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最新ハイエンドオーディオ、本当のところ 第6回

特徴あるデザイン、そして艶やかで包み込まれるサウンド

真空管のサウンドをポケットに、「Carot One」のポタアンを聴く (3/3)

2014年07月09日 17時00分更新

文● 編集部

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透き通るように爽快、素敵な音にひたれる

 さて肝心のサウンドはどうだろうか。

 Carot Oneは「TITTA」というカナル型イヤフォンを提供しているため、これと手持ちのヘッドフォンと差し替えながら、聞き比べてみた。

 まずTITTAとの組み合わせだが、同一メーカーの製品ということで、デザインはもちろん音の傾向も調和が取れており好印象だ。TITTAは実売1万円以下で買える比較的リーズナブルな製品であり、レンジの広さや密閉性といったHi-Fi性能の部分では数万円の他社ハイエンド機ほど欲張ってはいないが、適度な低音の量感と締まりがあり、ボーカルやリズム楽器などを元気に奏でる。価格を含めたベストバランスにこだわった印象がある。

 これをNIK58-TUBEと組み合わせると包まれるような音場の広さ、そして独特の艶やかさが加わる。比較的味付けのないTITTAの音に、非常にチャーミングに音楽を奏で出し、Carot Oneらしいキャラクターが前面に出てくる。

 情報量で聞かせるタイプではないが、特にJ-POPや打ち込み系のバックとともに歌うボーカル曲などとの相性は抜群。またクラシックやジャズなどアコースティック系のソースでもバイオリンなどストリングスに独特のみずみずしさが加わって色彩豊かだ。

 オレンジに塗装された金属製のハウジング、そしてブルーのコードなどマッチするデザインも魅力的。ミニマムとはいえないまとまり感のあるサウンドが実感できた。

まずは同じブランドのTITTAとの組み合わせで聞く

金属製のボディーは質感にも優れる。再生を続けると真空管で本体も熱を帯び、演奏者の熱気を肌で感じるようだ

 またTITTA以外のヘッドフォン、イヤフォンとの組み合わせでも十分な実力を持つ。300Ωのインピーダンスまで対応しているので、ポータブルプレーヤーではなかなか音量が取れないゼンハイザーのHD650、HD800といった機種でもスペック上は問題ない。

 手元にあったSHURE HD1540と組み合わせてみたが、滑らかな音の質感などNIK58-TUBEならではの魅力を感じる面は多々あった。NIK58-TUBEの出自であるイタリア語でにんじんは「Carote」(カローテ)と綴るが、Carot oneのスペースを取り去り「Carotone」と一単語で読むと、イタリア語で「大きなにんじん」という意味になる。

 小さな本体でありながら、奏でるのはスケールの大きなサウンド。頭の中でそんな言葉遊びをすると、本機にぴったりの名前だと感じる。そして気付けば、手持ちのアルバムをもう1枚、もう1枚とかけ、時間を忘れて音楽に聞きほれてしまった。

 NIK58-TUBEは独特なデザインとサウンドは、そんな幸せな時間をリスナーにもたらしてくれるのだ。

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