2月19日、ネットアップは米本社にてフラッシュストレージの新製品発表と、今後の製品計画の一部を明らかにした。同社としてもおよそ10年ぶりの開催だという国際記者発表会に出席できたので、その際に各担当者から聞いた話をまとめておきたい。
2つのオールフラッシュストレージ
今回発表された“オールフラッシュ”ストレージは、大きく2機種ある。まずは、同社の「Eシリーズ」ストレージ製品ラインに位置づけられる「EF540」だ。この製品ラインはEnginio買収によって獲得された製品群で、パフォーマンス重視の占有ストレージとしての利用が想定される。同社の代表的製品であるFASシリーズのストレージは、ストレージOSとしてData ONTAPを採用し、共有インフラとして利用する場合に強みを持つ。一方で、EシリーズはEnginio由来のSANtricityをストレージOSとして採用し、高度な応答性を必要とするアプリケーション/データセットに特化した設計となっている。
かつてのネットアップはローエンドからハイエンドまで単一のData ONTAP環境で統一された「きれいな」アーキテクチャを特徴としていたが、Eシリーズがラインナップに加わったことでこのシンプルな単一環境という特徴は失われた形だ。この点について、同社関係者は一様に「ハイパフォーマンス重視の用途に対して共用インフラでの効率性を重視したData ONTAPで対応するのは無理がある」と語る。単一アーキテクチャという利点を捨てても、用途に応じて最適化されたストレージOSで対応するほうがメリットがあるという判断だ。
性能重視の製品ラインとして投入されるEF540は、30万IOPS以上/レイテンシはサブミリ秒(1/1000秒未満)単位、という性能を実現し、最小構成価格は2054万円と発表された。
また、今後発売予定の製品として公表されたのが「FlashRay」製品ファミリーだ。新たに“オールフラッシュ専用のアーキテクチャ”に基づいて開発されるというFlashRayは、今年半ばにβ版がリリース、製品出荷は2014年の予定となっている。
フラッシュ用も投入するストレージOS戦略とは?
最近、ベンチャーを中心に“オールフラッシュ”“ピュアフラッシュ”などと呼ばれる一群のストレージ製品の発表が相次いでいる。従来からSSDなどの形で利用されてきたフラッシュメモリをHDDのパフォーマンス改善のためのキャッシュやアクセラレーターとしてではなく、HDDに換わる記憶メディアとして利用するストレージのことだ。
単にHDDをSSDに交換するだけならユーザー側でも実施可能な簡単な作業であり、それでも一定のパフォーマンス向上は見込めるが、フラッシュにはHDDとは異なる特性があるため、本来の性能をフルに発揮するためにはやはりフラッシュ向けに最適化されたシステムの方が望ましい。外形的には“単にHDDをSSDに換装しただけ”に見えても、中身が全く異なるストレージシステムが新たに出現してきたということだ。
次に問題になるのは、ストレージシステムのなかで“どの部分をフラッシュ向けに最適化するのが良いのか”という点だろう。ハードウェアのレイヤーから完全にフラッシュに最適化する手ももちろんあるが、ネットアップは主にストレージOSの層で対応するようだ。同社のストレージOSは、同社が「ストレージOSとしてはシェアNo1」だと謳うData ONTAPと、ハイパフォーマンス向け製品群で使われているSANtricityがある。EF540ではまずSANtricityにフラッシュ向けの改良を組み込んだものが使われるが、同社では別途フラッシュ専用の新ストレージOSも開発中だ。これは、FlashRayに搭載されて市場投入されることになる。
(次ページ、同社の精鋭がFlashRayの開発を手がける)