IFA 2015レポート 第17回
パナソニックとサムスンがIFAで実機をデモ
4K対応の次世代Ultra HD Blu-ray、来春3月を目指して着々と開発進む
2015年09月07日 02時18分更新
IFA 2015はA&Vの”V”、すなわち映像関連製品にも見どころ豊富なイベントだ。その中での最大の関心事となていたのが”次世代BD”こと、「Ultra HD Blu-ray」関連の情報だ。
「Ultra HD Blu-ray」自体は、規格を作る団体のため通例として大規模なカンファレンスなどは行われていないものの、既に今年7月にはライセンス発行をスタート。あとは、映画スタジオ各社とプレイヤーを製造するメーカー各社がいつ環境を整えて発売に踏み切るかという段階にある。
そんな最中、IFA 2015ではパナソニック、サムスンによるプレイヤーの実動デモが行っていた。
以前から「Ultra HD Blu-ray」の情報を追っていない人のために「Ultra HD Blu-ray」の概略をざっと説明しておこう。
Ultra HD Blu-rayは現在のBlu-rayの後継として登場する、映像ディスクの最新規格だ。主なスペックはディスク仕様は3層で最大100GB、映像はHEVC(H.265)コーデックで、最大ビットレートは100Mbps、映像信号は3840x2160ドット、色域はBT.2020へと拡大している。
従来のBDパッケージには新しい高画質の考え方として「HDR」(High Dynamic Range)が採用され、映像の輝度信号が現行の100nitからその100倍の最大10000nit、ビット数は10itまで拡大された。
今年のIFAは「HDR」が4Kに続くネクストトレンドとなっている。各社がHDRのデモ展示をしていたが、その背景にはUltra HD Blu-rayがHDRを採用することに決まったからと考えると、そのインパクトも判るだろう(ちなみにHDRはUltra HD Blu-rayのほかにも、NetflixやAmazonといった映像配信事業者も採用する)。
パナソニックがプロフェッショナル向けに「Ultra HD Blu-ray」を実働デモ
注目の「Ultra HD Blu-ray」をIFA 2015で最初に披露したのは、日本メーカーのパナソニックだった。IFA 2015のプレスカンファレンスで直接言及はなかったものの、同日にオープンしたパナソニックのブース内でUltra HD Blu-rayのプレイヤーと、その映像体験である高輝度の液晶テレビの試作機による映像体験を展示していた。
さらに、ブース内に設けられたプロフェッショナル向けスペースでは、一部のメディア向けに、Ultra HD Blu-rayのプレイヤーの実動デモが行われていた。ちなみに、このデモの主旨はUltra HD Blu-ray VER.01の仕様に準拠した信号をディスクに記録し、プレイヤーで再生するというもので、認証さえ取れれば既にプレイヤーとして通用する機能を備えるレベルのものだ。
あくまでプロフェッショナル向けに限られた形でデモされたUltra HD Blu-rayであるが、その映像体験たるや、まさに圧巻のレベルだった。一般来場者向けのデモではなく、文字通りプロフェッショナル向けということもあり、判りやすいウケよりも本音ベースで技術の実力を見せるというものだったのだが、ひと目みて圧倒的な情報量に唸らされた。
HDRとなると典型的なのは夜景であったり画面内できらめくネオンの輝きのようなものを想像しがちだが、まず視聴したのは雪山を撮影したもの。その映像は空の青の抜けと、残雪の白の中にある階調の機微を、一画面の中で描ききっていた。デジタルカメラのHDR機能を使ったことがある人があれば、どちらの階調も美しく残る良さが判るだろう。
情報量も圧倒的だ。いわゆる解像感を増すエッジのシャープさなどはつけていない環境で、近づけば近づくほど微細情報がまして見える。その画質たるや普通の「4K」のはるかに上。HDRの輝度レンジのおかげで情報量自体も増すのだ。暗がりの夜景や提灯の映像では暗部の沈み込みから。従来以上のピークの眩しさまでがダイナミックかつ、どこの階調も潰れない。
まさに、今までの映像体験では両立しなかった黒と白、階調とレンジがすべて両立するのだ。
思わずベタ褒めに褒めてしまうパナソニックのUltra HD Blu-rayだが、映画スタジオの作品環境などを踏まえて、ハードウェアの発売時期は「2015年度内」になる見込みとのことだ。
サムスンのUltraHD Blu-rayプレイヤーは500ドル
発売は2016年初頭か3月
IFA2015の会場内でもう一社のみUltraHD Blu-rayプレイヤーの実機を展示していた。それが韓国のサムスン電子だ。
同社はプレスカンファレンスにてUltraHD Blu-rayプレイヤーの「UBD-K8500」を発表。会期中には同社ブース内でデモしていた。実際にBDディスクからデータを読み出して再生を実働している状態で、実動しているという点である程度は完成しているものだ。
デモでは、映画『X-Men: Days of Future Past』を上映していた。ただし、デモ表記として「4K Ultra HD with High Dynaic Range」と明記されてたが、実際の映像はそもそも4Kであるのか怪しい解像感、あまり実感できないHDRと実力以前にソースが悪かった。
スペック面では色深度10bitまでの対応で5GHz/2.4GHzのWi-Fiをビルトイン、映像出力はHDMIと光デジタル音声端子、USB端子を備える。
スペック表記のなかで「Disk to USB」という機能がったので説明員に詳細を訪ねて見ると、「BDのディスクをセットするとリッピングしてHDDやUSBメモリに持ち出せるんだよ。ただし、著作権保護対応のもので再生側も著作権保護対応のPCやスマホが必要だけどね」と詳しい解説が返ってきたので、UltraHD Blu-rayとして実装された「BD Copy」の機能であることは間違いない。同機能は映画スタジオではFOXが特に推進しているもので、サムスンはFOXとの連携を深めているため発売当初から対応してくるのだろう。
さて、このUBD-K8500はプレンカファレンスでは2016年初頭発売と予告がなされていたが、ブースの担当者の回答は2016年3月発売、500ドルというコメントが。次世代BDである「UltraHD Blu-ray」のプレイヤーの初物が500ドルというのは、なかなかリーズナブルと言えそうだ。
パナソニックの予告する「年度内」、サムスンの予告する「3月」は時期的にも近い。つまりその時期が「Ultra HD Blu-ray」が登場する時期と見て間違いなさそうだ。
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