今回はスーパーコンピューターの系譜でいよいよNVIDIAのGPGPUの話を……と思ったのだが、既報の通りAMDがE3でRadeon R9 Fury/Nanoを発表したので、こちらを含めてAMDのGPUロードマップそのものをアップデートしておきたい。
E3における発表会そのもののレポートはこちらにある通りで、およそ1時間ほどの説明会で、まずローエンドのR9 360からハイクラスのR9 390Xまでを紹介、その後にFijiコアを採用したR9 Fury/Nanoの説明に移ったので、これを踏襲してまずはローエンドから説明しよう。
R9 390XとR9 390が
300シリーズに追加
連載304回で330~380の表を掲載したが、まずこれが若干間違っていた。R9グレードに属するのはR9 380までで、370~350はR7グレード、340と(ロードマップには記していない)330はR5グレードとなるので、お詫びして訂正させていただく。
では本論に入ろう。R9 380~R7 360までは、5月の時点でスペックがAMDのサイトに公開されていたが、今回新たにR9 390XとR9 390の2製品も追加された。
これはRadeon R9 290XとR9 290のリナンバリングであるが、違いとして以下の3つが挙げられる。
- GPUコアの最大動作周波数引き上げ(947/1000MHz→1000/1050MHz)
- メモリーの転送速度引き上げ(5GHz→6GHz)
- メモリー搭載量の引き上げ(4GB→8GB)
その一方で価格はR9 390が329ドル、R9 390Xで429ドルとなっており、2013年秋におけるR9 290の399ドル、R9 290Xの549ドルから、かなり引き下げられた。
といっても、描画性能はR9 290/290Xと大して変わらないわけで、競争力はあまり高くない。強いて言えば、8GBのメモリーを搭載して329ドルという製品はNVIDIAには今のところ見当たらず、このあたりがセールスポイントになるかもしれない。
ちなみに発表会においては、「R9 390やR9 390Xは4Kや5K解像度でも十分にプレイ可能な性能を持つ」という説明の仕方をしており、4Kはともかく5Kに関してはこの8GBに増量されたメモリーが効果的、という意味ではないかと思われる。
R9 380以下に関しても基本はわずかな動作周波数およびメモリー転送速度の引き上げと価格切り下げがメインであり、スペックそのものに変化はない。このクラスでは、さすがにメモリー容量の倍増は価格的に難しいようで、メモリー量は同じままである。
またローエンドのR7 350以下は今回はまだ未発表であるが、基本的にこのグレードはOEM向けがメインとなる関係で、大々的に発表などは行なわれない模様だ。おそらくRx 300シリーズのブランドがある程度浸透した8月あるいは9月あたりに出荷開始となるだろう。
(→次ページヘ続く 「FijiはTSMCの28nmプロセス?」)

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