと倒さなければならない。敵の近くにテレポートして殴り倒すといったこともできる。さらに、プレーヤーはボタン1つで、経過する時間を遅らせることも可能。敵の銃弾がゆっくりと近づいてくるのだが、弾をつかんで投げ返すこともできる。
後半にロボットのボスが登場するのだが、ボスは次々にミサイルを撃ってくる。ボスへの攻撃は、なんとそのミサイルをつかんで、ボスに投げ返すことで行なう。次々に飛んでくるミサイルをどんどんとつかんで投げ返し、その弾が命中したときはかなり気持ちがいい。
デモは8分程度のものだが、敵との戦いが忙しく、全身を動かして遊んだ。既存のFPSをゲームコントローラーから、Touchに置き換えて、新しいゲーム性を持たせたらどうなるのかが考え抜かれたデモで、ゲーム体験としても新鮮な内容だった。RiftとTouchが生み出すゲームの未来を存分に感じさせるものだ。
(次ページでは、「VRのゲームは2Dから3Dへと変化する時期に似ている」)