今回は2011年の中国市場を予測するという内容だが、まずは上の写真をご覧あれ。「紐曼」(英語名Newmine、Newsmy)という周辺機器メーカーがリリース予定の「電話PC」(電話電脳一体機、関連サイト)である。
これは、カラー液晶ディスプレー付きの事務用電話機のガワの中に、省電力低発熱のAtomプロセッサー搭載PCを入れたモノ。同社のスペックシート上ではWindowsはプレインストールされていないようだが、Windows利用を前提とし、Windowsプラットフォームで動く電話の録音アプリケーションや名刺管理ソフトなどの事務用ソフトが付属するようだ。
PCを電話の中に入れてしまうことによって、オフィスのデスクスペースを広くできるため、結構アリな製品ではないかと思う。
昨年以前は、途上国での普及をひとつの目標にAtomプロセッサー搭載のネットブックが売られていたが、少なくとも中国ではフルスペックのPCが欲しいというニーズからコンシューマー市場では売れなかった。
しかし、個人商が多い中国では、商店やレストランでPOS端末として使えるレジのケースにAtomプロセッサー搭載のマザーボードを詰め込んだ「POS電脳」と呼ばれるジャンルのPCが一定の成功を収めた(例によってOSは海賊版が容易に入手可能なため、製品に含まれていない)。
レジスター機能とPCが合体するというのは多機能を好む中国人にウケたのかもしれない。ちなみにこのPOS電脳、近隣のベトナム・ラオス・タイでは大都市でも普及していない。
中国本土のモノづくりを見るに、時間をかけて新しいモノや規格を作るのは苦手だが、あまり開発に時間をかけずに既存の複数のモノをひとつにするのは得意だ。
PCではない何かにPCを詰め込むのは中国大陸の専売特許、というわけではない。先んじて台湾のASUSがキーボードにAtomシステムを詰め込んだ「Eee Keyboard」を発売したし、さらにさかのぼればソニーの撮るノートPC「VAIO GT」なんてのもある(VAIO GTは単純に2つを1つにして簡単に作れる製品ではないが……)。
しかし「POS電脳が結構売れた」=「いろんな会社からPOS電脳がリリースされた」わけで、今年はオフィスに最適化された電話電脳にある程度注目が集まれば、いろんなメーカーからリリースされるかもしれない。
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