9月4日、NECはデータセンターなどに設置されるラックに搭載されたICT機器の排熱を効率よく取り除く「多段式高効率冷却技術」を開発した。本技術をデータセンターに適用することで、データセンターの空調電力を最大50%削減することが可能となるという。
多段式高効率冷却技術は、ICT機器内に搭載して効率的な冷却を実現する相変化冷却技術を、複数のICT機器を搭載するラックに応用したもの。相変化冷却は、液体から気体、または気体から液体に変化する、相変化に伴い、大きな熱の移動が生じる現象を利用した技術。「アルコールで腕を消毒すると「ひやり」とするのも、アルコールの気化によって、皮膚が熱を奪われたことによる」と説明されており、エネルギー変化量が大きく高効率な冷却が可能になるという。
データセンターの冷却技術としては、吸排気を分離する「アイルキャップ」やラックの隣に空調機を置く「局所冷却」などがあるが、今回NECが開発したのはラックの排気を冷媒等で冷却する「ラック冷却」の方法。新技術により、機器から排出される熱を拡散する前に回収し、直接屋外へ輸送できる。そのため、そもそも空調機で冷却すべき排気が削減され、サーバールーム内の空調負荷を大幅に削減することが可能だという。
今回はサーバーラックの背面に配置した受熱部を多段化することにより、ラックに設置されたそれぞれの機器の排熱量に応じた冷却を実現。独自の流路設計により、自然循環のみで各段への適正な冷媒供給を実現し、低コストと高信頼性を確保した。
ラックあたり12kWの消費電力の場合、送風電力と冷凍機電力を合計した空調電力を最大50%削減することが可能。NECの施設で実験した結果、10台のサーバーを搭載したラック背面から発せられる熱量のうち、約50%を屋外へ熱輸送できることを実証したという。
