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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第64回

KAOSSILATOR×にんげんがっき開発者対談

最近のおもちゃが電子楽器に似ているのはなぜなんだ?

2011年07月09日 12時00分更新

文● 四本淑三

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楽器はコミュニケーションデザインである

―― にんげんがっきも新しい楽器で奏法も普及していないんですが、ゲーム的な要素で演奏をアフォードしているところが新しいと思いますよ。

坂巻 あ、そういえば。こないだある大学で楽器のインターフェイスに関する講義をやったんですけど、演奏者が楽器と対峙し、音が鳴り、その音に影響されて演奏が変わる。さらに、その音を観客に向けて出しているという関係にある。普通の楽器であればその関係は壊れていないんですけど、演奏しなくても良い楽器ができちゃったんで、その関係が壊れちゃったんですよ。

―― 人と楽器と音のインタラクションですよね。

坂巻 うちの製品の「M1」というキーボード1台で曲が作れるようになった。その時点でシンセサイザーって演奏するものじゃなくなったんですね。それが2000年以降、ヤマハのテノリオンとか、ビヨークが使っている「reacTable」(関連記事)とか、電子楽器で演奏を分かりやすく見せようという流れができた。にんげんがっきもそういう流れの中にあるんじゃないかなと。音と肉体を再びつなげているというか。

「reacTable」。テーブル上のブロックを動かして演奏する

和田 アナログ回帰ということですよね。そういう新しい楽器史みたいなものは、ご自分で勉強されたんですか?

坂巻 今まで漠然と調べていたものをまとめてみたんです。過去にこういうのものがあった、こうだったから良かったというのがあって。そしたらすごく面白かったですね。楽器のインターフェイスデザインの話は、コミュニケーションデザインの話ですね。

和田 そういえば、うちの会社の元上司の家に遊びにいったときに、他の社員のお子さんがたくさん来ていて、その子供同士初めて会うんですけど、みんなDSを持ってきていて、DSを介して通信をやろうよということで、すぐに仲良くなれるんですね。

―― ああ、ゲーム機って、子供同士の遊びとしては寂しいなと思っていたんですけど、そんなことないんですよね。

和田 大人の場合はスマートフォンだったりするのかもしれませんが、顔を合わせなくてもコミュニケーションが取れて、仲良くなれる。でもこれ(にんげんがっき)は直接触れ合わなければならない。もうずっと遠ざかっていたところにあった、人に触れるのもアリだったのね、という発見の目新しさなんじゃないかなと思います。

坂巻 同じ方向を向いている感じのコミュニケーションというのかな。ツイッターを見ていてもそう思うんですが、向かい合うんじゃなくて、お互いおんなじ方向を向いている感じですよね。タイムラインから面白いものがあると、ちょっとつまんでRTするみたいな。そういうコミュニケーションじゃないですか。こういう向かい合ったコミュニケーションって、最近ないですよね。

―― にんげんがっきは使われるシチュエーションを読みきっていて、ゲーム性の観点から音も選んである。そこが坂巻さんのやっている楽器のデザインと違うところかと思っていたんですが、実は同じかも知れませんね。

坂巻 楽器を作るときも、楽器と人のコミュニケーションはどうあるべきかを考えているんで、一緒ですよね。そういう時にインターフェイスとして使いやすさ、みたいな話になりがちなんですが、コミュニケーションどう作れば楽しいか、どういうふうに人の感情が動くかということを考えているので。それに、音で遊ぶこと自体が面白くなるように作ってあるという意味でも、変わらないと思います。



著者紹介――四本淑三

 1963年生まれ。高校時代にロッキング・オンで音楽ライターとしてデビューするも、音楽業界に疑問を感じてすぐ引退。現在はインターネット時代ならではの音楽シーンのあり方に興味を持ち、ガジェット音楽やボーカロイドシーンをフォローするフリーライター。

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