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VRを「使っていない人」を巻き込む仕組みがおもしろい

VRの弱点をうまく利用したボードゲームに流行の予感あり

2015年11月01日 15時00分更新

文● 新清士、編集●ASCII.jp

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 10月24日~25日に東京・お台場の日本科学未来館でデジタルコンテンツエキスポの併催イベントとしてOcuFes(オキュフェス)開発者会が開催された。Oculus Riftに代表されるVR(バーチャルリアリティー)のコンテンツを作る開発者たちのセミナー・展示イベントで、毎季節ごとに開催されている。今回は、15グループあまりが展示を行なっていた。

 そのなかでも、VRとボードゲームを組み合わせたまったく新しいコンセプトのゲーム「タワー・オブ・メイズ」が高い注目を集めていた。VRを使って、4人が同時にプレーすることができるボードゲームで、2015年に3人で創業したベンチャー企業ギフトテンインダストリが開発中だ。

VRゴーグルの弱点をうまく利用したゲーム

 このゲームは4人で冒険者を迷路のスタートからゴールに向かって、正しく導くことが目的。問題は迷路の形がわからないことで、どんな繋がりをしているのかを推測するのが、プレーヤーに課された仕事だ。

 現在のVRゲームはさまざまな課題を抱えている。最大の弱点は、何よりもVRを多くの人が同時に楽しむことができないという限界だ。

 VRゴーグルを装着している間は、プレーしている人はVRの世界に没入することができるが、それ以外の人は基本的にただ待っていることしかできない。

 ゲームをデザインしている濱田 隆史氏は、その限界そのものをゲームの中に取り込めないかと、逆転の発想でゲームをデザインしてみることにした。4人の参加者のうち、VRを1人だけが見ることができて、ほかの人が見られないという環境は、参加者の全員が同じ情報を持てないために、その不足している情報を利用し合うことで新しいゲームが生み出せると考えたのだ。

 こうした各プレーヤーが持つ情報が違っているゲームを「非対称性ゲーム」と呼ぶ。

 4人のプレーヤーのうち、1人がVRゴーグルを付け、画面には迷路の特定の場所が表示される。そこで見えている空間の特徴を把握し、ほかのプレーヤーに迷路の形状がどのようなものなのかを伝えて、盤上のコマを使って迷路を作ってもらわなければならない。1回にVRゴーグルで迷路を見ることができる時間は60秒しかない。プレーヤーはVR空間で移動できないが、前後左右のいろいろな方向を向くことはできるため、そこから見える迷路の形状の情報をほかのプレーヤーに細かく伝える必要がある。

 迷路を見る時間が終了したら、次にほかのプレーヤーにVRゴーグルを渡す。迷路の別の場所が表示されるので、ほかのプレーヤーは迷路の形状を推測する作業をする。それを9回繰り返したのちに、それまでの情報を元に、迷路の形状を再現しなければならない。

 推理が終了したら、いよいよ冒険者がスタート地点から出発する。正しく、迷路の形が推測できており、ゴールにまで導くことができれば、プレーヤー全員の勝利ということになる。1回のプレー時間は20~30分といったところだ。

VRゴーグルを付けたプレーヤーの言葉を受けて、ほかのプレーヤーはパズルを組み合わせて迷路を作っていく

タワー・オブ・メイズのVR画面で見えている映像

(次ページでは、「VRの抱える問題と解決の糸口」)

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