理想と現実の乖離
製造コストの高さといまいちな性能
RIMMの登場によりRDRAMはPC用メモリーとしての道が開けた。1996年にインテルとRambusはライセンス契約を締結。これに基づき、インテルはまず1999年に、「Pentium III」向けの「Intel 820」チップセットシリーズを、ついで「Pentium 4」向けに「Intel 850」シリーズを2001年にそれぞれリリースした。もっとも、ここからの道のりは必ずしも、インテルとRambusの想定したとおりには進まなかった。
まず最初に立ちふさがったのは、実装の難しさだった。さきほどは「回路技術や実装技術を最適化する」とさらりと流したが、理論上はともかくこれを実現するのは一苦労であった。当時のマザーボードメーカーの技術は、100~133MHz辺りまでの信号は問題なく扱えたが、いきなり800MHzまで信号速度が上がったことで、問題が続発した。
これは単に設計ツールが対応していないだけでなく、部品の品質やばらつき、基板そのものの材質とそのばらつき、さらに製造方法など、おおよそ考えうるすべての項目が800MHz動作には不適当だった。この結果、4層基板ではマザーボード製造が不可能となり、当時としては高品位な部品となる6層基板の利用が不可欠になる。
6層基板のマザーボードは当然ながら、SDRAMを使った同等のマザーボードとと比べて、1万円以上高価になった。「たった1万円?」と思うかもしれないが、SDRAM対応マザーボードが1万円そこそこで買えた時代だから、値段はほぼ倍となる。
さらにRIMM自体もまた高価だった。1999年末の実売価格は以下のようになっていた。この価格差でRIMMを買いたいと思う人は、まずいないと言っていいだろう。
1999年末のSDRAM DIMMとRIMMの価格 | |||
---|---|---|---|
SDRAM DIMM | RIMM | ||
PC133 CL3 128MB | 2万円弱 | PC800 128MB | 9万3000円前後 |
PC100 CL2 128MB | 1万6000円前後 | PC700 128MB | 5万円弱 |
RIMMの高値安定はその後も続いたため、初期のPentium 4には「CPUパッケージにRIMMが無料で付属する」というセット販売が行なわれたほどだ。それでも普及は進まなかった。
もうひとつの問題は、肝心の性能が出ないことだ。特にPentium III向けのIntel 820でこれが顕著だった。800MHz駆動のRIMMを搭載したIntel 820がしばしば、PC100 SDRAMを搭載したIntel 440BXに劣る性能しか出ず、PC133 SDRAMを搭載したオーバークロック動作のIntel 440BXには完敗するといった状況に陥った。
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