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オーディオのプロが語るUSB DACとアンプの重要性

小島康×麻倉怜士:PCオーディオ初心者が知っておきたいノウハウを紹介

2013年10月08日 14時32分更新

文● 荒井敏郎、写真/今井宏昭

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10月10日に発売される新書「超PCオーディオ入門」内に掲載予定の、著者であるラックスマン株式会社商品企画室の小島 康氏とオーディオ評論家の麻倉怜士氏との対談を特別に公開!!オーディオだけでなく、映像メディアにも精通しているデジタルメディア評論家の麻倉怜士氏は、アスキー新書にて「高音質保証! 麻倉式PCオーディオ」を執筆するなど、早くからPCオーディオに注目していた方のひとり。PCオーディオの楽しみ方や、音質を向上するためのコツなどを伺います。

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PCオーディオの面白さと奥深さの発見

小島 麻倉さんは、PCオーディオに関する本をかなり早い段階で執筆されていましたが、最初はどのようなきっかけで書かれたのですか?

麻倉 私は基本的にはパソコンで音楽を聴くことは許せない人間でした。パソコンは雑音のかたまりですからね。そんなものがオーディオルームにあるなんて許せないと思っていました。そんなとき、アスキーの創始者でもある西 和彦さんが、「先生の耳を借りたい」とうちにパソコンを持ってやって来たんです。デスクトップのパソコンにD/Aコンバーターを積んでいたと思うんですけど、それがすごくいい音だった。それまでのCDプレーヤーでのオーディオでは到底到達できない音だった。

 僕はそのときに、オーディオの革新というのは従来のオーディオの世界からは生まれないと思ったんです。当時、メディアがレコードからCDになってデジタル化していく流れの中で変化はありましたが、それはオーディオ界の中での変化でした。オーディオ界とはまったく関係なかった西さんが持ってきたパソコンの音を聴いて、外部からの刺激が入ってオーディオは変わるぞ、と思ったんです。

小島 なるほど、そこからPCオーディオに興味を持たれたわけですね。

麻倉 そうです。ネットワークプレーヤーであるLINNのDSの登場も影響しました。うちにはCDプレーヤーのCD12があって、世界で最強だと思っていたんです。そこにDSがやってきて、「ネットワークでつないでハードディスクに保存して……」ってわけのわからないことを説明し始めたんですよね(笑)。ハードディスクからの音なんてろくなもんじゃないと思っていましたが、聴いてみたらすごいじゃないですか!?

 CDというメディアから直接音楽を再生するのと、音楽をリッピングしていったんハードディスクに入れてから再生するのとで比べたら、あとのほうが断然よかったんですよ。パソコンなんてノイズの固まりだと思っていましたが、もうそういう時代じゃないんだと感じましたね。その後、デジタル音をアナログに変換するUSB DACが出始めたころ、音質テストをやることになりました。すると、音質がものすごくいい製品と悪い製品があったんです。製品によってあまりにも開きが大きくて……。これはまじめにPCオーディオに取り組む必要があるなと感じました。

 ただ、もうすでにPCオーディオのマニアのような人たちはネット上にたくさんいて、成果をどんどん上げていました。当然、私はそこでマネはできない。その人たちはITリテラシーがあって最新技術を知っていて、その中でPCオーディオのノウハウを語っていたんです。そこで私は違う道からアプローチしようと思いました。それが音質です。音を語ることでPCオーディオに徹底的に突っ込もうと考えたわけです。

小島 それが、新書「麻倉式PCオーディオ」につながるわけですね。


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麻倉 そうです。PCオーディオまでのオーディオの世界はハードの世界なんです。CDだとCDを再生する機器しかありません。PCオーディオはハードとソフトがあるんですよ。OSや再生用のソフトもあります。各種設定もあります。PCの種類もあります。USB DACも種類があって……。これまでのオーディオのすべての知識があって、さらにITリテラシーが必要です。なので、まずはハードディスクを変えたり、設定を切り替えたりしながら、音質の違いを比べてみようと思いました。

 そしてわかったのは、PCオーディオは入るのは簡単だけど真髄をつかむのはとてつもなく難しいってことでした。PCオーディオはものすごく面白い趣味だと思ったんです。アナログ時代のオーディオは自作することも多かったんですが、デジタルになってからオーディオがブラックボックス化して、出来合のものを買うという流れになってしまっていました。

小島 CD登場以降は特にそうでしたね。

麻倉 そうです。中身に入り込むことが難しかったんですけど、PCオーディオは入れるものです。自分の中でこういう音を目指すという信念があれば、ハード的にもソフト的にもものすごく追求できます。私はよく雑誌にPCオーディオは音がいいと書いてますけど、実際ははじめてみるとものすごく音が悪いんですよ(笑)。ところが変更できる部分を1個1個変えていくと、あるところで急に音がよくなります。そこからのよくなり方が大きいんですよね。だからこれは新しいオーディオ趣味になるなと感じました。入りやすいし、入ってから長く楽しめます。

小島 なるほど。当時といまと変わったところはありますか?

