日本マイクロソフトは、2014年1月に、愛媛県と「地域活性化協働プログラム」において協業すると発表。この提携を元に、2014年4月には、愛媛県が展開する「愛媛マルゴト自転車道」の推進で連携。その成果のひとつとして、「愛媛マルゴト自転車道サービスサイト」を公開した。
さらに愛媛県では、2014年10月に、広島県と協力して8000人のサイクリストが参加する日本最大級の国際サイクリング大会「サイクリングしまなみ」を開催。「サイクリングの聖地」の称号を手に入れるという成功ぶりは、自転車を切り口にした地域活性化の事例として、全国からも注目を集めている。
そしてここでも、日本マイクロソフトの協業成果も見逃せない。1年間の協業を終え、このほど、日本マイクロソフトの樋口泰行社長と、愛媛県の中村時広知事との対談が実現した。その様子を3回に渡って掲載する。
日本マイクロソフトと愛媛県が1年に渡って取り組んできたこの協業において、まず特筆できるのが、「愛媛マルゴト自転車道」の取り組みだろう。愛媛マルゴト自転車道は、瀬戸内しまなみ海道を中心に、県下全域で自転車道を整備。愛媛県が「サイクリング・パラダイス」となることを目指す取り組みだ。日本マイクロソフトは、ICTの利活用促進を通じて、これを支援。「愛媛マルゴト自転車道サービスサイト」の構築では、日本マイクロソフトが全面的に支援した。そもそも、愛媛県はなぜ自転車に力を注いでいるのだろうか。
中村 私は、今から5年前の知事選において、公約のひとつに「瀬戸内しまなみ海道を世界に発信する」ことを掲げました。ただ、正直なところ、その時点ではどんな風に世界に発信するのかという具体的なアイデアはまったくありませんでした。
知事に就任して、しまなみ海道をどう訴求しようかと考えていたときに着目したのが、本州と四国の間にかかっている3本の橋の中で、唯一、しまなみ海道だけが自転車専用道を持っているという点でした。この特徴を生かしたいと考え、サイクリングで売り出すことを選びました。最初の活動は、世界に情報を発信すると公約で掲げましたから、世界最大の自転車メーカーとタイアップするのがいいと考え、調べ始めたことでした。
先入観もあって、世界最大の自転車メーカーは日本のメーカーだと思っていたのですが、調べてみたら、台湾のメーカーが圧倒的なシェアを持ち、世界ナンバーワンだった。それで、今から4年前の話ですが、飛び込みで、台中市の本社に行ってきたんです。創業者との面談がかない、1時間弱の予定でお会いしたのですが、話が弾み、なんと面談は4時間にも及んでしまいました。
このとき、目からウロコが落ちるような話を聞いたんです。日本では、自転車といえば、通勤、通学、ショッピングのための移動手段として捉えています。しかし、その創業者によると、自転車の使い方をちょっと変えるだけで、3つのモノが得られるというんです。それは、「健康」であり、「生きがい」であり、「友情」です。私はこの話を聞いて、自転車で新たな文化が創出できると直感しました。そう考えて、「自転車新文化」と名付けたのです。
樋口 「健康」「生きがい」「友情」というのはいいですね。私は、まだ日本的な、移動の手段として自転車を乗っているにすぎませんが(笑)、非常に関心が出てきますね。サイクリングライフも豊かになると思います。
中村 そのときに感じたのは、自転車を使って人を呼び込むことを優先するのではなく、自転車の新たな楽しみ方である「健康」「生きがい」「友情」をプレゼントしてくれる「自転車新文化」を広げることを優先したいということでした。自転車新文化が広がれば、そのあとに副次的に人が増えてくるだろう。一時的なものではなく、広がりを持ち、浸透させていくことが大切だと。だからこそ、順番を変えなくてはいけないと考えたんです。
そこで、まずは自分が自転車に乗り始めた。次には県庁の幹部職員、その次は県内の市長や町長。そして、さらには県議会議員。そして経済団体の社長たち。こうやって広げていったら、地元テレビ局のローカルニュースで取り上げられるようになった。すると、「あんな体型の人が乗っているのか」、「あんな歳の人でもできるんだ」というようなことが、テレビを通じて広がり始めた。
今や、愛媛では、サイクリングはひとつのブームになっています。こうした流れの中で、日本マイクロソフトが愛媛県に関心を持ってもらった。これによって、我々が不得手としている情報発信をカバーしてもらえると確信しました。大変うれしいアプローチでした。
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