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デジタル時代の漫画家に必要なものとは?

漫画家・佐藤秀峰先生が「CLIP STUDIO PAINT EX」を語る!

2013年08月06日 11時00分更新

文● 松本佳代子、ASCII.jp編集部 撮影●曽根田元

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ウェブ上の映像や音楽と競える漫画を描くなら「CLIP STUDIO PAINT EX」

「漫画の将来を考えていくとCLIP STUDIO PAINTだと思います。」

―― CLIP STUDIO PAINT EXの裏ワザはありますか?

佐藤 ComicStudioでは紙に印刷することを前提なのでドットで表現するという紙ならではの描き方でしたが、CLIP STUDIO PAINT EXではモニターで見るのを想定して描いて、最後にドットにするやり方が良いと思います。

 ComicStudioは、スクリーントーンを貼ったりアナログでやっていたことをデジタルに置き換えるのが簡単。それに対してCLIP STUDIO PAINT EXは、ブラシツールもたくさんあって、本当に絵を描くような感じで掛けるのでいいですね。自由度が高いです。

―― CLIP STUDIO PAINT EXだと表現の幅が広がったと?

佐藤 はい、従来の漫画の描き方には収まらずに自由にやりたい人はCLIP STUDIO PAINT EXが向いています。

 今、僕はモノクロとカラーのどちらが良いのかを考えています。印刷ではカラーだとコストが上がるのでモノクロしか選択肢がありませんでしたが、モニターだとカラーでも多少データ量が上がるくらいだし、制作時間もそんなに変わらないのです。紙ではカラーはモノクロより5倍くらい時間がかかりますが、CLIP STUDIO PAINTで漫画的な塗り方でしたら1.5倍くらいと速いです。これなら少し頑張ればカラーで描けます。

 これからは漫画同士が競合するのではなくて、映像や音楽と同じようにウェブで読まれてくと考えると、他がカラーで音声も出るのに「漫画だけモノクロでドット表現でいいのか」と、なります。漫画の将来を考えていくとCLIP STUDIO PAINT EXだと思います。

―― デジタルならではのメリットや、特にここが良かったとかありますか?

佐藤 データを自分で持てることですかね。製版データは1枚1000円くらいなので単行本1冊で20万円くらいかかっちゃう。出版社はデータを持っているけど、出版社のものなので自分の描いたものでももらえない。

 結局、自分で電子書籍化するときには1冊20万円分かけることになるので、最初からデータで作れば出版社にも渡せるし、電子書籍化したり自分のサイトに掲載するときにも便利です。

 他のメリットは、よく言われることで、失敗してもやり直せるとか、お金がかからないとか。スクリーントーンは1枚500円くらいするので、スタッフ全員にパソコンとソフトとタブレットを買っても、プロの人なら1~2年で画材費の元が取れると思います。

 あとは、カッターで怪我もしなくなりますし、部屋も汚れなくなります。ただ、汚れると一生懸命がんばっている感があって、僕は自己満足できるので好きなんですけどね(笑)。

必要最低限の機能を覚えればOK

―― デジタルでの作画ということで、とくに配慮している点はありますか?

佐藤 ソフトを使っていると、必ず使いこなすマニアみたいな人がいます。でも、僕はソフトを使いこなすのがうまくなるよりも絵がうまくなりたい。だから機能は最低限のことだけ覚える程度にして、必要なこと以外は覚えません。

 だから、良い絵が描けたけれど何でこうなったか分からないときはあります。レイヤーの重ね順なのか解像度なのか因果関係が分からないけど、何となくできちゃった。そんなときは、もう一度描こうとしてもできない(笑)。

――レイヤーは何枚くらい使っていますか?

佐藤 CLIP STUDIO PAINT EXだと、人物のレイヤー、背景の線画、あとはグレーを塗るとき、で合計5枚くらいです。多くても10枚は使わないですね。ただ、スタッフによっては20枚や30枚も使う人もいます。僕は「自信がないからレイヤーを分けるんだろう?」と茶化していますが(笑)。

―― CLIP STUDIO PAINT EXで商用の入稿原稿を作成するときのアドバイスはありますか?

佐藤 解像度を600dpiくらいにして、Photoshop形式に書き出すという点でしょうか。残念ながらCLIP STUDIO PAINT EX形式で受け付けてくれる印刷所はありません。

 僕は原稿サイズはいつもB4サイズです。解像度は、漫画家さんは600dpiが多いですね。単行本や雑誌ではきれいに出ているので大丈夫だと思います。最初はその辺のやり方が分からず、おっかなびっくりやって何度か失敗したり、人から聞いたりして分かったこともあります。

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