麻倉 大ありです。「麻倉式PCオーディオ」の発売から2年経って、PCオーディオの世界がこんなに変わると思っていなかったですね。オーディオの世界だと2年周期くらいで新製品が出てきて、ラックスマンなどの老舗だと新製品が出るまでに3、4年はかかりますよね。ひとつのものをじっくり作ろう、使おうという文化がありました。それが、IT的な要素が入ってきて、相当流れが速くなりました。いまは、USB DACやネットワークオーディオ、AVアンプなどのIT系オーディオ製品をほとんどのオーディオメーカーが出しています。僕は毎月ビックカメラで講演をしているのですが、そのトレンドを象徴するのが、全店方針としてハイレゾを推奨することになったことですね。これまでPCオーディオはIT系の人が中心だという印象でしたが、大手メーカーなどのメジャーなところが目覚めてきています。

小島 想像より早いですね。

麻倉 映像との絡みが大きいです。映像が4Kになるのに、オーディオどうなんだ? となるわけです。

小島 テレビは地デジ化しましたが、音声は相変わらず圧縮されたAAC形式の音源ですからね。

麻倉 そうです。だからオーディオもハイレゾ化しようという流れになっています。僕が「麻倉式PCオーディオ」を書いたときには、ハイレゾがまだ浸透していませんでした。e-onkyoという配信サイトはありましたが、なかなか伸びなくて、'11年にQUEENのアルバムを配信することで評判になったんですよ。そして、各社のレコード会社が入ってきました。配信側に魅力的なコンテンツが出てきて、PCにてマスターの音が手に入れられえるようになったというのが大きいですね。これからはもっと変わっていくと思います。ハイレゾを聴いてしまうと、CDには戻れませんからね。どこでもハイレゾな世界になるかもしれません。その中で、室内で聴くか外で聴くか、いろんなハイレゾスタイルが出てくると思います。


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ハイレゾをスピーカーで聴くことの必要性

小島 そうなるともうひとつの側面を伺いたいのですが、PCオーディオの時代になってヘッドホンやイヤホンを試聴して買い替えるという現象が一気に広まっています。その中で、いい音という感覚をしっかりと持っている若い人たちが急に増えてきたような気がするんです。麻倉さんは、ヘッドホンユーザーとPCオーディオの関係というのは、どのように捉えられているのでしょうか?

麻倉 ヘッドホンのブームは、ヘッドホンとは直接関係ない世界からきて途中から合体したような気がしますね。ヘッドホンはウォークマン以降活用されていますが、いまはiPodやiPhoneなどの音楽再生機で使われています。そこで個性を出そうという人もいますよね。ただそこに入っている音は、すごく圧縮されています。一方、PCオーディオはパソコンを音源にしていましたが、そこにヘッドホンアンプが入ってきました。ヘッドホンアンプ付きのUSBなのか、USB付きのヘッドホンアンプなのかはわかりませんが、PCオーディオにヘッドホンユーザーが入ってきたわけです。その一方で、音源のクオリティーにこだわっていた人がヘッドホンアンプの登場で、既存のヘッドホンユーザーに合体していったというか……。ヘッドホンで高音質で聴くユーザーが屋外だけではなくて屋内にも広がったわけです。このようにヘッドホンユーザーが新しい世界を開拓していくようなかたちが見られるのも、PCオーディオになってからだと思います。PCオーディオ以前だったら、圧縮をやめてロスレスでリッピングしましょうくらいしか言えなかったのですが、いまはハイレゾ配信で得たファイルをヘッドホンでダイレクトに聴くことも可能になりました。

