VNXeでまず注目したいのは、ハードウェアとしての素性のよさだ。これは信頼性と性能を最適化するためのリッチなスペックだけではなく、筐体自体のこだわりなどにも現れている。
既存のSMBストレージを
大きく凌駕するハードウェア
VNXeと既存のSMB向けストレージを比べると、まずハードウェアが完全に異なる。今回はこの部分をチェックする。
そもそもボックス型ストレージはコンシューマ製品のパーツを採用することで、低廉な価格を実現してきた。CPUは最近でこそAtomプロセッサーやCore 2 Duoが利用されているが、一昔前は組み込みCPUが中心であった。HDDやメモリも、コストパフォーマンスの高いものを使っているのが一般的だ。
これに対してVNXeは、CPUにマルチコアのインテルXeonプロセッサー(Xeon5000系世代)を採用している。VNXe3100で2コアの1.74GHz CPU、VNXe3300で4コアの2.13GHz CPUが搭載されている。比較するまでもないが、省電力メインのAtomプロセッサーに比べれば、処理能力は桁外れで、省電力性能や信頼性などもピカイチだ。また、メモリ容量もVNXe 3100で4/8GB、VNXe 3300はなんと最大24GBと非常に大容量まで搭載できる。さらにハードディスクも安価なSATAではなく、エンタープライズクラスの6Gbps SASを採用する。高速SAS HDD(300/600GB)のほか、やや低速ながら容量の大きいニアラインSAS(NL-SAS)HDD(1/2TB)も選択でき、将来的には高速なフラッシュドライブもサポートする予定だ。こう見ていくとSMB向けストレージがセダンだとすると、VNXeは完全にレースカー仕様だということがわかる。
もちろん価格が違うといえばそれまでだが、ハードウェア面での優位点は絶対に揺るがないポイント。こうしたリッチなハードウェアは、同時アクセス数の増加やRAIDのリビルド時、あるいはGUIの操作時などに、そのありがたみを実感するに違いない。
クラスター前提の堅牢な構成
VNXeは、既存のボックス型NASやPCサーバーと異なり、ハードウェア構成が冗長化前提のモジュール構成となっている。
写真のとおり、VNXeのデュアルコントローラーモデル「VNXe 3100」では、エンクロージャの背面に2つの「ストレージプロセッサーモジュール」と2つの電源モジュールを、そして前面にディスクが装着された形で構成される。
ストレージプロセッサーモジュールと電源モジュールはそれぞれ冗長化されており、クラスター構成が組まれている。両者は内部的にバスで相互接続されており、一方のストレージプロセッサーモジュールに障害が起こると自動的に他方に自動フェイルオーバーする。実際にストレージプロセッサーモジュールや電源モジュールを抜いてもらったが、1分とかからず、もう一方にフェイルオーバーした。
また、アクティブ・アクティブのクラスター構成なので、処理は2つのコントローラーに分散される。クラスター構成は障害時の可用性を高めるだけではなく、性能を向上させるのにも一役買っているわけだ。
このようにディスクはもちろん、コントローラーや電源、ネットワークなどあらゆるコンポーネントの冗長化に対応しているのが、既存のSMB向けストレージとの大きな違いといえる。
企業向け製品でも外見にもこだわりが
実際のVNXe 3100を見てみると、作りの丁寧さがあちこちに見える。たとえば、前面のベゼル1つとってみても高級感が漂っており、他社のSMB向け製品のように「ちゃちくない」のが見て取れる。黒と灰色のカラーリングに、鮮やかな青色LEDというのは、同社のハイエンドストレージSymmetrix VMAXとも共通したイメージで、EMCストレージであることを実感できる。
前面のベゼルを外すとディスクドライブが並んでいるのが見える。2UのVNXe3100で3.5インチドライブが12台、3Uの3300では15台まで搭載できる。もちろん、ホットスワップでの交換が可能で、障害時でも無停止での運用が実現する。
ストレージプロセッサーモジュールと電源モジュールは背面から挿入可能だ。ストレージプロセッサーモジュールはいわゆるコントローラーとして動作するストレージの心臓部。CPUやメモリはもちろん、キャッシュを保護するためのバッテリやSSDなども搭載されている。ここらへんは、エンタープライズレベルのフィーチャーといえる。
ストレージプロセッサーモジュールに搭載されているネットワークも冗長化されており、しかもマネージメントポートと通常のサービスポートが物理的に分離されているのが特徴的だ。物理的に分類されていることでセキュリティ的に管理用のコマンドを守れるという点、さらにサービス向けのLAN、管理向けのLANで分けられる点がメリットとなっている。
このようにVNXeの1つの魅力は、SMB向けとしては贅を尽くしたといえるハードウェアにある。障害に強く、高いパフォーマンスを発揮するための骨格や足腰自体が低価格な製品と根本的に違っているわけだ。次回は、さっそくSMBで敷居の高いとされている初期導入について説明する。
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