このページの本文へ

EMCのSMB向けストレージ「VNXe」徹底解説 第5回

ユーザーのデータきちんと守る機能が満載

VNXeではデータ保護も本格派だった

2011年07月19日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 記事協力●EMCジャパン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

VNXeでサポートしているのはHDDの故障に対応するRAIDだけではない。スナップショットやレプリケーションなど、ニーズに合わせた幅広いデータ保護機能を搭載しているのが売りだ。

ますます重要なデータ保護
RAIDも自動設定

 ストレージの大きな役割は、単にデータを保存するだけではなく、ユーザーのデータを保護することだ。

 ストレージは、HDDや電源、RAIDコントローラーなどのハードウェア障害、自然災害や停電、あるいは管理者やユーザーの誤操作など、あらゆる事態を想定し、データの保護に努めなければならない。これに対してVNXeでは、SMB向けでありながら、エンタープライズモデルに引けをとらない充実したデータ保護機能を満載している。

 まずHDDの故障に関してはRAIDやデータバックアップで対応する。RAIDは複数のHDDを束ねて1つのディスクアレイに見せかける技術だが、データを保護するための冗長性を持っているため、HDDの障害にも対応できる。

 RAIDはデータ保護機能としては非常にポピュラーで、一般的にストレージといえば、「RAID対応の外付けディスクアレイ装置」を指すといってもよい。当然、多くのSMB向けストレージがRAIDに対応しており、VNXeでもRAID5/6/10など主要なRAIDレベルをサポートしている。

 VNXeでは、容量や可用性、性能にあわせプールのRAIDレベルを自動的に調整する機能を持つ。性能と容量のバランスをとった「パフォーマンスプール」、容量を最大にした「容量プール」、読み書き速度を最大にした「高パフォーマンスプール」の3つから選択すると、RAIDレベルが自動設定される。

 また、キャッシュデータの保護機能もVNXeならではの特徴だ。VNXeでは、2つのコントローラー間でキャッシュを同期させるほか、シングルコントローラーでも専用のメモリでデータを保護する。停電時、電源供給が停止した場合は自動的にデータをフラッシュメモリに待避させる。

特定時刻のファイルイメージを
取得するスナップショット

 また、特定時刻のファイルシステムのイメージを保存するスナップショットもサポートしている。データ自体を保存するのではなく、ポインタと呼ばれるデータの位置情報のみを取得するため、瞬時に終わるのが大きな特徴だ。

 スナップショットを用いると、ウイルス感染やデータ障害、誤操作によるファイル削除があっても、スナップショットをとった時点にまで復元することが可能になる。従来、スナップショットをサポートしているストレージは高価だったが、VNXe 3100では標準でこのスナップショットを搭載している(VNXe 3300はオプションライセンス)ため、手軽に利用できる。

 スナップショットは、NASやiSCSIなどボリューム作成のウィザードでも設定でき、スナップショットの領域も自動的に確保される。ここでは共有フォルダのスナップショットをとるように設定していこう(画面1~3)。まずは「ストレージ」メニューの「共有フォルダ」-「共有フォルダの詳細」で「今すぐスナップショットを作成」ボタンを押し、ウィザードを起動する。あとは名前と保持期間を設定し、OKを押せばスナップショットの作成はあっという間に完了する。また、「保護の変更」というボタンを押せば、スナップショットの取得をスケジュールに従って行なうよう設定できる。

画面1 「今すぐスナップショットを作成する」のウィザードを起動

画面2 スナップショットはポイントのみ取得するので、非常に高速

画面3 スケジュールに従ってスナップショットを取得することもできる

 さて、実際の復旧手順だが、ユーザー側のWindows PCからNASで共有されたフォルダを選択し、右クリックの「プロパティ」で「以前のバージョン」というタブを選択する(画面4)。ここには以前のスナップショットが時系列で並んで表示されているので、戻したい時点を選択し、「復旧」ボタンを押せば復旧が実行される。

画面4 NASの共有フォルダからデータを復旧

災害対策としても有効な レプリケーション

 さらに、複数台でデータを同期させるレプリケーションという機能もある。VNXeでは同一筐体内でのローカルレプリケーションと、WANを介したリモートレプリケーションをサポートする。地理的に離れたリモートサイトにVNXeを設置しておき、リモートレプリケーションを設定しておけば、災害対策として有効だ。メインのシステムがダウンした際には、リモートサイトのVNXeからいち早く復旧できる(画面5)

画面5 ローカルレプリケーションとリモートレプリケーション

 レプリケーションの設定は、基本的にソース(コピー元)とターゲット(コピー先)を指定しておけばよい。これにより、ターゲットへの書き込みはできるが、ソース側への書き込みが不可となり、データのコピーが始まる。転送タイミングは60分間隔の差分同期で、ファイルではなく、更新されたブロックのみを転送するため、ネットワークにはあまり負荷はかからない。

 リカバリも簡単で、「レプリケーション」の「フェイルオーバー」ボタンを押せば、書き込みの方向が切り替わり、フェイルオーバーが実現する。すなわちターゲット側への書き込みが可能になり、ソース側への書き込みが不可になる。フェイルオーバー前に同期するかなどもチェックできる。

 なお、遠隔地へのリモートレプリケーションはオプションになっており、「リモートプロテクション・スイート」というソフトウェアを別途導入する必要がある。

 RAIDにとどまらず、スナップショットやレプリケーションなどVNXeの多彩なデータ保護機能は、他のSMB向けストレージと比べ大きなアドバンテージである。

■関連サイト

カテゴリートップへ

この連載の記事