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第9回 特命!! アスキービジトク調査班

お金を借りる「コツ」を資金調達コーディネーターに覆面調査

カリーさん(覆面ライター) 編集●岸田元

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せっかく仕事が順調にいっているのに、入金までに運転資金が尽きてしまう「黒字倒産」。こんなことにならないよう、資金をしっかり準備することが大切です

 オイーッス! iPhone大好き覆面おじさんこと、カリーでございます。みなさんiPhone 6/6 Plusは手にされました? 大画面のiPhone 6 Plusは……って今回はスマホではなく、ビジトク調査班でしたね(スイマセン)。

 第7回のテーマは「融資」。ビジネスが上手いこと回ってきたところで誰しも考えるのが事業拡大や法人化ですが、最新の設備やいい人材を確保するためには何かとお金がかかるものです。「大もうけできそうなアイデアがあるのに資金が……」というときに、お金を借りるのも選択肢としてアリでしょう。

 ということで、わがビジトク調査班のアシスタントである声優の有野いく(いくちょん)さん、担当の編集Kさんと一緒に、資金調達コーディネーターの上野光夫さんからお金を借りるコツを根掘り葉掘り聞いちゃいました!


自己資金だけで開業したらダメなの?

資金調達コーディネーターの上野光夫さん。日本政策金融公庫に勤務し、中小企業への融資一筋26年間。出会った中小企業経営者は30,000人超。2011年4月に48歳で安定した職を捨てて経営コンサルタントとして独立開業。独立後は起業支援・資金調達コンサルティング・事業再生などの活動を精力的に行っている

編集K 今回お招きしたのは、資金調達コーディネーターの上野さんです。

上野 よろしくお願いします。

カリー・いくちょん よろしくお願いします!

カリー この連載の第1回でもいってたように、カリーさんもいつか会社を作ってみたいわけです。でもぶっちゃけライターとかだと……。

編集K 儲からないから手持ちがない?

カリー いやいやいや。爪に火を灯しまくる勢いでためた貯金があるので、それを元手に会社を作って回していけば借りなくても済むのかなっていう。

編集K 「なんぼでももってこいやー!!」とか、適当なことをいうかと思ったんですが、意外とお金に関してだけは手堅いんですね。

カリー ええー、ひどい(笑)

編集K 原稿の締め切りはルーズなのに。

いくちょん ですね。

カリー いくちょんまで! カレーと一緒で原稿は一晩寝かせた方がウマくなるんです。寝かせてただけなんです! ……いやぶっちゃけ飲食業とか製造業なら開業時に建物の改装費とか機材を買うっていうのはわかるんです。でも、ライターだとパソコンとかカメラの数十万レベルで、一度にうん百万も資金が必要になるってケースがそんなにないかなって。

上野 自己資金だけで起業する人も多いですね。今は起業にそんなにお金がかからないし、やはり借金は怖いというイメージがあるので。でも私としては、融資を受けやすい起業前にできるだけ申し込んだほうがいいですよ、とアドバイスしています。

カリー えっ、起業したあとのほうが借りにくいんですか?

上野 7、8割方の企業って、起業してから半年や1年間ぐらいは黒字が出ないんです。その状態で「融資をお願いします」って持っていってもなかなか通らないわけです。

編集K 確かにそうですね。

カリー 借りたお金を資本金にするわけじゃないですよね?

上野 融資を受けたお金は普通は株式会社の資本金にはできないんです。でも運転資金としては使えます。

カリー あっ、資本金は最後の手段としてとっておいて、最初の半年とか1年間は借りたお金でビジネスを回していくってやり方もあるんですね。

上野 そういうメリットがあるわけです。やっぱり、手元のキャッシュがなくなってくると焦る人もいるじゃないですか。そうすると事業に打ち込めないわけですよ。その状態が一番よくない。

カリー・いくちょん・編集K 確かに!

上野 借金によって「返せなくなったらどうしよう……」という不安も生まれるんですが、それよりもキャッシュが潤沢にある安心感の方が大切。もちろん借り過ぎない前提です。あとは、事業が将来的に大きくなってくると、必ず融資って必要になってくるわけですよ。そのときにお金を借りた経験が生きてきます。

いくちょん 一回借りてきちんと返済すると、「この人はきちんと返す人だな」って履歴が残って信用になるみたいな話もきいたことがあります。

上野 それもあります。期日通りにちゃんと返すという実績を作ると、融資いかがですかって勧誘が来ます。

カリー (笑)

上野 基本的に金融機関、銀行とかは一見さんお断りで、誰かから紹介してもらうのが手っ取り早い。そこで一度借りた実績があればお客さんですし。

カリー 紹介のツテがない場合ってどうすればいいんですか?

上野 一見さんとしてお願いしますって、政府系の金融機関にいくとある程度対応してくれます。例えば、カリーさんが会社をつくられて、お客さんからお金が入ってくるのと、給料を払うタイミングのどっちが早いかっていう。

カリー あー!! 出版業界……だけじゃないかもしれませんが、原稿を書いてから入金まで結構タイムラグがあります。

上野 怖いのは、売り上げが伸びれば伸びるほど手持ちのお金がなくなってしまって「黒字倒産」してしまうことですね。融資を受けてプールしておくと、そのラグをカバーできます。その間に営業で攻めて、バンバン仕事をとって、利益を出していくというのが非常にいいと思います。100万円や200万円の小額でも申し込めますので。

カリー 先を見越してやっておく感じなんですね。すごく勉強になります!!

とある編プロの融資事例

 この取材後に、編集Kの知人で、多いときでも社員数名というかぎりなく個人事業主に近い零細編集プロダクションの社長が、「国民生活金融公庫(日本政策金融公庫の旧名)」から融資を受けたことがあると言っていたのを思い出して、話を聞いてみました。

 初めて融資を受けたのは、今から十数年前の起業2年目の頃。当時は業績が絶好調で資金繰りにはまったく困っていなかったが、顧問税理士に「借りといて大損するもんでもないし、万が一ということもあるので」とアドバイスされ申し込んだという。審査はあっさり通り、400万円を運転資金として調達することに成功。とくに使い道があるわけでもなく、口座に入れっぱなしのまま2年間で返済し終えた。

「利息だけ考えると損だと思ったけど、口座に現金があるのは安心感があった」。その後も数回の融資の誘いを受け、使い道もないまま借りたものを返すだけの状態が続いた。ところが数年前、業績が大きく悪化し、大幅な赤字に転落。会社をたたむか真剣に悩んだときに「売上がすごく落ちてたからダメかと思ったけど」と自ら融資を申し込んだところ、1000万円の融資を受けることができたという。

「遅延もなく完済してたからかな? とにかくすごく助かった」。その後、会社の経営を大きく見直し、返済額を少なくしてもらいながらコツコツ返して「来年頭にはようやく完済だよ」。ホッと一息つけるということで、何より、何よりです。ほんの一例ではありますが、「切り札」的に融資枠を持っておく、という意味はあるのかもしれません。



(次ページ、「計画的に転職してからの独立が増えている」に続く)



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