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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第64回

KAOSSILATOR×にんげんがっき開発者対談

最近のおもちゃが電子楽器に似ているのはなぜなんだ?

2011年07月09日 12時00分更新

文● 四本淑三

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楽器はできなくても、音で楽しめるものが作りたい

和田 坂巻さんは音楽がお好きでコルグさんに入られたんですよね。ご自分で音楽は作られるんですか?

坂巻 作りますけど、楽器は全然できなくて。曲を作るのもソフトウェアでやっていることが多くて。

和田 楽器を弾かずに、いきなりパソコンで作曲を始めるんですか?

坂巻 高校生のころヒップホップが好きで、カッコいいトラックが作りたかったんですよ。シンセも鍵盤の付いたものを買いましたけど、演奏する練習はしなくて。それで漠然と楽器で遊ぶようにはなったんです。

和田 その視点で色んな新しい商品を開発されたんですね。私の場合、2歳くらいの頃からピアノをやらされていて、バイオリンもずっとやっていて。

坂巻 すごいじゃないですか。

和田 いいえ。嫌々やらされていたんです。親は音大に進んで欲しいみたいな感じで。でも練習がすごく嫌で。テープレコーダーにピアノを練習している音を入れて、大音量で流して、やってるフリをするとか。

「テープレコーダーにピアノを練習してる音を入れて、大音量で流してやってるフリをするとか」(和田さん)

坂巻 わはははは!

和田 それで音楽が嫌いになって、今も全然聴かないです。だけど嫌々ながらも練習したせいで、まあまあ弾けるようになれば、演奏が楽しいのも分かるんです。だからストレスを感じさせずに、ドレミが分からなくても音で遊べる楽しい玩具が作れないかなと思ったんです。

坂巻 楽器演奏じゃなくて「音遊び」ですよね。さんざん演奏をやってきた人が道から外れだすと面白いですよ。まず道に入れなかったんですけど、僕は。練習って続かないんですよね。

和田 たぶんプロになっている人も、最初は親にやらされて始めたのかも知れないけど、そのあとは誰にやれと言われなくても、自分で好きになって続けられないと、ダメなんですよね。

坂巻 楽器を弾ける人って、ああいう困難が好きなんでしょうね。ギターでも上手い人だと、同じコードを押さえても全然音が違う。普段からいい音を出す研究をしていると思うんですけど、そうじゃない人って、そもそもそれができないんですよ。

―― にんげんがっきもKAOSSILATORも、形を見てどう演奏するか分からないですよね?

和田 そうですね。形を見てもどうやって遊ぶのか分からないと思います。

坂巻 それで僕はビデオ作りました。あのころ、「会社で自前ムービーを出すならお金をかけて、かっちりしたものを作る。そうしないと作っちゃダメ」っていう風に言われていたんですよ。でも何とか伝えなきゃというので、こっそり海外のディストリビューター向けに作る資料として、英語の動画を作って配って、YouTubeに上げてもらったんです。

和田 伝統的な楽器の奏法ってあるじゃないですか。新しい楽器でも、やっぱり奏法は重要なんでしょうか?

坂巻 奏法は昔からあったもののほうが有利ですね。

和田 でも、そうじゃない新しいものもありますよね?

坂巻 ありますけど、今までなかった特殊な奏法を要求するものって、だいたいダメですね。テルミンも最初に出たのが1919年だと思うんですが、そこから90年かかって今くらいの普及度ですから。普及した電子楽器も、やっぱり鍵盤が付いていたりして。日本で普及しているウインドシンセサイザー(管楽器タイプのシンセサイザー)も、運指がアルトリコーダーと同じなんですね。アルトリコーダーが教材として盛り込まれたのは日本だけなので。そういう馴染んでいる奏法にどれだけ近いかは、すごく大きい。やっぱり弾ける力って強いんですよ。

和田 「この楽器を制覇したぞ感」なんですかね。

坂巻 そういう達成感は大きいでしょうね。おもちゃの世界も、昔からある伝統的なものがたくさんあると思うんです。

和田 うちの会社で言えば、トミカやプラレール、リカちゃんなんかですよね。

坂巻 そこから新しい遊びを模索していく中で、音の方向に来ているのはおもしろいなと思うんですよ。

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