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【所長コラム】「0(ゼロ)グラム」へようこそ 第67回

横ばいのmixiと急成長するFacebook

2011年08月25日 09時00分更新

文● 遠藤諭/アスキー総合研究所

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joking relationship


 それほど深く親しいわけでもないのに、互いに相手をからかったり、イタズラしたりしても許されるような関係のことを「冗談関係」(joking relationship)という。この言葉のネーミング自体が冗談っぽいので、「ああ、知ってる」という方も少なくないでしょう。

 いちばん一般的な冗談関係は、祖父と孫がウソをついたりイタズラし合うような関係だ。いろいろな形があるが、以前のこのコラムでも触れた「クラン」(Clan)に属する者の間でも冗談関係があったりする(米国でのソーシャルメディアの平均的な友達の数が150人で、それは「クラン」に相当する人数規模だった)。

 冗談関係で許されるのは、「軽い冗談から、相手の物を盗んだり相手を呪ったり、さらに猥褻(わいせつ)なあるいは侮辱的な行動をとり、言葉を浴びせるなどいろいろ」(平凡社『世界大百科事典』より抜粋)だそうだ。

 どおりで、『サンシャイン牧場』で友達の畑に害虫をまいたり、『怪盗ロワイヤル』で友達の宝を盗んだり、盗まれたりするわけだ。わたしの場合は、顔見知りでつながっているはずのFacebookよりも、なぜかバーチャルなつながりの多いGoogle+のほうが、冗談関係っぽくなりがちなのではあるが。

 新しくコンテンツが生まれるときというのは、たとえば部族的な土着的な社会が持っていた「人の繋がり」や「習慣」や「縄張り」などが失われて、それを補完するような力が働くときなのだ。古くは「部族」や「血縁」、「宗教」だったものが、Facebookでは、「職業」や「経歴」、「音楽の趣味」に置き換えられたのではないかと思う。

 つまり、SNSのプロフィールは、いわば「家紋」や「お札」や「屋号」が飾られているようなことなのだ。しきたりなどの無形のものが、やっと合理的に表現され始めたのが、いまのネットなのだと言ってよい。


Twitter利用率はmixiに接近
Facebookは約3倍に急増

 アスキー総合研究所では、8月上旬に「MCS 2011」の中間調査を実施した。昨年11月末~12月初旬に行った本調査のアンケート対象者に、新たに約90個の設問に答えてもらった。前回のコラムでは、スマートフォンの利用状況の変化についてお伝えしたが、やはりソーシャルメディアに関しても大きな変化が見られた。

 下の図は、mixi、Twitter、Facebook、Google+について、昨年末のデータと8月の中間調査での利用率を比較したものだ(サンプル数はそれぞれ10,005件と6,300件)。「各SNSのアカウントを所有しているか?」ではなく、「利用しているか?」と聞いたものなので、日常的にアクセスしていない人は基本的に含んでいない。


主なソーシャルメディアの利用率

アスキー総合研究所のメディアとコンテンツに関する1万人調査「MCS 2011」で集計。昨年12月に実施した本調査時に比べて、この8月に実施した中間調査では、Twitter、Facebook、Google+の利用率が大きく伸びている。


 これを見ると、mixiはほぼ横ばいになっている。最近はmixiを更新していないという人の話も聞くが、その一方で新たに利用し始めた人もいるのだろう。また、Twitterの利用率は昨年の17.5%から21.0%と、mixiに迫る値となった。性・年代別に見ても、男女の全世代において、まんべんなく伸びている。

 しかし、この8カ月間に大きく伸びたのは、やはりFacebookだ。Facebookの利用率は、昨年末に3.6%だったのが、この8月には9.9%と、2.75倍にもなっている。また、昨年段階では女性ユーザーの比率が比較的高かったのが、今回の調査では男性30代の利用が最も高くなっている。これは、ビジネスの中で「Facebookを使っておかなければ」というトレンドを感じ、使い始めた人が多いからなのだろう。

 今年6月末にテストサービスを開始したGoogle+についても聞いたが、利用率は1.7%と、事前に予想していた以上の数値となった。MCS 2011の調査は、実人口ではなくネット人口の1万分の1モデルを目指してアンケート回答者を構成しており、また10歳未満および65歳以上を含まない。そのため、この種の項目は実際の人口に対する利用率よりは若干上振れすることが多い。とはいえ、日本でのGoogle+の利用者数は、8月の時点ですでに100万人を超えていたことが予想できる。

 なお、今回の調査では、ビジネスマン向けのSNSである「LinkedIn」についても聞いたが、利用率は0.3%と、クロス集計して分析できるような数にはならなかった。しかし、すでに一定数が利用を始めている手応えがあったと言ってよいだろう。

 2002年に「FriendStar」というソーシャルメディアが始まって、2003年に「MySpace」、2004年にグーグルの「orkut」がスタート。日本では2004年に「GREE」、「mixi」が相次いで開始。2006年にTwitterが生まれ、「Facebook」も学生限定から一般向けとなる。これらは、影響し合い、少しずつメカニズムを変えながら、たったいまも進化しているところである。

 ところで、わたしの場合、FacebookがGoogle+より冗談関係っぽくならないのは、仕事で名刺交換した人を片っ端から友だち承認するという、本来とは異なる使い方をしているからだろう。日本のソーシャルメディアも、まだまだ大きく変化してくのは間違いなさそうだ。

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