このページの本文へ

クラウドへの道を開いたNetApp Insight 2014 第2回

FlexPodの投資は継続!フラッシュはデータモビリティで差別化

ネットアップのクラウド戦略は顧客の競争優位性につながる

2014年10月30日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

10月28日に行なわれたネットアップの「Insight 2014」の基調講演の壇上に立ったのは米ネットアップCEOのトム・ジョージェンス氏だ。クラウドを中心にした最新のITトレンドに対して、ネットアップはどう向かい合っているのか、顧客の目線を踏まえて説明した。

「Insight」はネットアップの転換点になるイベント

 ネットアップのInsightは、もともと同社のエンジニアが一同に会する技術者向けイベントだったが、2001年には対象をパートナーまで拡大。今年はさらに顧客やアナリスト/プレスまで参加できることになり、3000名以上の大型イベントになった。こうした経緯から今年は、世界で一番巨大なホテルと言われる「MGM GRAND」が会場になっており、基調講演もアリーナクラスの会場で行なわれた。

基調講演が行なわれたMGM GRANDのConference Center

 基調講演に登壇した米ネットアップCEOのトム・ジョージェンス氏は、参加者に謝辞を述べた後、昨年の業績について紹介した。主力製品のストレージOS「clustered Data ONTAP」を搭載したコントローラーは1万台以上出荷され、統合型インフラの「FlexPod」も30億ドル以上を売りあげた。SANストレージの「E-Series」や管理ツールの「OnCommandシリーズ」も好調で、フラッシュの出荷数も世界最大規模。厳しい市場環境の中、マーケットシェアも過去10年間の平均を上回ったという。

米ネットアップCEOのトム・ジョージェンス氏

 こうした成長のきっかけになるのは、まさにこのInsightだとジョージェンス氏は聴衆に語りかける。「2年前のInsightでみなさんに行動を呼びかけたのをきっかけに、clustered Data ONTAPは大きく伸びた。昨年はネットアップは製品の会社ではなく、ポートフォリオの会社だと訴えた結果、E-SeriesやOnComandなどが成長し始めた。Insightは転換点になるイベントだ」(ジョージェンス氏)。そして、今年は初めて顧客を招待することで、うまくいっているところ、うまくいっていないところを互いに共有するのが重要だと説いた。

ユーザーに価値をもたらすならクラウドを支援する

 続いてジョージェンス氏は、「クラウド」「統合型システム」「フラッシュ」など最新のストレージトレンドについて意見を述べる。特に力を入れたのが、やはりクラウドへのアプローチだ。

 ネットアップはHPやIBMのように自社でクラウドサービスを立ち上げるわけではなく、オンプレミスに拘泥するわけでもない。「他社とはまったく違う。(AWSやMicrosoftなど)ハイパースケールクラウドのプレイヤーがユーザーに価値をもたらすのであれば、それを支援したい。その支援を加速するのがわれわれの原則だ」(ジョージェンス氏)。

 実際、エンタープライズのオンプレミス市場を主戦場とするネットアップだが、かなり踏み込んでクラウドの価値を認める。ジョージェンス氏は、「HPやIBMのサーバーは使い終わったからといって返却することはできない。でも、クラウドであれば、インフラに投資する必要なく、コンセプトの検証や事業開発、季節的な変動に対応できる」と、自らがクラウドプロバイダーかのように発言する。

 一方で、高いパフォーマンス、セキュリティや規制、コスト効果などを考えれば、オンプレミスやコロケーションの方が現実的なケースもあるとも指摘する。そのため、アプリケーションやデータのライフサイクルにあわせて、クラウドとオンプレミスを相互に行き来できるハイブリッドクラウドこそが企業にとって究極のモデルだと説明する。「クラウドは離島ではいけない。オンプレミスコンピューティングのシームレスな拡張版であるべき」(ジョージェンス氏)。そして、clustered Data ONTAPでこうした拡張を実現し、既存の投資を保護するとアピールした。

ハイブリッドクラウドがエンタープライズにもっとも有力

 また、「統合型システム」というトレンドに関しては、シスコとの強力なアライアンスで提供されるFlexPod事業に継続的に投資するとアピール。EMCによるvblock事業の買収を念頭に、安定したビジネスであることを強調した。

 さらに「フラッシュ」に関しては、オールフラッシュのみならず、さまざまな利用形態をサポートすると説明した。フラッシュのみのソリューションは、多くのワークロードをサポートできないため、「アイドリング部分や小規模な圧縮できるワークロードのみを対象としたニッチなアプリケーションになってしまう」(ジョージェンス氏)。フラッシュが真の意味でメインストリームになるには、データ移行のコンポーネントがなければならない。データの要件に合わせて、HDD、フラッシュ、クラウドでデータを可搬し、それを統合的に管理できることこそ大きな価値。その点、ポイントソリューションの専業ベンダーは生き残れないと指摘した。

CIOがクビになる理由は1つじゃない

 ジョージェンス氏は、こうしたテクノロジーの重要性を認めつつ、重要なのはあくまでビジネスの価値を作り出せるか、否かにかかっていると指摘する。実際、新入社員に対しても、クライアントのビジネスに意味があることを達成できたかを考えるように諭すという。ジョージェンス氏は、「たとえば、何万もの開発者の生産性を上げるために、データのコピーを迅速に作り、テスト環境で使えるようにした。金融機関のような規制の厳しい環境でクラウドが利用できるように機能拡張した」と、実際にビジネスの価値につながった事例を挙げる。

さまざまな業界におよぶ顧客の事例

 一方で、ユーザー企業側でもこうした競争優位性につながるITを求めているという。「CIOはシステムが落ちたらクビになる。でも、今ではもう1つのクビになる理由がある。競合がなにかをやっているのに、それはリスクが高すぎるからできないと言うことだ」(ジョージェンス氏)。ITはそもそも必要なのかという議論をする時代は去り、ITはさまざまなイノベーションをもたらす。しかし、必ずしもリスクがなく、成功するわけではない。ジョージェンス氏は、こうした悩めるCIOたちを助けるべく、クライアントの競争優位性につながる価値を日々意識するよう、エンジニアやパートナーを鼓舞し、自身の講演を締めた。

■関連サイト

カテゴリートップへ

この連載の記事
  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード