拡張性、可用性、信頼性、そして仮想化対応は果たして満足?
SMB向けストレージの不満を払拭するVNXe
2011年07月04日 09時00分更新
SMB(Small and Medium Business)向けストレージを謳うEMCの「VNXeシリーズ」。製品の中身を知れば知るほど「SMB向け」では収まらない製品の魅力、EMCの本気度が見えてくる。
SMB向けストレージの4つの課題
従来、日本企業の大半を占めるSMBにおいては、重要なデータは安価なボックス型NASやPCサーバーに格納されてきた経緯がある。これら既存のSMB向けストレージは、RAIDやデータ保護の仕組みを備え、数10TBを超える容量を実現しており、使い勝手もよい。そしてなにより低価格だ。しかし、長らく製品を使っているユーザーの中には、ボックス型NASやPCサーバーの限界に気が付いているユーザーも多いはずだ(図1)。
まずボックス型ストレージは拡張性に限界がある。そのため、容量を増やそうとすると、筐体自体を増やさなければならない。台数が増えると管理の手間は増え、スペースや電力を消費し、トラブル時の対応も難しくなる。少なくとも8台を超えるHDDを搭載しようと考えれば、ラックマウント型ストレージの導入を検討したいところだ。
また、データの保護も十分ではない。SMBストレージでもRAIDをサポートしているため、ローカルでのデータ保護機能は持っている。しかし、操作ミスやウイルス感染によって削除されたファイルや、RAIDのリビルド中の電源障害で消失したデータを復旧するのは難しい。もちろん、安価な製品は、キャッシュの保護や災害対策の機能も搭載していない。本格的なビジネスで用いるストレージとしてはやや不安を感じてしまうはずだ。
データに常時アクセスする可用性という点にも疑問が残る。多くの製品にはホットスワップの仕組みがあるため、オンラインでのHDD交換は可能だ。しかし、RAIDコントローラーや電源、ファンの故障などはオンラインで対応できない。バックアップ機器を用意するか、部品を交換するか、いずれにせよサービスを停止しなければならない。もちろん、RAIDのリビルドやデータのリカバリにも、多くの時間が費やされることになる。
仮想化への対応にも弱点を抱えている。サーバーの仮想化はすでに一般的となっているが、SMB向けストレージでVMwareやHyper-Vのデータストアとして使える製品は少ない。
こうしたSMB向けストレージの課題を解決すべく、ストレージ専業ベンダーのEMCが開発したのが「VNXeシリーズ」である。
SANもNASもOK!
使いやすくて低廉なVNXeとは?
VNXeは、2011年1月に華々しくデビューしたEMCのユニファイドストレージ「VNXシリーズ」の弟分にあたる。ユニファイドストレージとは、NASでもSANでも使える汎用ストレージを指しており、ファイル共有プロトコルのCIFS/NFSはもちろん、EthernetでSCSIを運ぶiSCSIなどのSANプロトコルにも対応する。つまり、ファイルサーバーとしても、LANを介したブロックストレージとしても使えるわけだ。
VNXeは2Uラックマウント型の「VNXe3100」と3Uラックマウント型の「VNXe3300」の2機種が用意されており、3100はシングルコントローラーのモデルも用意されている(図2)。SMB向け製品としてはハードウェアが非常にリッチで、拡張性や性能面、信頼性でも死角がない。また、ソフトウェア面でもミッドレンジクラスの製品で搭載されている先進的な機能がふんだんに取りこまれている。
こうしたVNXeの大きな特徴として、専門知識を必要としない使いやすさが挙げられる。GUIの管理ツール「Unisphere(ユニスフィア)」からウィザードを起動することで、NASの共有環境はもちろん、iSCSIボリューム、仮想化向けのデータストアなどを容易に作成できる。機能面においても、スナップショットやレプリケーションなどデータ保護機能やシンプロビジョニング、重複除外など従来ミッドレンジストレージにしかなかった高度な機能が惜しげもなく搭載されている。
そしてコストに敏感なSMBのマーケットに向け、高いコストパフォーマンスを実現しているのも大きな特徴だ。VNXe 3100のシングルコントローラモデルで100万円を切るという価格(ストレージ・プロセッサー、300GB SASドライブ6本。サポートは含まない)は、これだけ高度でリッチなハードウェアを採用したストレージ製品としては破格の安さといえる。用途や容量にあわせて数十万円台のボックス型のストレージを何台も買うより、性能面も拡張性もピカイチなVNXeを100万円前後で導入した方が、確実に投資対効果が高いと言い切れる。
拡張性、信頼性、仮想化対応
さまざまな課題をVNXeが解決
では、このVNXeは従来のSMBストレージの課題をどのように解決してくれるのだろうか?
まず、VNXeではSMB向けでありながら扱える容量が既存のSMBストレージと比べて格段に大きい。VNXe3100/3300とも増設用のエンクロージャを用いることで、最大192/240TBという大容量を実現する。ハードウェアも余裕を持った構成であるため、容量が増えると共に性能面が劣化するということは起こりえない。
データの保護という面では、二重障害に対応し、高信頼性を持ったエンタープライズレベルのRAIDを実装するほか、スナップショットやローカル・リモートのレプリケーションの機能を搭載する。また、キャッシュデータの保護も実現しており、他のSMBストレージと大きな差を付けている。
可用性という面では、プロセッサーやRAIDコントローラー、ネットワーク、電源の冗長化に対応している点が挙げられる。また、VNXeを制御するソフトウェアに関しても、ストレージ専業ベンダーであるEMCならではの品質が保証されている。
そして、仮想化への対応も大きな魅力だ。仮想化においては、複数台のESXサーバーでストレージ(データストア)を共有する構成が多い。VNXeではこうしたデータストアの作成や仮想マシンへの登録をGUIから容易に行なえる。
ここまで聞いて、VNXeに興味を持ったり、あるいはその実力に疑問を持ったユーザーも多いだろう。次回以降では、「SMB向けの皮をかぶったエンタープライズストレージ」ともいえるVNXeの真価をしかと見ていただこう。
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