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ASCII.technologiesベストセレクション ― 第2回

POWERプロセッサーとPower Systems、AIXの聖地

最先端の技術を生み出す米IBM研究所

2011年01月25日 09時00分更新

文● アスキードットテクノロジーズ編集部

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IBMのUNIX OSであるAIXとRISCプロセッサーであるPOWER7やPower Systemsの開発拠点である米IBMオースティン研究所と、オフコン向けOSであるIBM iを開発している米IBMロチェスター研究所を取材する機会を得た。今回はこのレポートをお届けしたい。

つぎつぎに新製品を投入するIBMの研究部門とは?

 2010年2月9日に発表されたIBMのPOWER7は、世界最高速の汎用プロセッサーとして話題となった。また、同日発表されたPOWER7プロセッサーを搭載するPower Systemsは、これまでにないスケーラビリティとアベイラビリティを提供するエンタープライズシステムである。

米IBMオースティン事業所のエグゼクティブブリーフィングセンターのエントランス。道路を挟んだ反対側にラボがあるが、目と鼻の先というわけではない

 こうした新製品をつぎつぎに投入するIBMの研究部門は、いったいどんなところなのだろうか。そこで、開発をリードする米IBMオースティン研究所と同IBMロチェスター研究所の両エグゼクティブブリーフィングセンターで、チーフアーキテクトやフェローの称号を持つエンジニアを取材した

POWERも開発するIBMオースティン研究所

 オースティンは米国南西部、メキシコ国境に接するテキサス州の中央に位置する人口78万人の小さな州都だ。だが一方で、IBM研究所をはじめとして、AMDの開発拠点・製造工場やフリースケール・セミコンダクターとデルの製造工場、さらにはサムスンの新しい製造工場の建設が予定されているなど、ハイテク企業が集中していることでも知られている。また工学部が有名な、5万人の学生が学ぶテキサス大学オースティン校(The University of Texas at Austin)も有する。

POWER5プロセッサー(2004年発表)のシリコンウェハー。IBMオースティン事業所の成果物のいくつかが、このようにIBMオースティン研究所のエグゼクティブブリーフィングセンターに展示されている

 このオースティンに居をかまえるのが、IBMオースティン事業所である。6000人以上の従業員を擁し、システム製品やソフトウェア製品を中心に、Tivoli本部を含む30以上の部門からなる研究開発拠点だ。そして、POWER7プロセッサーとPower Systemsの研究開発の拠点であるIBMオースティン研究所も併設されている。ちなみに、同社は2009年に4914件の特許を取得しているが、このうち880件はこの事業所の研究成果だという。

 最初はここIBMオースティン研究所のエグゼクティブブリーフィングセンターで、同研究所の技術開発をリードするIBMフェローを取材させていただいた。

IBMの仮想化への取り組み

IBMフェロー兼チーフ・バーチャライゼーション・テクノロジストのジム・リマージック(Jim Rymarczyk)氏

 ここでは、チーフ・バーチャライゼーション・テクノロジストであり、IBMフェローでもあるジム・リマージック氏に話を聞いた。同氏は仮想化を専門に研究しており、仮想化技術の第一人者でもある。

 リマージック氏によると、今日の顧客がもっとも求めているのは、コストダウンだという。ITを管理するコストが著しく高くなる一方、世界的な金融危機によってコストダウンは避けられなくなっている。しかしながら、データの爆発的な増加は止まらない。こうした問題を解決するのが、IBMの仮想化テクノロジーというわけだ。

 同氏は仮想化を導入することで、すべてのITプロセスと、ITの計画コストが変わってくると強調する。まず、ハードウェアの効率化が挙げられる。次に、管理ソフトウェアの効率化。そして、ネットワークの効率も上がるという。

 仮想化でハードウェアの効率化が実現するのは、当然といえば当然だ。管理ソフトウェアの効率化も、わかりやすい。では、ネットワークの効率が上がるというのは、どういうことなのだろうか。同氏が指摘するのは、仮想マシンが同じハードウェアで実行されるのであれば、マシン間の通信に物理的なネットワーク(イーサーネット)を使う必要はないという点だ。通信自体がマシンのメモリ上で完結するため、高速な仮想ネットワークが実現する

 こうした技術によって、今後ITの世界に大きな変化がもたらされるだろうと、同氏は未来のビジョンを語る。ITのインフラというのはモジュール形式で、ビルディングブロックで拡張できなければ価値はなくなる。そして多くのベンダーは、現在の製品がその域に達しているというが、それは間違いだと指摘する。今後のIT製品は、エネルギー配分を自動化し、省電力化して新しい価値を提供しなければならないというのである。

 同氏は、「ITをリエンジニアリング」する必要があると続ける。従来のITは構成も複数あり複雑で、縦割りの構成ゆえ個別に管理しなければならなかった。またハードウェアを変えると、OSやミドルウェアも変更しなければならなくなる。これは、ハードウェアにワークロードが結合しているがゆえに起こる問題だ。

PlayStationの父、ソニー・コンピュータエンタテインメントの久夛良木健氏から送られたPlayStation 3。同氏をはじめ、東芝の室町正志氏やIBMの開発チームなど、300名ものサインがなされている。右下は同機に搭載されているCell Broadband Engine

 だがITの未来では、これが大きく変わるという。拡張性の高いシステムで、たくさんのワークロードを動かせるようになる。そして、それは1つのシステムに見えるものだというのだ。「未来のインフラは、巨大なクラウドや巨大なデータセンターではなく、大きなシステムプールになる」(同氏)。

 こうした世界を実現するのが、IBMの仮想化技術であると断言する。Power Systemsには、すでにシステムとして仮想化が内蔵されている。これが、新しい選択だというわけだ。「IBMの仮想化技術は、IBMがメインフレームで作り、Power Systemsに内蔵され、いまではx86でも使えるようになった」と、仮想化技術をIBMがリードしていることをアピールした。

 「IBMでは、これからもスケーラブルなシステムの提供を続ける。そして、1台あたりで実行可能な仮想マシンの数を増やしていく。すると、今度はメモリが足りなくなるだろう。そこで、さらに大容量のメモリを搭載できるようにしていく」と今後の展望を語る。

 最後に、IBMの次世代のプロセッサーについて、「POWER8は、かなり設計が進んでいる。もちろん、その次にくるPOWER9のコンセプトも考えはじめられている」と、将来のロードマップを約束した。

8個のLEDで回転するIBMのロゴ。マイクロチップ・テクノロジーの2つのPICマイクロコントローラーで制御されているそうだ

(次ページ、「オースティンラボも特別取材」に続く)


 

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