中小企業側のメリットとは
5月にスタートしたN-town事業は、2つの重点施策で展開されている。
(1)N-townインフォメーションパーク(ポータルサイト)からの会員獲得
N-townには「インフォメーション・パーク」というコーナーがある。ここでは経営者向けのビジネスコンテンツ提供だけでなく、メルマガの配信やセミナー案内など会員登録を促すサービスが展開されている。自社の業務成熟度や情報システム成熟度をWeb上で把握できる「経営バランス簡易診断」というサービスもあり、取材時点(2013年5月)ですでに100社程度が利用していた。この診断で浮き彫りとなった課題を解決するために、コンサルタントとの直接面談による「プレミアム診断」や、有効なITサービスなどのレコメンデーションも行っていく予定である。
もちろん、単にポータルサイトを立ち上げるだけで、見込み顧客となる企業が自然に集まってくるなどということはない。そのため、NECのパートナーがユーザーに直接訪問し、このサイトへ誘導するということも実践している。取材時点でおよそ1500人(社)が登録しているという。
(2)特定コミュニティ(連合会/協会)向け展開
N-townではもう1つ多くの中堅・中小企業が所属する業種組合や企業グループなどの特定コミュニティ向けに、共同のIT基盤として提供するという施策にも力を入れている。具体的には大阪における事例が公開されている。
大阪メンズアパレル工業組合は、紳士服の一大産地である大阪市中央区谷町に本拠を置き、高度な技術を有するアパレル関連企業を会員としている。同組合では会員企業間の知識共有、経営強化の基盤としてN-townを採用し、サービス提供を行っている。サポートはNECと販売パートナーのオーシーシー情報センターが連携して実施しており、順次独自のコンテンツやサービスを展開していく。
NECではこの事例をベストプラクティスとして、他の企業コミュニティへの横展開を考えている。IT活用の進んでいない企業群に対して、コミュニティ専用のIT基盤とコンテンツをN-town上に構築、提供し、コミュニティの活性化とIT活用の促進につなげるのが狙いだ。NECが商材とノウハウを提供し、特約店やパートナーは自社の人脈や取引実績を生かしてコミュニティにアプローチできるというわけだ。
他社の施策でもよく指摘されるように、いわゆる“ハコモノ的”にサービス基盤を作り、あとは自由に使ってくださいとパートナーに手渡してもクラウドビジネスは続かない、基盤の運用面も含めてコンサルティングする必要があるとNECでは考えている。先にも触れたとおり、継続可能なビジネスモデルを実現するためには売り手側に対していかに利益を担保するか、あるいは見通しを示していけるかにかかっている。
さらにN-townでは、ユーザー企業が利用する複数のサービス間でデータ連携ができる点もウリとなっている。これにより、これまでシステム導入のたびに必要だったSIが不要となり、ユーザー企業は開発コスト削減のメリットを得られる。
現在ではプライベートクラウドを構築、運用する中堅・中小企業も増えている。こうしたユーザーに対しては、オンプレミスとN-townの連携プランを一緒に考える。ここではSIが必要になるものの、販売側もユーザー側も将来を見越したシステムが構築できる。
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