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スケールアウトNAS「アイシロン」のすべて 第5回

「一般企業でもビッグデータ」時代を乗り切る

アイシロンが狙うエンタープライズスケールアウト市場

2012年11月07日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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新たに重視されるエンタープライズストレージの要件

 エンタープライズに必要なストレージの要件は、これまでアイシロンがカバーしてきた特定業種やビッグデータと異なる部分がある。

 これに対し、エンタープライズ向けのストレージでは、「セキュリティ」「データ保護」「マルチテナンシー」「相互運用性」などの要件が重視される。その結果、エンタープライズ向けのストレージは、ポリシーに基づきファイルアクセスを制御したり、異なるベンダーのアプリケーションと相互運用したり、バックアップやDR、レプリケーションなどのデータ保護機能などを搭載している。一方、従来のアイシロンでは、データ増大に対して確実に拡張できる点、容易に運用できる点を最優先にしてきた。そのため、エンタープライズで重視されるようなレプリケーション、バックアップなどのデータ運用機能は物足りない点も見られた。しかし今回投入されるMavericksでは、エンタープライズ要件を十分に満たす数々の機能追加が行なわれる。

●企業での利用形態に対応したセキュリティ

 もっとも強化されたのは、企業での利用で重視されるセキュリティである(図19)。

図19 エンタープライズでの利用に耐えうるセキュリティ機能

 Mavericksでは、単一のアイシロンを複数の部署で利用するのを前提に、管理権限を細分化できるようになっている。具体的には、システム管理だけではなく、監査向けの権限、セキュリティ管理など、異なるロール(役割)に合わせて権限を細かく設定することが可能だ。

 また、Active DirectoryやLDAPなど複数の認証基盤を同時に協調利用できる「Authentication Zones(認証ゾーン)」という機能も追加された。これを利用することで、たとえば経理部のActive Directoryで設定したゾーンへは、他の部署からアクセスできないようにするといったアクセス制御を行なえる(図20)。これらはSMB/CIFSのほか、HTTPやFTP、SSHなどのプロトコルでも利用できる(NFSは後日アップデートで対応予定)。ログインしたユーザーがどこにアクセスできるかを詳細に設定できるので、複数のファイルサーバーを統合する際に役に立つ機能といえる。

図20 複数の認証プロバイダーを共用できるAuthentication Zones

●SyncIQによるデータ保護の強化

 レプリケーションを実現するオプションソフト「SyncIQ」のDR対応が強化された。具体的には、DRサイトからのフェイルオーバーやフェイルバックが今までより容易に行なえるようになった(図21)。

図21 SyncIQの強化でDRサイトとのフェイルオーバーとフェイルバックが容易に

 SyncIQでは、異なるサイトに設置されたアイシロンのクラスター間でデータをレプリケーションする。新しいSyncIQでは本番システムが停止した際、管理者がGUIツールからフェイルオーバーを指示すると、データ同期をいったん停止し、最新のスナップショットをセカンダリークラスターにリストアする。その後、「読み出しのみ可」のモードを解除すると、管理者はセカンダリーサイトをユーザーに展開できることになる。

 一方、メインサイトが復旧したら、また管理者からGUIツールで指示を行なうとセカンダリーサイトからの差分同期を実施する。差分同期なので、データ転送量が少なく、WAN越しでの運用も十分実用的だ。そして、フェイルバックが完成したら、再び本番システムを「読み書き可」に戻す。あとは、ユーザーのアクセスをメインサイトに変更すればよい。こうした手順により、障害から速やかに復旧させることが可能だ。

●APIの整備による連携性強化

 昨今の企業システムで必須の仮想化やクラウドへの対応も強化された(図22)。

図22  VMwareとの連携を強化したほか、REST APIも強化

 まずは、VMware対応の強化だ。もとより、アイシロンはVMware Readyの認定を取得しており、両者の親和性は高い。これに加え、MavericksではVAAI(vStorageAPI for Array Integration)をサポートした。VAAIを用いることで、データコピーなど仮想マシン側で行なっていた処理を、アイシロン側で行なえるようになる。これにより、ネットワークのオーバーヘッドを減らし、処理の高速化が実現する。さらにVASA(VMware APIs for Storage Awareness)のサポートにより、vSphereに対してディスクの性質と用途を定義しておき、仮想マシンをどのディスクプールで稼働させるかを設定することが可能となる。アイシロンはSSD、SAS、SATAなどのディスクを搭載可能だ。そのため、性能を重視する場合はSSDやSASを指定し、コストを重視する場合はSATAを指定すればよい。

 さらに、オプションソフトウェアのSnapshotIQの拡張により、仮想マシンファイル(VMDK)のコピーを書き換え可能なクローン(Writable File Clone)として参照できるようになった。これにより、仮想マシンのコピー時間を短縮すると共に、ディスク容量の削減が実現する。クローンはオリジナルファイルのブロックを共有するため、データ更新が発生した際には更新ブロックのみ書き換えればよい。

 さらに、REST APIも整備され、他社製品やクラウドとの連携も容易になったのも大きい。HTTP経由でストレージを制御できるREST APIの実装はMavericksの大きなテーマとなるようだ。

 その他、これまで得意としていたシーケンシャルな読み出し性能の向上に加え、ランダムI/Oの性能も強化。最大160万IOPSと業界トップクラスのスループットを実現している。また、従来に比べて遅延が半分になり、エンタープライズでのアプリケーションの利用により最適化されている。

 特定業種やビッグデータをカバーしつつ、より汎用的なエンタープライズの要件も満たすアイシロンは、より多くのユーザーがスケールアウトNASのメリットを享受できるよう、その可能性を拡げている真っ最中といえる。データ爆発時代を迎え、企業のデータ管理を革新的に向上させてくれるアイシロンのスケールアウトNAS。今まで導入を検討していなかったユーザーも、ぜひ選定ストレージの候補に加えてほしい。

(提供:EMCジャパン)

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