このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

サポート切れWindowsをリプレースする 第2回

デバイスやOSの選択肢が増えたのも大きな理由

中小企業はそもそもWindows XPの移行を考えていない?

2013年06月26日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

Windows XPのサポート切れが近づいており、数千万台にもおよぶレガシーWindowsの移行が大きなテーマとなっている。しかし、古いOSを使い続けるユーザーが多いのは、それなりの理由がある。ここではWindows XPからの移行を阻害する要因について考察する。

Windows XPの移行を阻害する要因とは?

 前パートでは、Windows XPとWindows Server 2003のサポート切れについておさらいした。内容を簡単に言うと、Windows XPやOffice 2003、Internet Explorer 6が来年、Windows Server 2003が再来年にサポート終了を迎え、セキュリティの更新が行なわれなくなるということだ。セキュリティが更新されないということは、OSやアプリケーションの脆弱性を狙った攻撃を防ぐことができないことを意味する。インターネットへの接続はきわめて危険と言わざるを得ない。

 ただ、こうしたレガシーWindowsの課題は、今に始まったことではない。OSのバージョンアップやサポート切れのたびに指摘された内容といえる。しかし、未だにレガシーWindowsの利用率が高いという状況が続いている。

 これはなぜかを考査するのに興味深い調査がある。昨年末にノークリサーチが年商500億円未満の国内中堅・中小企業(SMB)を対象に行なった「2012年版 中堅・中小企業におけるPC環境の実態と展望レポート」という調査だ。この調査の中にある「PCのハードウェアまたはOSを刷新する予定の有無」では、「年商5億円未満」の企業で「予定はまったくない」と答えた企業が、54.6%となんと半数を超えている。つまり、調査を元にすれば、国内の中小企業においては、半数以上が刷新の移行すらないということを意味する。

PCのハードウェアまたはOSを刷新しない理由(いくつでも)「2012年版 中堅・中小企業におけるPC環境の実態と展望レポート」(ノークリサーチ)

 また、こうした「PCのハードウェアまたはOSを刷新しない理由」では、年商規模が大きい企業の多くが「リースやレンタルの契約期間が残っている」「既存OSのサポート期間が終了していない」のに対し、年商規模が小さい企業では「まだ耐用年数の限界に達していない」「新しいOSの機能に魅力を感じない」という傾向になるようだ。つまり、日本の大多数を占める中小企業では、安定したOSを使い続けたいという意向があり、新しいOSに対する魅力を感じていないのでは?という仮説が立てられるわけだ。

■関連サイト

「壊れるまで使う」というユーザー心理

 これらの仮説を検証していこう。「まだ耐用年数の限界に達していない」という点だが、確かにソフトウェアは単に使用年月だけでは推し量れないところがある。ご存じの通り、PCのアーキテクチャは長らく変わっておらず、x86対応のOSやアプリケーションは継続して利用できる。そのため、きちんと動いているのに、なぜお金をかけて換えなければならないのだという不満が根本にはある。「使えるものは壊れるまで使う」という日本人の美徳がOS乗り換えの大きな障壁となっている。ここには「古いから捨ててしまえ」という理屈は通用しない。

 「新しいOSの機能に魅力を感じない」という点も、重要なポイントだ。お金をかけて安定動作している環境をリプレースするのであれば、乗り換え先の環境が相応に魅力的でなければならない。最新ハードウェアのサポートやクラウド対応、タブレットの新しい使い方、省エネ性能などなど。新OS移行のメリットはさまざまな形でアピールされている。しかし、多くの中小企業のユーザーには、乗り換え先となるWindows 7や8の魅力は届いていない。もしくはメリットと認知されていない。

 ここにベンダー側とユーザー側の大きなギャップが生じていると考えられる。XPを使い続けるユーザーが安定したハードウェア制御やアプリケーションの動作を求めるのであれば、OSの最新機能や先進性を打ち出すのはアピールの仕方として間違っている。また、「Windows XPに比べて、Windows 7ではウイルスの感染率が1/10」といったセキュリティ面のメリットを訴えても、OS移行のモチベーションとしてはまだ弱いというわけだ。しかも、ライセンス違反をしているわけではないので、Windows XPもOffice 2003のサポートが切れても使い続けられる。

 こうした背景を考えれば、「Windows 7や8の最大のライバルがWindows XP」というのはまったく間違っていない指摘であろう。

(次ページ、多彩な端末とOSの選択肢が移行をとまどわせる)


 

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事
  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード