フラッシュへのデータ配置を手間なく最適化できる
HDDとフラッシュのいいとこ取り!「VST」の実力を検証する
2013年08月02日 09時00分更新
圧倒的なランダムアクセス性能を持つフラッシュ、シーケンシャルアクセスが得意なHDD。両者の特徴をうまく活かすにはどうしたらよいだろうか? 今回はネットアップが考える適材適所のフラッシュ導入アプローチを見ていく。
フラッシュを有効活用するネットアップのVSTとは?
前回はエンタープライズストレージにおけるフラッシュのインパクトと、その過度な期待に基づいた誤解について解説した。ここで明らかになったのは、価格や容量の面でフラッシュの導入が現実的になったこと。その一方、フラッシュが決して万能なデバイスではないこと、そしてワークロードにあわせた適材適所の利用が重要だという点だ。では、これらの課題を踏まえ、ネットアップが提案するフラッシュのメリットを最大に引き出す使い方を見ていこう。
前回述べたとおり、ネットアップは2009年からさまざまな形でフラッシュを取り入れてきた。ネットアップのData ONTAPではコントローラーの二次読み込みキャッシュとしてフラッシュを用いる「Flash Cache」、ディスクプール(アグリゲート)においてHDDとSSDを混在させ、読み込みに加え書き込みデータもキャッシュする「Flash Pool」、そしてサーバー側に搭載したフラッシュをキャッシュとして用い、ストレージのデータと同期させる「Flash Accel」などの機能がサポートされている。こうした機能を用いたストレージの階層化管理をネットアップは「VST(Virtual Storage Tier)」と呼んでいる。
見れば分かるとおり、Flash Cache、Flash Pool、Flach Accelなどはすべてフラッシュをキャッシュとして利用している。使用頻度を高いデータをフラッシュベースのキャッシュに集めることで、HDDへのアクセスを減らすことが可能になる。性能の高いフラッシュにI/Oを集中させることでシステム全体の性能を底上げしているわけだ。HDDが得意とするシーケンシャルアクセスは従来どおりHDDで対応する。I/OがランダムかシーケンシャルかはData ONTAPが自動判別するため、管理者の工数が増えることはない。一方で、相対的に使用頻度の低いデータは安価なSATA HDDや高速なSAS HDDに格納する。これにより、性能面のみならず、容量という要件も同時に満たすわけだ。
VSTと通常の階層化管理とどこが違う?
“Tier”という単語からも分かるとおり、VSTの考え方はアクセス頻度にあわせて、データの配置を変更するいわゆる「階層化管理」というアプローチに似ている。競合も含め、多くのストレージベンダーは、この階層化管理の考え方を製品に持ち込んでいるため、これ自体は特段珍しいわけではない。しかし、VSTの優れているのは、データの優先度をワークロードに応じてリアルタイムに判断し、コストやパフォーマンスに応じて、I/O要求を最適化する点だ。
通常の階層化管理では、まず新規データはSAS HDDなどに格納され、ユーザーや製品自体のポリシーにあわせて、データを一定周期で移動する。アクセス頻度が低ければSATA HDDへ、よくアクセスされるデータはフラッシュへといった具合だ。これに対して、ネットアップのVSTでは、フラッシュをメモリとHDDの中間にあたるキャッシュデバイスとして扱う。そのため、メモリだけではカバーできないデータを、リアルタイムにフラッシュに格納するという動きになる。しかも、Data ONTAPによってI/Oの判別が自動的に行なわれ、ランダムなI/Oはフラッシュ側で対応する。
また、通常の階層化管理と異なり、あとからデータを移動させるわけではないので、リアルタイムにアクセス頻度の高いデータがキャッシュされ、CPUやメモリなどのオーバーヘッドも最小限に抑えられるというメリットがある。まさにキャッシュしてほしいデータをストレージ側で自動的に格納してくれるわけだ。このようにVSTではユーザーが意識することなく、フラッシュを効率的に活用できる。
VSTでもう1つ優れているのは、キャッシュが消えないという点だ。ギガバイトレベルならともかく、テラバイト級のキャッシュのウォームアップには非常に時間がかかり、業務に大きな影響を与えることになる。その点、VSTではFlash Cache、Flash Pool、Flash Accelいずれの方法を用いても、キャッシュが永続する。特にFlash Poolに関しては、停電や障害など計画外停止時においてもキャッシュが消えることがない。
(次ページ、Flash CacheとFlash Poolって本当に効果あるの?)
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