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ノーク伊嶋のIT商材品評会 第1回

クラウド導入の進まない中小企業市場にどんな秘策で臨むのか

NECが満を持して投入したSMB向けクラウド「N-town」

2013年07月17日 06時00分更新

文● 伊嶋謙二(ノークリサーチ シニアアナリスト)

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3年後には100種類のアプリケーションを目指す

 N-townは3つのパートナー群で構成される。

(1)販売パートナー:
N-townのサービスを販売する企業。スタート時は20社程度
(2)サービスパートナー:
N-town上で展開されるサービス(アプリケーション)の開発/提供企業。13社でスタート
(3)アライアンスパートナー:
経営相談などのサービスを担当する企業。前述の経営バランスプレミアム診断は日本能率協会コンサルティングが実施している

 NECでは、まずはWebやメルマガなどを通じてN-townの認知を高めること、次に販売パートナーが販売できる商材を提供することに注力する。同時にサービスパートナーを増やすことで、N-townで提供するサービスを拡充していく。販売パートナーに対しても、可能であれば自社開発のソフトウェアをN-townで販売するよう促す。

 ただし、サービスパートナーはN-town上でサービスを提供するだけでよいというわけにはいかない。併せてサポートデスクなども構築しなければ、サポート力が重視される中堅・中小企業向けのクラウドサービスは成立しないことは確かだ。

 これまでの他社の失敗事例を踏まえて、NECではこのビジネスを「持続させる」ことを強く意識している。サービスイン時は20種類のアプリケーションでスタートするが、3年後には100種類にまで拡充することが目標である。なお価格は契約形態やサービスによって異なり、数百円から数万円までの幅があるようだ。

 またNECはこの構想において特定業種への展開を狙っている。今後の成長分野と見られている文教市場や医療、介護関連市場へ、各地域のパートナーの持つノウハウを活用して展開していくことを意図している。

 ●

 中堅・中小企業がITベンダーやサービスを選ぶ際に最も重要視する点は、「いつでもサポートしてくれること」「ずっとつきあってくれること」だ。情緒的で恋人みたいだが、親身になって、継続的な関係を長く続けてくれる相手であることが肝心なのである。一方で、提供する側にも適切な見返りがあることが前提となるのは当然だ。「提供する側にとって、ビジネスが継続できるだけの実利(儲け)が見える」ことは極めて重要なことである。

 今まで市場に登場したクラウドサービスはこの2つの要点を外した事例がほとんどで、成功例が少ないのが実態だ。N-townはその轍を踏まず、これからの中堅・中小企業向けのクラウドサービスの方向性を体現する施策となるか。期待をこめてじっくりと見守りたい。

■関連サイト

筆者紹介:伊嶋 謙二(いしま けんじ)

ノークリサーチ創業者兼CEO。大手市場調査会社を経て、1998年にノークリサーチを設立。IT市場に特化した調査、コンサルティングを展開。特に中堅・中小企業市場の調査・分析を得意としている。最近では経済産業省やIPA、ITCAなどの公的な活動にも積極的に委員やアドバイザーとして参加している。


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