 ただ、ヘッドホンユーザーはヘッドホンだけで止まってしまうわけです。ヘッドホンは音楽制作者がその場で聴くものとして作られました。正しくは音楽は空間で聴くものです。電子音楽を除くと、楽器があって空間波があってその場で私たちは音を感じるんです。ところがヘッドホンユーザーはそこに壁があって、ヘッドホンセントリックになってしまうこともある。そういう人たちに空間で音楽を、スピーカーで聴く楽しみを、提案するためにハイレゾは重要な要素のひとつになるでしょう。従来、2チャンネルの音をいい音で聴こうと思ったら、たくさんお金を投資しなくちゃいけない。若い人はなかなか高くて良いものは買えませんから、はじめから縁のない世界になっちゃうわけです。それがハイレゾ再生用の機器はバラエティーに富んだものも出てきていますし、若い人たちがハイレゾを楽しめるような環境がだんだん整備されてきています。ぜひみなさんに言いたいのは、ハイレゾは空間で聴くと素晴らしいということです。まずはヘッドホンで楽しむのもいいですが、ぜひ空間で楽しむ方向にいってほしいと思っています。

小島 体で聴くハイレゾと耳だけで聴くハイレゾは違うということでしょう。

麻倉 はい。人間の耳は2万ヘルツまでしか聴き取れないとされていて、CDの音源は2万ヘルツ以上の音をカットしています。実はそれ以上の音は、人間は肌で感じているんです。それを頭の中で耳から聴いた音と合体させているわけです。最初は耳で聴くハイレゾでかまわないと思うんですけど、肌で感じる空間で聴いてみると、絶対に違う体験が得られますね。


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コストパフォーマンスに現れない音の情緒

小島 本書では、ひとつキーワードとして3万円という金額を挙げているのですが、最近の新しいユーザーにとって、コストパフォーマンスはとても重要な要素になっているんです。そういう中で、例えばUSB DACではPC系のメーカーやプロ用機器のメーカーなど、違う畑のメーカーが同じ市場に向けて製品を出しています。そこでは、おのずと価格の設定が違うんですよね。そこに込められた技術や思想は異なるのですが、お客さんにとっては同じ種類の製品ですので、機器選びを難しくさせている理由のひとつになっています。そうしたコストパフォーマンスの違いについてはどのように思われますか?

麻倉 オーディオの場合は、合理的に割り切れるコストパフォーマンスと非合理なものと2つあります。IT系は合理的なんですよ。例えばCPUは何ヘルツ以上が速いとか、ハードディスクの容量は数値が大きいほど多いとか、コストパフォーマンスもわかりやすいですね。それがITのリテラシーの中で基本としてあるので、より良いパフォーマンスだと高くなり、同じ価格だったらパフォーマンスがいいほうがいいとなります。PCオーディオの場合は、このITの中に情緒系の概念が入ってきます。その概念の半分が当てはまって、半分が当てはまらないわけです。

 最大の問題点は、音質の半分はテクノロジーなのですが、あとの半分は使いこなしやこだわりや設計力によるということです。そこが難しいというか面白いところで、製品の価格が高くてもオーディオメーカーが入り込める余地があるところだと思いますね。特にIT系のメーカーは中国などから部品を集めて簡単に製品を作ってしまうところもあり、そうした製品の音とラックスマンの音などは100倍は違うなと思います。音にどのくらいの感動性を持たせられるというのがいちばん大事なことです。少し前、ある機会に15機種くらいDACを聴き比べましたが、いい音は2機種くらいしかありませんでした。ほとんどのメーカーが、回路はこんないいもの使ってますよといったスペック的な部分を言うのですが、音質は数値ではまったく表せません。逆にいうと安い中でいいものもあったりして、そういうものをうまく見つけていくのも、3万円以下で楽しめるPCオーディオのチャレンジだと思います。

小島 そうしたコストパフォーマンスとは違うところでメーカーは優位性を見出していけますが、、それをどう伝えるのか難しいですね。これまでは雑誌を主体とした文字情報で伝えていましたが、それが少しずつ変わってきて、いまではネットコミュニティーなどのクチコミが強くてなってきました。ただ、そこで飛び交うボキャブラリーは、まだそれほど豊富ではありません。そうしたやり取りが中心になることで、正しく音質的な価値は伝わっていくでしょうか?


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麻倉 いま、ラックスマンはどうやって製品のよさを広めているんですか?

