劉暁波氏のノーベル平和賞受賞に関する簡体字中国語のつぶやきは、ノーベル平和賞発表日の10月8日からの1週間で「劉暁波」で約3万6600件、「ノーベル平和賞」で約2万300件。中国人民13億人+世界各地の華僑の数から見れば、ごく僅かな割合ではある。しかし、それでもこの数字はほかのニュースの反応に比べれば、かなり大きな数字だ。
Googleが公式ブログで中国から撤退を示唆したのは1月12日。それから1週間後の19日までにTwitter上で「google中国退出」では58件、「谷歌中国退出」では67件、合計125件が簡体字中国語でつぶやかれた。
同様の手法で、Googleが香港経由で検閲なしの検索サービス継続を発表した3月23日から29日までの1週間のtwitterでのつぶやきは、185+136=321件。12月4日に「WikiLeaks(中国語で“維基解密”)」で再度話題となるものの、4日から10日までの1週間で中国語簡体字のつぶやきは計338件だった。
尖閣漁船衝突ビデオが流出した11月5日から1週間後の11日までの簡体字中国語のtwitterでのつぶやきを見ると、「釣魚島撞船視頻」「釣魚島撞船録像」というキーワードで計87件。その87件の中には中国人に真実を見てもらおうと、日本人が簡体字中国語でつぶやいたものもかなりあるので、中国人自身のつぶやきはそれよりも少なく、壁超えをする中国インターネットユーザーもほとんど関心を持っていないことが伺える。
現中国政府が嫌いな人は少なくないが、しかしそのほとんどが「中国という領土が減ったり分裂したりするよりマシだ」と思っている。北京五輪の聖火リレーで世界中の「フリーチベット」の掛け声を「チベット独立・領土縮小」と見なした中国人が、各地で集団抗議に対して抗議したように、尖閣諸島のあらゆる真実・証拠を伝えたところで中国の人々は中国政府と行動を共にし、領土縮小には同意しない。尖閣漁船衝突ビデオの反応があまりに薄い背景には、このような人々の深層心理が関係する。
ちなみに今年4月11日にTwitterアカウントを開設した蒼井そらさんについて、ポルノコンテンツ御法度の中国で多くの人々がネットの壁を越えて彼女のフォロワーとなっている。11月12日に中国ナンバー1ミニブログ「新浪微博」でアカウント開設後、24時間で22万4144人のフォロワーを得て記録を樹立した。
彼女のTwitterアカウント開設の11日から17日までの1週間の簡体字中国語のつぶやきはそれでも217件だ。ただフォローするだけというのと、意見を言うのはカウントの仕方が根本的に異なるので参考程度の比較にしかならないが、それだけ中国のTwitterユーザーにとって、劉暁波氏のノーベル平和賞受賞には関心が高く、モノ申したい人がいたということを意味する。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)
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