初の14nmプロセスとなる
Broadwell-Yこと「Core M」
ここまでが、前回のアップデートから現在までの大雑把な変遷である。では、ここからは今後のロードマップについて説明したい。
まずはBroadwellである。連載267回で書いたように、インテルは8月8日に突然14nmプロセスと、これを使ったBroadwell-Yの詳細を公開した。ということで今回はこのBroadwell-Yの話だ。まず、Broadwell世代は大別して6種類のコアが存在する(ことになっている)。
Broadwell-Y | モバイル向けのSoCパッケージ。消費電力は5W未満 |
---|---|
Broadwell-U | やはりモバイル向けのSoCパッケージ。消費電力は15/28W |
Broadwell-H | メインストリーム向け。TDPは37/47W |
Broadwell-K | デスクトップ向けのハイパフォーマンス |
Broadwell-EP | 2Pサーバー以下向け。TDPは140W以上(160Wという説あり) |
Broadwell-EX | 4P以上のサーバー向け |
今回インテルが発表したのはこの一番上、タブレットあるいは一部の2-in-1タイプのノートに利用されるBroadwell-Yに関する詳細である。Broadwell-YはCore Mというブランド名で発売されることになったが、おそらくはBroadwell-Uや、場合によってはBroadwell-Hの一部もCore Mブランドを利用するかもしれない。
この構図は、Pentium 4/Pentium Mの時によく似ている。つまり(一部デスクトップ向けへの転用の可能性はあるが)基本的にデスクトップ向けとモバイル向けが別の製品ラインになるというわけだ。結果、Core Mはモバイル向けに特化した形の機能強化がなされている。
下の画像がBroadwell-Yで実現されたプロセスの特徴であるが、実はこれらの数字はいずれもSoC向けプロセスであるP1272の特徴であって、デスクトップ向けのP1273がこうした特長をどこまで継承できるかは現状不明である。
P1272は、下の図で示すと“Mobile Always-On Circuits”や“Mobile Computing”に位置するので、速度向上はほどほどにしてリーク削減に振ったプロセスである。一方、高性能向けプロセスになる予定のP1273は、Server ComputingやClient Computing向けのため、こちらはリークが22nm世代と比べてほとんど減らない可能性もある。
とはいえ、ロジック密度と配線密度が向上した結果、ダイとパッケージは大幅に縮小しており、さらに給電効率を引き上げるためオンダイのFIVR(Fully Integrated Voltage Regulator:完全統合電圧レギュレーター)に新しく3DL(3次元インダクター)を組み合わせるなど新しい取り組みをしている。
ただ、5W未満の消費電力だからこれで持つという話でもあって、これをそのままデスクトップ向け製品に持ってこれるわけではない。たとえば5WであればCPUダイの真下にインダクターを実装した基板をぶら下げるように実装しても高さが収まるかもしれないが、80Wで同じことをしようとすると、まず面積がCPUのダイより大きくなりかねない。
これを防ぐために高さ方向にインダクターを重ねると、今度は3DL部分の厚みが基板を貫通しかねない。右上の図をよく見ていただくとわかるとおり、Broadwell-Yではマザーボードに穴を開け、そこに3DL PCBの部分が収まる形になるため、LGA1150ソケットを使うデスクトップ向けで同じことをするのは不可能である。
では多少なりともデスクトップ向けと共通する特徴があるかというと、IPC(Instructions per cycle)の性能改善がある。スケジューラーのバッファ改良や、一部の浮動小数点演算性能の改善以外に、TLB(Translation Lookaside Buffer)の大容量化や1GB Page向けTLBの追加など、64bit環境で役に立つ項目、あるいは仮想化環境での高速化などが追加されている。
ただこれらの特徴は、モバイルやデスクトップではあまり関係ない。なぜなら、普通のユーザーは1GB Pageや仮想化環境は使わないからだ。主にサーバー向けの拡張になるため、果たしてベンチマークなどを実行したときに、どこまでこれが数字として出てくるかはやや微妙なところだ。むしろグラフィックスの性能改善や、4K対応の方がユーザーメリットとしては見えやすいだろう。
※お詫びと訂正:IPCの説明に誤りがありました。正しいものに訂正しお詫びします。
→次のページヘ続く (Broadwellの発売はいつ?)
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