小島 相変わらず昔ながらの方法ですが、地道な試聴イベントが中心ですね。

麻倉 試聴は重要だと思いますね。PCオーディオの知識はネットを見ればわかりますが、実際の音は試聴しなくては絶対にわからない。問題は既存ジャーナリズムが、従来のお客さんにしか対応していないということです。いまは興味はあるんだけど専門誌は読まない、という人が多いんです。マニア向けの媒体ではカバー仕切れません。ある年齢層以降は「特選街」などの雑誌がけん引していますが、若い人に対してどうするかが問題ですよね。若い人も情報に飢えていると思うんです。いいものを買いたいとは思っていても、それは雑誌やネットに答えが出ていない。それを判断させるには試聴会しかないんですよね。ヘッドホンという飛び道具があるわけですから、それで聴いてもらうチャンスを作るのが大事だと思います。それは専門店のイベントではなくて、フジロックとか音楽関係のイベントなど、若い人が行っている場所で体験させたいですね。


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オーディオ的にわかりやすい基準となる女性ボーカル

小島 最近、新しいお客さんから聞いたのは「自分には音の違いがわからない」という言葉でした。そのうえで技術的な話をしても「自分には必要ないのでは」となってしまいます。やはり生演奏も含めていろいろな音の経験がないことは、趣味のオーディオ的にデメリットになりますか?

麻倉 結局、メディアを通して聴く音楽というのは、①元の演奏があって、②メディアを通って、③再生するという3段階を経ていますよね。元の音に比べると相当情報量が減っているわけです。私の経験からすると、いちばん音楽の魂に触れられるのは生演奏ですね。会場の音響とかオーケストラの配列のステレオ効果とかハーモニーとか……いろんなものを感じられるんです。音楽に触れようと思ったら、生演奏を聴かなければダメです。クラシックだけではなくて、ジャズもポップも生演奏から入ったほうがいいです。リファレンスを再生装置ではなくて、生の演奏に置くわけです。そこから、AというスピーカーはどうだろうとかBというヘッドホンはどうだろうと比べるわけです。

 ヘッドホンに対して比較をする場合、AとBという横の比較ではなくて、生の音に対してそれぞれを比較したほうがはるかにいいですね。そういう尺度があれば、よりわかりやすくなります。生演奏における、同じ空気の中で自分がいて、その中で音楽を一緒に聴いているんだという感覚を体験しましょう。音楽的な素養が、磨かれます。

小島 耳を物理的なセンサーにするわけではなくて、自分の脳とか経験をブレンドして音を聴いていくわけですね。

麻倉 そうですね。音楽は皮膚からも聴くものです。生の演奏はすごく皮膚から感じていると思うんですよ。それが脳への刺激になります。それを基準に機器を判断するようにすれば、知らず知らずのうちにオーディオ的な判断能力がついてくると思います。


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小島 先日有楽町のジャズ喫茶に行きましたら、お店の常連と思われるような方ほど、目をつぶって演奏を聴いていました。やはり年配の方ほど、ご自分の過去の音の記憶を重ねて聴いていらっしゃるのかな? なんてことを思ったのです……。

麻倉 ジャズ喫茶には独特の伝統があります。ジャズ喫茶はしゃべったら怒られるようなところだったので、目をつぶって聴くというのはその影響かもしれないですね(笑)。音楽体験といのはビジュアル体験も含まれます。自分の中に入ってくる情報を頭で感じるわけですから、せっかくの生演奏は見たほうがいいですよね。

 最近面白い実験をしまして、4Kと2Kの映像があって、曲はまったく同じ松田聖子さんの「赤いスイートピー」を流したんですけど、全員が4Kのほうがいい音だと判断したんです。やっぱり視覚で情報量が増えると、聴いている音のほうも錯覚かもしれませんがブラッシュアップされるんですよね。逆もあって、MP3音源とハイレゾ音源を流して同じ映像を見せると、ハイレゾのほうがきれいだと感じるようです。聴覚と視覚は相互作用をしているんですよ。

小島 耳だけではなくて、いろんなものに影響されて音の良し悪しは決まるわけですね。オーディオでは女性ボーカルがひとつの基準になると思います。麻倉先生の話には、松田聖子さんがよく出てきますが、女性ボーカルのよさというのはどこにあるのでしょうか?

