一方、露地の「はまゆう農園」には、フィールドサーバーや圃場センサーが用意されており、温湿度や日射量はもちろん、降雨量や土壌成分なども計測できる。
富士通の得意分野ということで、通信に関しては注力しており、センサーからの通信も分散的に行なえるよう工夫されている。つまり1つ1つのセンサーに3G通信設備を積むのではなく、ローカルのセンサー同士が連携し、クラウドに確実に情報をアップロードできるように設計しているという。
たとえば「美味しいトマトのテンプレート」
実際に見学して感じたのは、いい意味での“手作り感”“試行錯誤感”だ。ICTの分野ではプロの富士通だが、農業分野のICT活用ではもちろん実績はない。ハウス設備の中にあるさまざまな機器も、ICT分野では名前の聞かない企業のものばかりで、富士通製にこだわっている印象はない。とにかく、いろいろなものを組み合わせて、実践を重ねて、新しい価値を生みだそうと意気込みが伝わってきた。
ハウス設備にセンサーを付けて、環境をコントロールするというソリューションは、省エネデータセンターと似たようなイメージであり、決して目新しいものではない。先進国であるオランダの事例をある意味モダナイゼーションしたものであり、正直既存のICTの発想の枠内にとどまるものだ。しかし、たとえば作物に最適化された環境をコンピューターが自動制御するといったレベルにまで至れば、これはちょっとしたイノベーションの領域に到達するはずだ。長らく課題であった自然災害(洪水、日照りなど)を克服するきっかけや、属人化している農業ノウハウなどを継承・共有できる方策などを得られるからだ。「たとえば、テンプレートを使って、美味しいトマトを作れるかもしれない」と将来のビジョンを語る阪井氏。既存のICTの発想を超えたAkisaiの次の展開に期待したい。