独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)は2月23日、マリアナ海溝の超深海水塊に、上層部の深海とは異なる独自の微生物生態系が存在すると発表した。
海洋の深海生態系は、海の上層部にある生態系が作り出した有機物を分解するエネルギーで成り立っているが、その分解にともなうアンモニアや硫黄化合物をエネルギーとして炭素固定を行う生物も存在し、単に有機物を分解するだけではなく分解と合成という生態系が確立している。JAMSTECや東京農工大学、東京工業大学、横浜市立大学、東京大学などからなる研究グループでは、この生態系を体系的に確認するため、海洋表層から深海までの海水試料を採取、微生物の培養や分子生態解析技術を用いて比較検討した。
栄養塩の濃度や微生物の数などでは深海層から超深海層までは違いがなく、基本的に炭素固定能を持つ系統群が優占し、基本的に上層から沈降する有機物を分解する生態系(がさらに分解されて下層の栄養供給源となる)であることがわかった。しかし水深6000m以深の超深海環境では従属栄養系統群が優占することが明らかとなった。これは上層から沈降する有機物とは異なる供給源が存在することを示している。
マリアナ海溝最深部は潮流によって他の海域から有機物が流れ込むとは考えにくく、研究グループでは地震などによって海溝斜面が崩壊し、その堆積物から有機物が供給されている可能性が最も高いとしており、太陽からのエネルギーによる光合成を基本とした上層生態系とは隔絶した生態系と推測している。
研究グループでは、さまざまな分析を加えて調査結果に加えることで検証を行い、超深海・海溝生命圏が堆積物由来の有機物によって支えられていることを証明する予定とともに、同種の海溝でも同様の調査を進めるという。