麻倉 聖子ちゃんは色物なんですけど、女性ボーカルは音質を判断しやすいんですよね。基本的にアコースティックな音じゃないと評価が難しいんです。ポップスはヘッドホンや小さいスピーカーで聴くことを意識してマスタリングされています。マスタリングというかイコライジングになるんですけど、低音を強調したり響きを入れたり……。それは目的を持ってお化粧したものですね。オーディオ機器というのはそれをそのまま再生してしまいますので、それは素顔ではなくお化粧した顔を見ているようなものです。だから生演奏を基準に考えると、アコースティックな音を加工しないジャンルの音源、空間で録ったクラシックやジャズが良いのです。ボーカルが望ましいのは、確実に音像定位がわかるからですね。オーケストラはセンターがわかりにくい。人の声は音楽再生において極めて重要です。音楽の歴史は人の声からはじまっていますから、声をちゃんと再生できることがオーディオ機器には必要なんです。

 そうやって考えると、聴いている帯域にいちばん合っているのは地声で歌うボーカル系となります。それがジャズのボーカルで、女性のほうが帯域が高いので音のチェックに向いています。私が普段からよく聴いているのはヘイリー・ロレンです。音源の録音がほんとによくて編成も少なくて、感情と節回しが絶妙なんですよね。あとはダイアナ・パントンとエネミー・クレア・バーロウ。この3人はマストアイテムです。オーディオをチェックするにはナチュラルな声でジャズ系がお勧めですが、現代のオーディオ機器で聴くわけですから、最先端のシンガーで最新の録音の音があるといいですね。


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ひとつひとつステップアップすることが大切

小島 本書は価格的にもそれほど高いものを買わずに、手軽にPCオーディオを始めていただこうというコンセプトなのですが、麻倉さんがこれまでチャレンジされてきた中で、新しくはじめる人にここがキモだよというわかりやすいものを教えてください。

麻倉 いちばん大事な機器はUSB DACですね。音を作り出すメインの部分なので、ここは性能だけではなくて、自分にとっていい音が出るものを選ばなくちゃいけません。それは試聴しないとわからないので、ぜひチャレンジしてください。次はUSBケーブルですね。きちんとノイズを対策したものとしていないものでは、ひと桁以上の音の違いが出ますから、まずはこの2つをきちっと守っていけばいいですね。

 聴いているとグレードアップの欲求が出て来ます。そこで効いてくるのは、音源の下に敷くボードなどです。それは高いものを買う必要はなくて、東急ハンズなどでいろいろ買ってきて試してみて自分で聴いてみるといいです。結局、PCはまったくもってオーディオのことを考えて作られていませんから、振動には弱いですし、ノイズも出します。それを軽減する働きをするんです。順番に少しずつ、いっぺんにいい音を目指すのではなくて、ステップアップしていい音を求めていくのがいいですよ。

小島 とにかく、いじりがいがありますよね。

麻倉 そうですね。絶対にいじっただけ効果が出ます。

小島 CDが登場してからというもの、しばらくできなかったことですからね。

麻倉 本体を抜本的に変えたり再生アプリを変えたりとか、いまはいろんなことができます。知識を身に付けながら、AよりB、BよりCという感じでひとつひとつステップアップしていくのがいいと思います。違いは小さいんだけど、重ねていくと結構大きくなるのがPCオーディオの醍醐味です。それはいままでのオーディオにはなかった新しい切り口で、追求することで世界がどんどん広がっていきます。PCオーディオは素晴らしい趣味になります。

小島 康
DACやアンプなど、オーディオ機器を製造/販売する老舗メーカーラックスマン株式会社商品企画室。製品サポートなども担当しており、技術的な面にも精通いしている。クラシックやジャズはもちろん、J-POPやアニソンまで幅広いジャンルで音楽を楽しむ

麻倉怜士
1973年横浜市立大学卒業後、日本経済新聞社を経てプレジデント社に入社。「プレジデント」副編集長、「ノートブックパソコン研究」編集長を務める。’91年よりオーディオ・ビジュアルおよびデジタル・メディア評論家として独立。現、津田塾大学講師(音楽理論)

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DACとアンプで音質激変!! 3万円からスタートできる 超PCオーディオ入門 (アスキー新書)

【書籍紹介】
ラックスマンの小島 康氏は、Twitterなどのソーシャルで告知を展開したり雑誌/書籍などに広く顔を出したりするなど、老舗メーカーにいながらアクティブに活動している人物だ。そんな小島氏が執筆したPCオーディオへの入門書がアスキー新書から発売される。PCオーディオを始めたいと思っている人はもちろん、PCオーディオのコツを知りたい、PCオーディオをもっと楽しみたい、と思っている人も必見。音質を追求するためのノウハウが、192ページの中にギュッと詰め込まれている

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