VIAチップセットの歴史 その2
ライバルの台頭で失速したVIAのAMD向けチップセット
2010年05月17日 12時00分更新
VIAチップセットの後編は、AMD CPU向けおよび自社向けチップセットの話題を取り上げよう。もっとも、AMD向けと言ってもSuper 7に対応した「Apollo MVP3」(前回参照)などは、事実上AMD向けチップセットだったし、後述する「CLE266」はインテルのCeleronでも動作したから、これも純粋に自社向けとも言いにくいのだが。
AMD向け最初のチップセットは
1999年の「KX133」から
まずはAMDの「K7」(Athlon)向けから始めよう。1999年11月に最初の製品として投入されたのが「KX133」、続いて2000年5月には、「KT133」が投入される。ただこの2つの製品(厳密に言えばそのあとの「KLE133」あたりまで)は、時系列がちょっとおかしい。
実際スペックだけみると、KX133(VT8371)に比べてKT133(VT8363)の方が低いし、型番も減っていたりする。実のところKX133のドキュメントを見ると、「Revision 1.01」に「Remove “Socket-462” from description(chip is optimized for Slot-A)」なんて記述がある。どうやら、当初はSlot AとSocket Aの両対応として開発が進められ、途中からSlot A専用に切り替わったようだ。
そんな話はともかく、どちらのチップセットもPC100/133 SDRAM(とVCM)をサポートしたAGP 4Xチップセットとしてリリースされ、AMDの「AMD-751」しかなかった自作向けマーケットで有力な対抗製品となる(関連記事)。
2010年12月には、ThunderbirdコアのAthlonが266MHz FSBに対応したのにあわせて、これに準拠した「KT133A」がリリースされる。翌2001年1月にはDDRメモリーに対応した「KT266」、2001年9月にはDDR利用時にメモリーアクセス性能を改善したという「KT266A」、さらに2002年2月には333MHz FSBとDDR-333に対応した「KT333」という具合に、次々と新製品が登場した。
NVIDIAチップセットの台頭で苦戦を強いられる
もっともこの頃から、NVIDIAのnForceシリーズという強力な対抗馬が現れたため、VIAのチップセットはやや苦戦を強いられるようになってきた。特に2002年7月には、いち早く400MHz FSBとDDR-400に対応した「nForce2」が投入されため(関連記事)、スペック面でKT333はやや劣勢であった。DDR-400や400MHz FSBには、当時のKT333ベースでは対応が難しかったようだ。
当初AMDには400MHz FSBの計画がなく、nForce 2の400MHz FSB対応は単なるオーバースペックだった。しかし130nm SOIプロセスが難航したため、急遽400MHz FSB対応と2次キャッシュ倍増で性能を上げた「Barton」コアを投入したのは、関連記事のnForce2のところで説明したとおり。そのため急遽VIAチップセットにも、400MHz FSBが必須になってしまった。
そこで苦肉の策として、まずKT333をベースに、当初は「KT333A」として予定していた製品をAGP 8Xに対応した「KT400」としてリリース。続いて2003年3月には、DDR-400に対応した製品を「KT400A」としてリリースする。しかし、400MHz FSBに対応したチップセットは結局、2003年8月の「KT600」まで待たねばならなかった。メモリーバスを2チャンネルとすることで、スペック上で完全にnForce2を凌ぐことになった「KT880」がリリースされたのは2004年4月である。
ただもうこの時期になると、AMD CPUの主力はK8ベースのAthlon 64に移ってしまっており、もともとピンポイントリリースとして用意されたBartonコアのAthlon XPは、流通量がかなり減っていた。この時期はAthlon XPは完全にバリュー向け製品としてThroughbredコアの製品が流れていただけだから、スペック的にはKT400Aでも十分。その意味では、やはりKT333からKT600までの間に1年半を要した遅れが後々まで響いた形になる。

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