貿易会社からF3のコンストラクターまで
―― ではワインを一杯ください。まず、iPadアプリはどなたが作られたんですか?
尾茂 YouTubeで、テルミンのアプリを作っているMasao Suzakiさんの動画を見たんですよ。それでオンド・マルトノのアプリは作れないかということで。
―― けっこういろんな人をスカウティングしてますね。
尾茂 もの作りってやっぱり1人じゃできないから。それは自動車レースをやっていた時に学んだんですよ。
―― えっ、レースですか。そのお話を伺ってもいいですか?
尾茂 ちょっと長くなりますけど。僕は昔、貿易の会社をやっていたんです。ダイアモンドなんですけど。それでアフリカへ行くときに、トランジットでイギリスに寄って、一週間くらいレースで遊んでから仕事へ行くと。ドニントン・パークっていう、1993年にF1も走ったことのあるサーキットなんだけど、そこでケイターハム※のレースをやっていたんですよ。草レースだけど。
※ ルパン三世に出てくる屋根がない方の車です。いわゆるスーパーセブン。
―― ひょっとしてお金持ちのボンボンですか?
尾茂 いやいやいや、うちはもうサラリーマンの家ですから。ただの公務員ですから。
junjiro ちょっと移動にヘリコプターに乗って行くような公務員ですよね。
―― ああ、やっぱりねー。
尾茂 (無視して)それで1992年にトランジットで寄ったアディス(アベバ)で内戦が始まって、空港も閉鎖になって、僕は日本と3ヵ月間音信不通になって。それで会社がおかしくなって、1995年に閉めたんです。それから車を作って本格的にレースをやろうと。まずはF3から入門ということで、自分でシャーシを作って、エンジン作って、ギアボックスを作って、オールジャパンのオールオリジナルで参戦したんです。
―― あれっ、それってコンストラクターで、ってことですよね。チーム名は?
尾茂 XO RACING※です。
※ その時代のレーシングカーの写真は「かしまの森美術館」のwebサイトでも見られる。 http://www.kashimanomoriartcube.com/
―― そのチーム覚えてますよ! そっちの方が話としてすごくないですか。取材のテーマ変えましょうか。ねえ。
尾茂 全然すごくないですよ。結果残してないから。だってね、成田の工場でレーシングカーを作っていたら、5年が経過してしまったんですよ。できた! と思ったらレギュレーションが変わっちゃってて。
―― (今日の取材は何かとんでもないことになっているなぁ……)あ、すみません、ワインください。それで色々割愛して、なんでオンド・マルトノなんですか?
尾茂 初めて出会った楽器がオンド・マルトノだったから。
―― えっ。
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