PCは闇雲に高ければいい訳じゃない
百度で「金持ち(有銭人) ノートPC(筆記本)」をキーワードにニュース検索すると、2005年から現在に至るまで「金持ちにお勧めのノートPC」という記事が掲載されていることが確認できる。
最も古い2005年の記事では、パナソニックの特殊作業専用機種「TOUGHBOOK」(タフブック)が紹介されていた。どうも値段が高ければなんでもいい時代だったらしい。
「金持ちノートPC」の記事では、お約束のようにパナソニック、ソニー、東芝、IBM(ThinkPad)と日本絡みの製品が扱われており、2007年頃から「MacBook」も紹介されるようになる。
そして現在では、中国メーカー製品を含む「最新CPUが入っている薄型ノートPC」ならば、何でも金持ち向けPCと紹介されるようになった。PCが普及していくにつれ、金持ちPCのハードルが下がるあたりは興味深い。
確かに街角などで見かけるノートPCは、年々低価格化が進んでいるように見える。例えば、空港で高価な「Alienware」ブランドのPCを開いて、ゲームで遊んだり、映画を見たりして搭乗を待つ人は見たことがない。
どうも中国人の中では、闇雲に高い製品を持てばメンツが保てるのではなく、身分や所得に相応の製品ジャンルを買えばメンツが保てるようだ。つまり、どのメーカーのどの製品であれ、薄型高性能ノートPCやデジタル一眼レフカメラやスマートフォンを持つことは、金持ちや成功者の証明となるわけだ。
また、金持ち同士で相手を見下すべく、できるだけ高い製品を買うということはないようである。現にデジタル一眼レフカメラを持つことはあっても、レンズを買う人はその中でも写真が好きな一部の人だけであり、iPhoneを持っていても音楽を聴いて通話しかしない人も多数いるのも、なるほど納得だ。
中国のガジェット格差がイコール新興国の人々の常識か、と問われれば微妙なところだ。筆者は過去に東南アジア・中央アジア・インドなどを取材旅行で巡ったが、どの国でも中国ほど露骨な資産による格差は起こっていないように思える。
例えば中国人はデジカメを持つことでメンツを保てるからこそ、カメラ付き携帯電話とは別にデジカメを持つが、多くの国で人々はデジカメを持たず、携帯電話のカメラで写真を撮ることに満足している。
中国にしかガジェット格差が生まれる風土がないのならば、高級機種が売れる新興国は今後も中国だけかもしれない。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)
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