マイクロソフトが、フィンランド携帯電話大手のノキアを買収すると発表した。
買収金額は54億4000万ユーロ(約7000億円)。約3万2000人の社員が対象になるという。さらに、マイクロソフトは、ノキアが持つ特許および技術を21億7000万ドルで取得するという。
減少するシェアにどこで歯止めをかけられるか—ノキア
ノキアは、携帯電話ではトップシェアを獲得したメーカーだが、スマートフォンでの展開が遅れ、2012年には韓国サムスンに首位の座を譲り、現在、2位に留まっている。携帯電話市場を席巻した独自のSymbian OSにこだわり続けことが後れにつながったとの見方が支配的だ。だが、それでも年間の出荷台数は3億台規模にも達しており、市場への影響力は依然として大きい。日本の携帯電話市場全体が年間4000万台であることと比較すると、その7倍規模もの年間出荷台数となっているのだ。
スマートフォンへと市場がシフトする中で、シェア減少に対してどこで歯止めをかけられるかがポイントだといえる。
ハードとOSをひとつのメーカーで有する体制—マイクロソフト
一方でマイクロソフトは、「デバイス&サービスカンパニー」への転換を掲げ、自社ブランドのタブレット端末「Surface」を発売しているという状況だ。今回のノキア買収により、自社ブランドのスマートフォンを発売できる体制が整い、デバイス&サービスカンパニーへの道がさらに一歩進むことになる。
これは、Androidの開発元であるグーグルが、携帯電話メーカーのモトローラを買収したことと構図が重なる。これにより、スマホの各陣営は、サムスンのTaizenを含めて、ハードウェアとOSの両方をひとつのメーカーで有する体制となる。
隠れた注目点は、ノキアCEO エロップ氏の去就
マイクロソフト次期CEOの最有力候補?
そして、今回の買収において隠れた注目点が、ノキアCEOであるスティーヴン・エロップ(Stephen Elop)氏の去就だ。といっても、元々マイクロソフト出身のエロップ氏だけに、そのままマイクロソフトで、スマートフォン事業の陣頭指揮を執ることに異論はない。
エロップ氏は、2010年9月にノキアのCEOに就任。2011年2月には、ノキアのスマートフォンのOSを、Windows Phoneに集中させる戦略的提携を発表している。マイクロソフトとは緊密な関係を取りながら、ノキアの経営回復に取り組んできた。マイクロソフトとノキアの文化を知るエロップ氏は、「デバイス&サービスカンパニー」を目指すマイクロソフトにとって、願ったり叶ったりの人材だ。
しかし、注目点はそれだけではない。マイクロソフト次期CEOの最有力候補として、エロップ氏の名前が急浮上してきたのだ。マイクロソフトのスティーブ・バルマーCEOは、今後1年以内にCEOを辞職することを発表。業界内では、次期CEOの選出が注目を集めている。今後は、エロップ氏が、マイクロソフトのエグゼクティブバイスプレジデントとして、経営にどう携わるのかといった観点とともに、次期CEOを視野に入れた動きにも気になるところだ。
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