
代表作「ブラックジャックによろしく」をはじめとする佐藤秀峰先生の作品は、電子書籍サイト「漫画onWeb」にて配信中だ(C)佐藤秀峰/漫画 on web(http://mangaonweb.com/)
「海猿」「ブラックジャックによろしく」などを手がけた漫画家・佐藤秀峰先生は、電子書籍サイト「漫画onWeb」を立ちあげたり、昨年10月からは「ブラック・ジャックによろしく」を全巻無料でダウンロードOKにしたりと、デジタル時代の漫画家として何かと話題とアイデアを振りまいている。
そんな佐藤先生が現在デジタルの漫画制作に使っているツールは「CLIP STUDIO PAINT EX」だ。以前から同社のコミック制作ツール「ComicStudio」を使用していたという。
プロの漫画家でも利用者の多い「ComicStudio」から新しい漫画制作ソフトの「CLIP STUDIO PAINT EX」への乗り換えはどうだったか、実際の使い勝手や具体的な使い方などはどうなのか、アナログ作画からデジタル作画へ切り替える際のエピソードなど、気になることを聞いてみた。
「いつまでも紙原稿のアナログではダメだろう!」がきっかけ
―― デジタルツールを使いはじめようと思ったきっかけは何でしょう?
佐藤 実は、その前から使ってみたかったのですが、連載途中で急に絵が変わるのは良くないとか、忙しいから連載が終わってからにしようとか思っていたら2009年になっていました。
ずっと、いつまでも紙原稿のアナログではダメだろうと思っていました。紙で原稿を描くと自分では紙でしか保存できず、データで持つには直接に製版所でお願いするしかないのです。だから、元々の原稿をデータで作ればいいだろうとデジタル化しました。
当時、ウェブサイトに1日1点ずつ絵を描いてアップしていたのでそれを「ComicStudio」の練習台にして、次の連載の時から切り替えようとしていたら2009年になっていました。
―― デジタル原稿に慣れるまでに苦労はありましたか?
佐藤 アナログからデジタルに切り替えてみるとそんなに大変ではなかったです。遊びで使っていたときはなんとなく使える程度でしたが、仕事ではすぐに使えました。元々、 Adobeの「Photoshop」を使っていたので、まぁこういう感じか、と。
最初は周りの仲間たちが半分くらいデジタル化していたので、置いていかれそうだなぁという焦りでとりあえず「ComicStudio」を買ってみましたが、3ヵ月くらい放置していました。
そのあとも前述したように、ほとんど遊びの絵しか書いてなかったのですが、「新ブラックジャックによろしく」の連載が終わって「特攻の島」の連載が再開した3年半前から「ComicStudio」で「仕上げ」をするようになりました。
―― 「仕上げ」のどんなところで使っていましたか?
佐藤 今も同じですが、紙では背景やベタを入れるところまで描いて、デジタルではその後の仕上げのみです。
―― 現在はどんな作画環境ですか?
佐藤 僕はMac ProとWacomの液晶タブレットの組み合わせで、スタッフ4人は21インチのiMacとWacomの液晶タブレットの組み合わせです。
―― 「ComicStudio」から「CLIP STUDIO PAINT EX」へ移行したときはどうでしたか?
佐藤 似ていて違うというか、もう1つ言語をおぼえるような感じです。
僕は昨年の年末ギリギリの30日に販売されたばかりの「CLIP STUDIO PAINT EX」を買って、正月にずっと使い方を試していました。最初は7~8時間かかっていたのを、小1時間でできるはずだと延々と同じ絵を5回くらいくり返し描いて、目標タイムで描けるようになったときには正月が終わってしまいました(笑)。
―― ネームはどこでどうやって描いていますか?
佐藤 ネームもデジタルで描く人はいますけれど、僕はコピー用紙に鉛筆で書いています。
周りに人がいるとダメなので、ネーム専用のワンルームのアパートを借りていて、そこに閉じこもって書いています。
その部屋は、机とノートPCと本が20冊くらい、あとは紙がたくさんあるだけの何もない部屋です。必要な資料はパソコンに入っているのでパソコンを見ながら描いています。
僕のスケジュールは、4ヵ月で作画をしていて5ヵ月目はまるまる1ヵ月間ネームをやっています。でも最近は〆切を守らなすぎて〆切がなくなってしまいました(笑)。でき上がったら渡す、ということになったので、スケジュール通りに行かない時もあります(笑)。
