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ASCII.technologiesベストセレクション 第2回

POWERプロセッサーとPower Systems、AIXの聖地

最先端の技術を生み出す米IBM研究所

2011年01月25日 09時00分更新

文● アスキードットテクノロジーズ編集部

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オースティンラボも特別取材

 米IBMオースティン事業所には、研究所(Research)だけでなく、Power Systemsなどのシステムをテストしているラボ(Laboratory)も併設されている。ラボでは、新製品のテストや新しい拡張カードとドライバーのテスト、ハードウェアの組み合わせ検証や、顧客から上がってきた不具合の検証などを行なっているという。

 今回は特別に、このラボのほんの一部だがテスト作業場を見学する機会を得た。残念ながら撮影許可が下りなかったが、雰囲気だけでもお伝えしておこう。

 ラボが併設されている施設は、今回訪問したエグゼクティブブリーフィングセンターの道路を挟んで反対側にある。といっても、移動には車で5分程度の時間がかかる。オースティン事業所全体が、日本では考えられないぐらいの広さなのだ。

 施設内に入ると、まず巨大なレクリエーション施設が目に入る。ここには、ビリヤード台やテーブルサッカーゲームが置かれるなど、ラボとは思えない和やかな雰囲気が漂っている。そして、その奥にラボがあった。

 厳重なIDチェックを抜けてラボに入ると、轟音が轟く。あたりかまわず置かれている、さまざまなマシンのファンや空調の音だ。そして、多数のパーツが置かれているのに驚く。デスクの上にはPOWER7のモジュールが多量に置かれていたり、インターフェイスカードが重ねて段ボールに詰められている。ラボというよりは、いかにも実験室という感じだろうか。そして、作業をしている人は十数人しかいない。

 おもしろいのは、プロセッサーや拡張カードの抜き差しがしやすいように、ラックにマウントされているマシンのマザーボードといった基板が、ラックの横に設置されたデスクの上に引き出された状態で稼働していたことだ。PCなどではテストのために、こうした構成を見ることもしばしばある。だが、ラックに設置されているエンタープライズサーバーも、このような形でテストしているのには衝撃を受けた。

 それぞれのエリアで、どのような作業を行なっているかの説明を受けたあと、ひと際目立つ大きなラックの前に移動する。通常の19インチサーバーラックを、前後左右に1.5倍拡げたような巨大なラックが数台設置されているエリアだ。このマシンは、超並列マシンのプロトタイプで、現在出荷前のテストを行なっている段階だという。処理能力やノード数など、詳細についてはいっさい教えてもらえなかったが、見た限り1000台以上のノードが1つの筐体に納められているようだった。

米IBMロチェスター研究所

 今回もう1つ訪問したのが、米IBMロチェスター事業所にある研究所だ。同事業所は、米中北部(米国地域としては中西部)、カナダとの国境に接するミネソタ州ロチェスターに位置する。ロチェスターは、ミネソタ州の南東に位置する人口約10万人のとても小さな町である。

米IBMロチェスター事業所にある創業当時のロゴモニュメント。いまのIBMのロゴとは形が違うことがわかる

 このロチェスターは、医療施設とハイテク企業によって支えられている。特に、ホテルなみの設備を誇るメイヨー・クリニックは、米国の歴代大統領や各国のVIPが治療を受けたことで知られる著名な医療機関だ。一方、ハイテク企業を代表するのが米IBMロチェスター事業所である。ちなみに、最大の雇用はメイヨー・クリニックで、次いでIBMロチェスター事業所が担っているという。

 同事業所は、1956年に174人でスタートし、現在では4400人の従業員を擁するIBM最大の施設となっている。世界数カ所の製造工場のうちの1つであり、その敷地面積はなんと32万5000m2、東京ドーム約7個ぶんにも達する広さだ

オフィスは櫛形にみなつながっている。全体が見渡せない広さだ。駐車場エリアだけでもものすごい。移動するだけでもたいへんだ

 ロチェスター事業所は、IBM i(旧AS/400や旧System i)の開発・製造の拠点となっている。さらに、Powerアーキテクチャを採用したスーパーコンピューターとして知られる、Blue GeneやRoadrunnerの製造も行なっているそうだ。同事業所のエグゼクティブブリーフィングセンターには、Blue Jeneのノードが展示されていたことからも、その事実が窺える。

 また同事業所は、米大統領から品質改善と、そのための優れた経営システムを有する企業に贈られる、マルコム・ボルドリッジ国家品質賞を1990年に受賞している。

展示されていたスーパーコンピューター“Blue Gene”の筐体。2009年にオバマ大統領から米国家技術賞を受賞したマシンの一部

(次ページ、「Linux on Powerとは?」に続く)


 

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