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マイクロソフト・トゥディ 第64回

Surface RT+クラウドによる高齢者健康管理システムの実証実験

2013年09月26日 11時00分更新

文● 大河原克行

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「Surface RT」「Dynamics CRM Online」を利用した
高齢者健康管理システム「E-KURASHI」の実証実験

 日本マイクロソフトのタブレット「Surface RT」と、クラウド型データベース「Dynamics CRM Online」を利用して、高齢者の自己健康管理や孤立防止を目的にしたシステム運用の実証実験が、札幌市で開始される。

 「E-KURASHI」(イークラシ)と呼ばれるこのシステムは、日本マイクロソフトのほか、ベースとなるシステムを開発した公立大学法人札幌市立大学、パナソニックグループのAVCテクノロジー、札幌市を拠点とするコーポレーション・ミヤの4社が共同で取り組んでいる高齢者健康管理システムで、公益財団法人北海道科学技術総合振興センター(ノーステック財団)の平成25年度イノベーション創出研究支援事業の補助を得て実施される。4社では、2015年度の実用化を目指している。

札幌市役所で行なわれた記者会見の様子

Surface RTを利用して実証実験が行なわれる

健康時から、ICTを用いた健康管理システムの活用を日常生活の一部に

 「E-KURASHI」は、札幌市立大学を中心とする異分野融合チーム(看護とデザイン)が、2009年〜2012年に開発した遠隔看護システム「E-KANGO」(イーカンゴ)を基盤に開発したものだ。E-KANGOは、特定の疾患にかたよらない幅広い療養者が利用可能なうえ、療養者自身が簡単に操作でき、訪問看護師の活動を補完する遠隔介護システムとして開発。現在でも、宗谷地方にある北海道枝幸町で、2年後の実用化を目指した実験が行なわれている。

 札幌市立大学では、「大都市の集合住宅では、孤立死、社会的孤立が報告されている。孤立している人たちの健康状態は相対的に良くなく、健康課題の発見遅延は重要な問題となっている。E-KANGOの実績から、健康時からICTを用いた健康管理システムの活用を日常生活の一部としていることが、孤立死や社会的孤立を防ぐ意味でも重要であることが分かった。E-KURASHIでは、E-KANGOでの経験をもとに、高齢者でも分かりやすいタブレットによる操作に加え、セキュリティ面での強化を図り、遠隔看護を補完する」という。

 Surface RTを利用することで、高齢者が自らタッチ操作によって、体温、体重、服薬状況などの健康情報を入力。入力したデータは、Dynamics CRM Onlineに蓄積し、これらのデータを医療スタッフが定期的にチェックすることで、ユーザーの健康状態を把握し、病気の早期発見や健康維持につなげられるとした。また、Surface RTを活用した電話会議やビデオ会議も可能で、遠隔からの健康相談も行なえる。療養者と「つながる安心」を実現できるとしている。

E-KURASHIの画面。タッチ操作に適したインタフェースを採用している

E-KURASHIのトップページに表示されるアイコン

2013年11月から、札幌市・JR琴似駅を中心に開始

 2013年11月から、札幌市琴似のJR琴似駅を中心としたマンション住民を対象に、約20台のSurface RTを貸し出し、「E-KURASHI」を試用する環境を提供。札幌市立大学が、研究総括および学術的見地からの分析を担う。

 琴似駅は札幌駅から2駅に位置し、1991年から再開発された地域で、約1200戸に、約2500人が居住する。駅とマンション、商業施設などが空中歩廊で直結しているため、雪や雨の心配がなく、外出や買い物ができる利便性から、高齢者が数多く居住するという特徴がある。琴似に本社を持つコーポレーション・ミヤが、実験参加者との調整および実験場の提供を行なうことになり、「高齢者の健康に対する不安が軽減される付加価値のある街づくりを目指したい」(コーポレーション・ミヤ)としている。

 また、システム開発および実証実験時の技術サポートは、琴似に札幌技術研究所を置いているAVCテクノロジーが担当。「実証研究を通じて、琴似地区をはじめとして北海道への地域貢献を図りたい」としている。

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