このページの本文へ

時代と共に成長する「DataONTAP」大解剖 第4回

オールフラッシュストレージの導入でますます用途は拡がる

ネットアップ、適材適所のフラッシュ活用について語る

2013年06月18日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

ストレージ側でのフラッシュ活用とは?

 こうしたポートフォリオとしてネットアップでは、汎用的な共有環境では今までDataONTAPをベースにしたFASを提供し、キャッシュやI/Oの最小化を実現すべく部分的にフラッシュを導入するという基本戦略をとっている。ここで重要になるのが、さまざまな部分でフラッシュを用いる「階層化」という概念だ。

 同じフラッシュでも役割が異なってくるため、「サーバー側、ストレージ側、中継のキャッシュでも、結局あらゆるところでフラッシュは必要」(河西氏)とのこと。フラッシュを階層化することで、アクセス頻度に応じてデータを瞬時に移動でき、ディスクの本数や電力が減るため効率性が増す。さらにデフォルト設定のまま運用できるシンプルさも大きなポイントだという。

ネットアップが推進するフラッシュの階層化アプローチ

 まず、データの保存装置となるストレージ側では、とにかくディスクを回さないことが重要になる。そのため、フラッシュをキャッシュとして使い、リクエストをなるべくメモリから返すのが望ましい。最近ではリードだけではなく、ライトでもフラッシュを用い、バッファして効率的に書き込むことが求められる。

 これを実現すべく2009年に登場したのが「Flash Cache」だ。当時、FASはメモリを増設することができず、河西氏も「入社以来、ずっとなぜFASはメモリを足せないんだとお客様から聞かれ続けた」という。こうした課題に対して、読み出し専用のキャッシュとして投入されたのがPAM(Performance Accelerator Module)だ。そして、このPAMを1年半を経て大容量化させたのが、Flash Cacheになる。

 Flash Cacheがブレイクしたのは、VDIやシンクライアントでのI/O高速化だという。河西氏は「リーマンショック以降、金融機関はリスク管理が厳しくなり、VDIやシンクライアントの導入が相次いだ。しかし、出勤時に起動すると、データの転送に時間がかかり、午前中ログインできなかった従業員もいた。こうしたトラブルを気持ちよく解決したのが、Flash Cacheだった」と語る。もちろん他の業種でも導入は進んでおり、ある製造業の顧客は1TBのFlash Cacheを4枚導入することで、HDDにほぼアクセスが行かなくなったという。

 同社のFlash Cacheの試算だと、FAS6210に600GB SAS HDD×240本(144TB)を実装した構成を、1TB SATA HDD×168本、1TB Flash Cacheの構成にすると、1/Oコストと消費電力がそれぞれ40%強削減できる。ストレージ容量やIOPS、平均応答時間なども向上し、柔軟性でもメリットは大きい。「プロトコルを問わず、すべてがキャッシングの対象になる。重複排除が効くという点もポイント」(河西氏)。

Flash Cacheの導入効果

 そして、Flash Cacheの次に登場したのが、価格面で手頃になってきたSSDのソリューションだ。ディスクアレイ側にSSDを搭載することが増えてきた同社は、I/Oを大幅に向上させる「Flash Pool」を2011年に投入した。Flash Poolでは、高価なSAS HDDの代わりに1つのディスクシェルフの中に複数台のSSDを混在させることで、DataONTAPがアクセス頻度の高いデータをSSDに自動配置する。

 コントローラーに搭載したFlash Cacheと異なり、「HA構成におけるフェイルオーバー時においても、Flash Poolではパフォーマンスが維持される」(河西氏)という特徴を持つ。また、スループットの向上は大きくないが、IOPSあたりのコストや消費電力が大幅に削減され、応答時間も短縮される。そのため、キャッシュ可能なワークロードや、ランダムリード/ライトの多い環境で大きな効果を発揮するので、クラウド環境に向いているという。

Flash Poolの導入効果(OLTPワークロード)

サーバー側のフラッシュでは低遅延が求められる

 一方、サーバー側で求められるフラッシュの要件は、低いレイテンシだ。サーバーの仮想化が極限まで進み、数十台を1台のサーバーでまかなおうとすると、パフォーマンスやデータの一貫性が必要になる。サーバーとストレージ双方でキャッシュを行なうことで、全体のパフォーマンスが上がり、CPUの負荷が減る。こうなると、ますます仮想化が進められるというわけだ。

 こうしたサーバー側の要件においては、昨年発表したサーバーキャッシングソリューションである「Flash Accel」で対応する。Flash Accelはネットアップが開発したサーバー用のソフトウェアで、サーバーのフラッシュをData ONTAPのキャッシュとして利用する。ポイントはサーバー側のフラッシュはあくまでサードパーティに任せるという戦略だ。パートナーとの検証を進めると共に、Fuision-ioの再販プログラムでソフトウェアとともに提供する。

 Flash Accelを実測したところ、「レイテンシをそのままに、I/Oレベルが大幅に向上する」(河西氏)とのこと。また、サーバーとストレージ間でデータの一貫性を維持するとともに、VMやサーバーのリブート後もキャッシュのデータを保持できる。

(次ページ、特殊用途で用いられる2つのオールフラッシュストレージ)


 

カテゴリートップへ

この連載の記事