日本電気は、非食用原料のセルロースを用いてバイオプラスチックを製造する際に使うエネルギーを従来の1/10にする新たな技術を開発した。
プラスチックのほとんどは石油を元にして作られているが、石油生成物からプラスチックを製造する際のエネルギー消費も多く、また石油消費の低減に伴い供給される材料も減ることからバイオプラスチックに期待が寄せられている。しかし、現在の植物由来バイオプラスチックの多くはサトウキビやトウモロコシなどを発酵させたアルコールなどの炭化水素化合物を重合して作られており、食料となる作物や耕地の転用という問題のほか、発酵・精製・高温高圧による化学反応という製造工程のコスト、排出されるCO2も多いという問題がある。
NECの研究は、安定供給が可能なセルロースなどの非食用植物資源由来の多糖類を利用してCO2排出量の削減を実現するバイオプラスチックを開発する独立行政法人科学技術振興機構(JST)の研究開発の一環として行われた。
セルロースを元にしたバイオプラスチック製造は、これまでセルロースの長鎖分子を溶媒に均一に溶け込ませて反応、別の溶媒によって溶かして抽出するというプロセスを用いていたが、新たに開発された「2段階不均一系合成プロセス」は、ゲル状に有機溶媒で膨らませた状態(不均一系)にした上で、別の溶媒に溶かして2段階に結合させて樹脂を合成する。ほぼ常圧・中温(100℃以下)での反応を達成でき、従来の均一系プロセスで必須であった生成樹脂を分離するための溶媒も不要になるため、溶媒量は従来の約90%減となる。これらにより、従来に比べて約1/10の製造エネルギー(CO2排出量)でバイオプラスチックを製造できるという。
今回開発された技術によって作られた「セルロース系・高機能バイオプラスチック」(カルダノール付加セルロース系樹脂)は、熱可塑性や耐水性といった特性を持ち、植物成分主体のポリエステル系樹脂やガラス繊維などの繊維を添加剤として利用することで耐熱性や強度を高め、電子機器などの耐久製品に利用できる実用レベルまで向上できたという。
現在の製造規模は実験室レベルながら、段階的に規模を拡大しながら量産技術を完成し、2016年度中の量産開始を目指すという。本格的な量産時には、ポリエチレンテレフタレート(PET:高圧+真空下・200℃以上で製造)などの石油原料系高機能プラスチックに対して製造時のエネルギー消費を約50%にすることを目標とし、電子機器だけでなく他の耐久製品などへの展開も目指すという。