今回の黒歴史は、VIA Technologiesが最初にリリースしたK7向けチップセット「Apollo KX133」(以下、KX133)だ。それまでIron Gatekこと「AMD-751」しか存在しなかったK7向けチップセット市場に、最初に投入されたサードパーティー製品で、結果として猛烈に売れた製品である。
なぜそんなヒット商品が黒歴史なのかを説明するために、まずはK7投入前夜あたりから話をしていこう。
AMD Athlonプロセッサーを発表
インテルの圧力が思わぬ波紋を呼ぶ
1999年6月、AMDはK7ことAMD Athlonプロセッサーの発表を行なった。下の画像は当時のスケジュールだが、製品発表から出荷時期の開示まで、約2ヵ月とずいぶん間が空いている。
もちろん、最近でも製品発表から出荷開始までにかなりの時間を要することも多いが、まったく新しいプラットフォームを立ち上げる場合、事前にマザーボードメーカーなどとスケジュールを組んで、発売日には多数の対応マザーボードが並ぶといった形で勢いを見せるのが普通である。実際、この後Socket AタイプのAthlonの発表会などでは、そうした光景がごく普通になった。
ところがこの最初の時はやや様相が異なっており、発表会で示されたのはAMDによるAMD-751搭載リファレンスボードで動いているAthlon“だけ”であった。これは以下の状況にあったからだ。
- マザーボードメーカーにはインテルからの圧力が猛烈に掛かっており、Slot A対応マザーボードの出荷はおろか、計画を発表することすら難しかった。
- 同様にチップセットベンダーにも、インテルのプロセッサーライセンスを人質に取る形での圧力が掛けられ、Slot A対応チップセットの発表が難しかった。
もっともこういう圧力は、マザーボードメーカーでも1st Tier(一番優先度が高く、優遇されているベンダー)には有効であるが、2nd/3rd Tierに関しては、元々インテルからそれほど優遇されているわけではない分、圧力も相対的に掛かりにくい。「Slot Aのマザーボードを出したら、おたくへの優先割り当てを取り上げるよ」、「もともと優先割り当てなんてないじゃん」といった具合だ。
その結果、日本市場ではFIC製マザーボード「SD11」が爆発的に売れることになる。こうなると今度は1st Tierのマザーボードメーカーが「お前らのせいで、Slot Aマザーの売上を2nd/3rd Tierに取られちゃったじゃないか」とインテルに捻じ込むわけで、インテルとしても渋々ではあっても圧力を掛けることを止めざるを得ない。こうして2000年に入ると、ASUSTeKやMSIのAMD-751搭載マザーボードが秋葉原で入手できるようになり、いくぶん状況は改善した。
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