1月16日、ネットアップはプライベートイベント「NetApp Innovation 2014 Tokyo」を開催した。「最強クラウドの作り方」をテーマに冠したイベントの基調講演には、CEOのトム・ジョージェンズ氏や日本法人社長の岩上純一氏のほか、アマゾンデータサービスジャパン 技術本部 本部長 玉川憲氏も登壇した。
“エンタープライズデータ管理プロバイダー”を目指す
今年で4回目となるNetApp Innovationは、ネットアップやパートナーによるさまざまな講演や展示が行なわれるプライベートイベント。登録人数で2400名を数え、会場も満員となる盛況だった。基調講演に登壇した米ネットアップ 社長兼CEOのトム・ジョージェンズ氏は、「“Unbound Cloud”ネットアップが目指す、新しいクラウドデータ管理のビジョンとは」と題し、ネットアップの現状とクラウド戦略の概要について説明した。
ジョージェンズ氏は、ストレージOSのシェアやパブリッククラウドや統合インフラ向けの出荷容量実績でナンバーワンになっている点をアピールしつつ、最新の同社の動向として2つのトレンドを紹介した。まずは市場における成長率。専業のストレージベンダーとして、EMCとネットアップがシェアの拡大を続ける一方、HPやデル、日立、オラクルなどの大手ベンダーの成長は鈍化し、そのギャップが大きくなっているという。また、シェアトップであるEMCに関しては、「EMCのシェア増加は買収によるもので、(大型買収が一段落した)最近は成長も横ばいになっている。一方で、ネットアップは買収に頼らず、イノベーションとテクノロジーで成長している。将来性を考えれば、どちらがよいか明らかだ」と述べる。
また、四半期ごとの市場シェアも加速度を増しているという。IDCの市場シェアを引き合いに出したジョージェンス氏は、「世界的な不況や次世代のData ONTAPへの移行を図っていたときにはマイナス成長となっていたが、直近の四半期は大きく成長している」とアピール。この背景になっているのは、競争力の源泉であるストレージOS「clustered Data ONTAP」への移行や、超高速なオールフラッシュアレイ製品の投入、アライアンスやパートナーシップの強化などがある。ジョージェンス氏は、「絶対的に魅力的な差別化要因を持っていなければならない。イノベーションに注力し続けなければならないと常日頃から社員に言っている」と、競争力の源泉であるイノベーションの重要性を語る。
3つのクラウドを統合的に管理するゴール
同社のクラウド戦略は、プライベートクラウドやサービスプロバイダー、クラウド事業者のクラウドを統合し、統一的に管理することだ。ジョージェンス氏は、「クラウドと競合するではなく、クラウドをシームレスに統合する。お客様がビジネスの成果を出すために、最適化されたソリューションを提供する」と述べる。この結果として、Software-Defined Storageを前提にした“エンタープライズデータ管理プロバイダー”になるのが将来的なゴールだという。
続いて登壇したネットアップ 代表取締役社長 岩上純一氏は、調査会社であるIDCジャパンのリサーチを引き合いに、ネットアップの製品がプライベートクラウド構築の要件を満たすという点をアピールした。
プライベートクラウドにおいては、特にセキュリティや信頼性、システム価格、柔軟性、リソース共有などが重視されるが、こうした要件はclustered Data ONTAPが満たしていくという。一方、導入の容易さや運用管理の自働化などの要件は、統合管理ツールである「OnCommand」がカバーできるとのこと。さらにトップテン入りしてきた他社クラウドとの連携や統合管理といった要件も満たすことも可能で、「最強のクラウド構築」が可能になると言う。
岩上氏は、「数年前だったバズワードだったクラウドも、クラウドファーストになりつつある。すでに、ほとんどのお客様はクラウドを使っているのではないか? われわれがこうしたクラウド間のエクスチェンジをやっていく」と語る。実際、国内では垂直統合システム「FlexPod」で高い実績を挙げているほか、19社のサービスプロバイダーとクラウド契約を結んでいるという。
AWS玉川氏が登壇!ネットアップとの連携をアピール
そして、ハイパースケールクラウド事業者として、ネットアップとの提携を進めているのが、クラウドサービスで圧倒的なシェアを誇るAWSだ。岩上氏の紹介で登壇したアマゾンデータサービスジャパン 技術本部 本部長 玉川憲氏は、ガートナーのマジッククアドラントを引き合いに出し、ストレージ部門でパイオニア&リーダーとなるネットアップと、IaaS部門でパイオニア&リーダーとなるAWSが協業するのは、「個人的には自然な流れ」と語った。
玉川氏は、AWSのサービス概要や成長について説明したほか、北京リージョンの開設やVMインポートなど、同社の最新動向も説明した。「お客様のニーズにあわせて30種類以上のサービスを従量課金で、提供している。さらに運用コストを下げることで、お客様に還元する。実際、過去7年間で38回の値下げを実施している」とアピールした。また、日本の大企業が基幹システムをAWSで運用し始めた現状を紹介。セキュリティ、接続性、既存システムの移行という3つの懸念が払拭されたことで、クラウドファーストが現実的な選択肢として浮かび上がってきていると説明した。「日本のお客様は“もったいない文化”があるので、既存のシステムを活かしたいと考えます。ですから、社内とAWSをダイレクトコネクトでつなぎ、更改のタイミングで少しずつ移行する“日本的クラウドファースト”が多いです」(玉川氏)。
こうしたAWSとネットアップとの連携ソリューションが「NetApp Private Storage for AWS」だ。これは顧客のデータセンターにあるFAS/Vシリーズと、AWS認定のコロケーション施設に設置したFAS/VシリーズをSnapMirrorで同期させるというもの。AWS認定のコロケーション施設とAWSは専用線で接続されているため、同期されたデータにAWSのインスタンスからアクセスできる。玉川氏は、「データセンター間でバックアップできるたけではなく、最低限の待機コストで必要なときだけ数分でサーバーを立ち上げることができる。災害対策や開発/テスト利用、ビッグデータ/BI処理が可能になる」と連携をアピールした。
クラウドサービスに最適化されたclustered Data ONTAPの投入で、ますます攻めに転じるネットアップ。際だった製品やサービスの発表はなかったが、クラウドファーストの波に確実に乗っていこうという姿勢を浮き彫りにした基調講演だった。