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松村太郎の“モバイル・ネイティブ”時代の誕生を見る 第16回

10年間のモバイルのいい経験を活かす ―KDDI高橋 誠氏に聞く

2011年03月10日 12時00分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

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ソーシャル時代、フリー×マイクロペイメントに見る
将来のモバイルビジネス像

――2010年以降、ソーシャルメディアがモバイルとひもづいて盛り上がりを見せるのは世界的な流れになっていますね。

 日本では現在の30代が大学生だった頃にモバイルネットが出始め、そしてスマートフォンをフル活用している中心の世代だと考えています。その前後の世代をどう取り込んでいくのか、というのは課題になっていると言えます。

 30才以下の世代、いま活発にモバイルとソーシャルのリアルな世代に属している大学生の使い方は本当に違っていて、日々発見があります。結論から言うと、彼らの世代は「放っておいても自分たちで問題を解決して自由に使いこなす」と感じています。

 私の娘も大学生ですが、IS03を買ってきて、基本的には自分と友人で問題解決をしています。いとこがSkypeを設定して使えるようにしてくれて、試験前にSkypeでチャットをしながら友人と勉強していたり、バッテリを長持ちさせようとしてネットで調べて対処したり、彼らのコミュニケーション能力や情報力は、私の想像を超えています。ものすごいスピードで、自由に伸びていくという感覚でしょうか。

 ただオープンな世界だからこそ、子供たちに対して、プライバシーを守ったり、悪い世界に入り込まないようにする取組みが必要です。これはスマートフォンに限らずフィーチャーフォンでも重視しなければならないポイントで、安心して使えることは、さらに重要なポイントになっていくでしょう。

――上の世代についてはどのような取組みが必要だと考えますか?

 そこで「jibe」のような、個人のコミュニケーションの統合環境への必然性を感じています。電話帳の情報は、電話番号からメール、Twitter、Facebookと増え続けているので、これをまとめるアプリが1つ必要になるでしょう。

jibeはmixiやTwitterなど多様なSNSに対応し、電話帳に登録した知人やSNS上の有名人などを一括して管理できる

 もちろん、jibeはすべての世代のユーザーが便利に使えるアプリですが、特に上の世代には重宝がられると考えています。これまでは携帯電話には電話帳があり、会社のデスクに名刺ホルダーがあり、家に帰ると同窓会名簿があり、リアルなソーシャルグラフは断絶していました。モバイルとソーシャルの時代、手元でソーシャルグラフが構築されてメンテナンスできるべきだし、その先には、構築したソーシャルグラフの信頼性を高めていくことも重要だと考えています。これは子供たちが安心して使える環境作りにも当てはまります。

――最後に、モバイルビジネスのモデルのあり方はどう変わっていくと考えていますか?

 よく「若い人ってお金を使う?」と聞かれることがあります。統計を見るとあまりお金を使わなくなったというデータもあるのですが、若い人は自分にとって価値がある物にお金を払う傾向があります。たとえば自分が好きなアーティストにはお金を使うが、それ以外には使わないといった具合です。フィーチャーフォンではマス向けにユーザー数を集めるビジネスを行なってきましたが、そうではなく個人個人の価値観の明確化、多様化に合わせた方向性に転換する必要があります。

 そのキーとなるのは、フリーミアムとマイクロペイメントの併用モデルと言えるでしょう。無料の会員を集めてコミュニケーションの素地を作る。 コミュニケーションの入口は、これまでのau oneのトップページではなく、mixiやGREEかもしれないし、TwitterやFacebook、あるいはfoursquareかもしれません。 その上で、彼らが価値を感じるものを発見して少額課金をしていく。最初から月額課金でマネタイズするフィーチャーフォンのやり方からは移行していかないと、生き残っていけないのではないかと思います。

 とにかくオープンな世界にものすごいスピードでチャレンジする、そこに乗り遅れてはならない、と思っています。

――本日はありがとうございました。


筆者紹介──松村太郎


ジャーナリスト・企画・選曲。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。嘉悦大学、ビジネスブレイクスルー大学でも教鞭をとる。テクノロジーとライフスタイルの関係を探求。モバイル、ソーシャルラーニング、サステイナビリティ、ノマドがテーマ。スマートフォンに特化した活動型メディアAppetizer.jp編集長。自身のウェブサイトはTAROSITE.NET


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