ベクトル型の代表作CRAY
その後も数々の後継機を生み出す
1995年にはCray J90が発表される。こちらはCRIが開発した製品である。このJ90は0.5μmプロセスのCMOSで製造され、動作周波数は100MHzに達している。このJ90に関する論文の要約(関連リンク)を読むと、専用ASICを10種類おこしており、最大規模のものは50万ゲート相当というから、かなり小型化が進んだものと思われる。
その分プロセッサー数も増え、J98では最大8つ、J916で最大16、J932では最大32プロセッサーが搭載された。プロセッサーそのものはASIC2つで構成されたので、多数搭載するのはそう難しくなかったのだろう。
さらに1997年には、スカラー演算部のみ200MHz(ベクトル演算部は引き続き100MHzのまま)に動作周波数を引き上げたJ90SEをリリースする。
一連のシリーズ最後を飾るのは、1998年に投入されたCRAY SV1である。これに先立つ1996年、CRIはSilicon Graphicsに買収され、同社のスーパーコンピューター部門になり、これまでと違ったシステムの開発に携わることになる。
なぜCRIが買収されたかは、Los Angeles Timesの記事(関連リンク)にあるが、そもそもスーパーコンピューターが発達したのは、軍が非常に高い計算能力を必要としたからだ。もっぱら核兵器などの開発やシミュレーションである。
ところが、冷戦終了の結果、1990年あたりから核兵器開発のペースがぐんと落ち(0にはなっていない)、今までのように「とにかく速いマシンをもってこい」という必要がなくなったからだ。
軍事開発に変わり数値風洞を初めとする新しい用途が次第に盛り上がりつつはあったのだが、軍に比べるとずっと予算は厳しく、結果売り上げは低迷することになったからだ。
そのような背景から、CRIは1995年には2億2600万ドルもの損失を出す。実際には1990年代に入ってから同社の状況は芳しくなく、しばしばリストラを行なっていたため、これは来るべきものが来たと受け止められた。
ただこの時点で同社は4億3700万ドル分の予約を抱えており、またJ90などのローエンド品は好調だったため、適当な資金とビジネスモデルの適正化をすれば復活は可能と見なしたのだろう。SGIは7億5200万ドルで同社を買収した。
以上のことからSV1はSGIに買収された後の製品となる。基本的にはJ90の高速版(当初は300MHz、後に500MHz版もリリース)で、J90およびY-MPとのバイナリー互換をもっていたが、その一方でマルチストリーミング(最大4つのCPUコアを仮想的な1つのコアとして動作させることで、最大4倍の性能を出す)といった機能も搭載された。
またシステムそのものは最大32CPUであるが、最大32のシステムをクラスタリングという方法で同時に稼動させることが可能で、この場合は1024コアまでにスケールアップ可能だった。
さらにSV2という製品も当時のロードマップには掲載されていた。ただこれを迎える前に、SGIは再びCRAYを売却してしまい、SV2は日の目を見ることなく消えてしまった。
さて、CRIはこれら以外の製品(Cray SC6400は別の形で日の目を見た)もあったし、SGI時代にはCRAY T3D/T3Eという製品も出しているが、これらはいずれもここまでの製品と互換性がなく、アーキテクチャーも異なっている。
またSGIから再売却された現在のCRAY Inc.の製品ラインナップもまた複雑なので、これらは別の機会に説明するとして、次回からはCrayに代表されるベクトル型とは異なる方向性のマシンを解説していきたい。
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