ドイツのベルリンに出かけることがあったら、「ドイツ技術博物館」(Deutsches Technikmuseum Berlin)や、IFAという家電ショーの開かれるメッセの敷地内にある「ラジオ塔」を訪れてみるといい。テレビの歴史が米国から始まったと思われている人が多いと思うが、定期的なテレビ放送を最初にやったのはヒトラーだったのだ。テレビとは何かというのを知る手がかりになるものが見つかると思う。
「いまの若い人はテレビ見ない」ということがよく言われる。アスキー総合研究所にも「若者のテレビ離れに関するデータはないか?」というお話を何度もいただいている。たしかに、アスキー総研のデータでも20代は8.8%が「テレビをまったく見ていない」と答えているし、「5分未満」という人も4.1%いる。20代の約10%は、テレビのない暮らしをしているといってよいだろう(下の図1参照)。
大学生に「なぜテレビを持っていないのか?」と聞くと「下宿するときにテレビを買わないのですよ」と言われた。それだったら、32インチでネット契約込みの「0円テレビ」なんてことを、わたしなら考える。しかし、そのように必需品ではないという層が出てきてはいるものの、テレビというのはまだ全体としては若者たちが接しているメディアなのだとも言える。
図2は、先日、あるテレビ関連のセミナーで、まさに「若者のテレビ離れ」に関して紹介させていただいたデータの一部である。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌の4媒体、DVD/Blu-Rayレンタル、ネット動画の視聴時間を性・年代別に集計している。若者がいちばん接していないのは新聞とラジオである。特徴的なのは、40代オタク世代に支えられた雑誌とDVD/Blu-ray Discだろう。
とくに気になるのは20代男性で、1日に平均19分ほどネット動画を見ていることだ。これは20代男性全体の平均値で、「ネット動画を見ている」20代男性に絞った平均では1日に1時間以上にもなる。スマートフォンやソーシャルメディアも20代の利用率が高く、やはりネットが若者たちのテレビ離れの原因となっていると思える。ところが、そのセミナーの後の懇親会で、テレビ業界に長い方に「昔から《若者のテレビ離れ》というのは言っていたのですよ」と言われてしまった。
1人の人間に与えられた時間と空間とお金は限られていて、それをさまざまな生活用件がシェアしている。1970年代までのテレビの黄金時代ならいざ知らず、「ゲーム」がテレビの時間を食ったこともあるし、「携帯電話」がテレビの時間を食ったこともある。「レンタルビデオ」がテレビの時間を侵食していたのもあるだろう。わたしは、その話を聞いていて「テレビ離れ=テレビの視聴時間」とだけ計算していた自分が恥ずかしくなった。
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