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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第306回

IT大手の原発投資相次ぐ AIで電力需要が爆増

2024年10月22日 07時00分更新

文● 小島寛明

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 米国のIT大手が、原子力発電に投資や契約をするというニュースが相次いでいる。

 2024年9月下旬以降の1ヵ月で、少なくともマイクロソフト、グーグル、アマゾンが原子力発電所と契約をしたり、投資をしたりする方針が明らかになっている。IT大手各社は、AI(人工知能)関連のサービスの提供に欠かせない高度な計算を実行するため、世界各地でデータセンターを増設している。

 高度な計算の実行には、膨大な電力が必要だ。各社が狙っているのは、こうした電力コストの低減だろう。さらに、地球規模の気候変動と脱炭素の流れがある。世界最大手のIT企業としては、電力を使いまくって、大量の温室効果ガスを排出するのは、イメージが悪い。そこで、二酸化炭素など温室効果ガスの排出が少ない原発へのシフトを強める流れが生じている。

 ただ、一連のニュースに対しては、広島、長崎への原子力爆弾の投下(1945年)と、東日本大震災での原発事故(2011年)を経験した日本で暮らす者としては、どうしても素通りできない思いも残る。

スリーマイル島の原発を再稼働させるMS

 マイクロソフトのニュースで注目されたのは、原発の立地だ。8月20日のマイクロソフトと電力会社コンステレーションの発表によれば、コンステレーションはマイクロソフトとの契約で、2019年に稼働を停止していたスリーマイル島原発1号機を再稼働させる。

 スリーマイル島という名前を記憶している人も少なからずいるだろう。1979年3月、スリーマイル島原発2号機で、核燃料が溶けるメルトダウンが起き、14万人を超える住民が避難した。再稼働される1号機については、この事故の影響はなかったとされる。米国史上では、最悪の原発事故として記憶されている。こうした背景もあってか、1号機を再稼働させるマイクロソフトの計画は、世界各国の主要メディアが大きく取り上げている。

 コンステレーションは、老朽化した1号機を4年かけて改修し、2028年以降、発電した電力の全てをマイクロソフトに供給する計画だ。マイクロソフト側は9月20日のプレスリリースで、「脱炭素」を目指す同社の取り組みを強調しているものの、発表文の中にはネガティブなイメージを避けるためか、「スリーマイル」の言葉を用いず、「ペンシルバニア州の原子力施設」を再稼働させると書いている。

 AIと電気自動車へのシフトに伴い、米国の電力需要は今後、大幅に増加すると予測されている。調査会社ロジウム・グループが7月23日に公表した予測によれば、2035年には2023年と比べて、米国の電力需要は24~29%増加するという。

グーグルは、小型原子炉開発の新興企業と契約

 グーグルは、マイクロソフトの発表の約1ヵ月後にあたる10月14日、カイロス・パワーとの契約を発表した。カイロス社は、小型の原子炉の開発に取り組む企業で、グーグルが小型炉の建設を支援し、小型炉からの電力供給が開始される2030年以降、グーグルは電力の供給を受ける計画だ。

 小型原子炉は、従来の大規模な原子炉と比べて低コストで建設が可能で、安全性も向上すると期待されているが、商業利用されている事例は極めて限られている。米国では、NuScale社が2029年の運転開始を目指し、米国の規制当局の審査を受けていたが、発電コストが想定を大幅に上回り、2023年11月にアイダホ州での建設計画の中止を発表している。NuScale社の先例を見る限り、グーグルは、現時点ではコスト面で疑問符のついている新しい技術への投資を決めたとみることができる。

巨大IT企業は小型炉に賭ける

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